第42回 中小企業に対する伴走型支援とは

中小企業経営

「かんれき財務経営研究所の雄蕊覚蔵(おしべかくぞう)です!」第42回は、「中小企業に対する伴走型支援とは」と題して、中小企業に対する伴走型の経営支援について考えてみたいと思います((注)金融機関の定義:小規模事業者・中小企業に事業資金の融資を行っている金融機関とします)。

 

《中小企業に対する伴走型支援制度の内容》
全国の中小企業の9割を占める小規模事業者は、地域の経済や雇用を支える極めて重要な存在です。しかしながら、小規模事業者は、人口減少、高齢化、海外との競争激化、地域経済の低迷といった構造変化に直面しています。
平成26年6月に「商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律(平成5年法律第51号、以下「小規模事業者支援法」という。)の一部を改正し、商工会または商工会議所が行ってきた経営改善普及事業の中に、小規模事業者の経営発達に特に資するものとして「経営発達支援事業」を新たに位置づけ、商工会または商工会議所が小規模事業者の経営戦略に踏み込んだ支援を実施する「経営発達支援計画」を経済産業大臣が認定する仕組みを導入しました。
小規模事業者支援法については、令和元年7月に一部を改正し、(1)商工会または商工会議所は市町村と共同で計画を作成する、(2)経済産業大臣が計画認定する際には都道府県知事の意見を聴く、(3)一定の知識を有する経営指導員が計画に関与する、といった内容を盛り込みました(中小企業庁HPから)。

商工会・商工会議所が、取り組むべき伴走型支援は、以下のような項目に整理されています。

①需要を見据えた経営の促進 (1)ビジネスプランに基づく経営の促進
(2)需要開拓に向けた支援
(3)新事業展開や高付加価値化の支援
②新陳代謝の促進 (4)多様な小規模事業者の支援
(5)起業・創業支援
(6)事業承継・円滑な事業廃止の推進
(7)人材の確保・育成
③地域経済の活性化に資する事業活動の推進 (8)地域経済に波及効果のある事業の推進(地域牽引企業の創出等)
(9)地域のコミュニティを支える事業の推進
④地域ぐるみで総力を挙げた支援体制の整備 (10)支援に向けた国と自治体の連携強化
(11)手続きの簡素化・施策情報の提供
 (12)事業継続リスクへの対応能力の強化

(中小企業庁HPを基に作成)

中小企業を巡る経営課題が多様化・複雑化する中、中小企業支援を行う支援事業の担い手の多様化・活性化を図るため、平成24年8月30日に「中小企業経営力強化支援法」(現在の「中小企業等経営強化法」)が施行され、中小企業に対して専門性の高い支援事業を行う経営革新等支援機関を認定する制度が創設されました。
認定制度は、税務、金融及び企業財務に関する専門的知識や支援に係る実務経験が一定レベル以上の個人、法人、中小企業支援機関等を経営革新等支援機関として認定することにより、中小企業に対して専門性の高い支援を行うための体制を整備するものです。

認定経営革新等支援機関の関与を要する施策については、以下のとおり整理されています。

事業再構築補助金 【認定支援機関による確認書】 事業計画書の策定に協力を行い、事業再構築指針に沿った内容であることなどを確認。また、事業者の事業遂行や成果目標の達成に関する支援に取り組むことを誓約
緊急事態宣言の影響緩和に係る一時支援金 【登録確認機関による事前確認】 不正受給や誤って受給してしまうことの対応として、事務局が登録した「登録確認機関」(※)によって、申請希望者が①事業を実施しているか、②給付対象等を正しく理解しているか等について、事前確認を実施。具体的には、中小企業庁が定めた事前確認マニュアルに基づき、TV会議又は対面等で、書類(帳簿等)の有無の確認や宣誓内容に関する質疑応答等の形式的な確認を実施。 ※登録確認機関には、認定支援機関のほか、同機関に準ずる機関、その他特定の機関・有資格者等から募集を行い、事務局が登録
新型コロナウイルス感 染症対策挑戦支援資本 強化特別貸付制度(新型コロナ対策資本 性劣後ローン) 【事業者が日本政策金融公庫又は商工組合中央金庫に提出する以下の書類(書類の一部)】 ・民間金融機関等からの協調支援を希望しない者等である場合には、認定支援機関による経営指導を受けて事業計画書を策定する必要があり、当該事業計画書の一部
中小企業経営強化税制 C類型 【認定支援機関の事前確認書】 ・経済産業局に、デジタル化設備として適合しているかを事業者が確認書の発行を依頼する前に、認定支援機関が事前に確認し、事前確認書を発行する。
個人事業者の遺留分に関する民法特例

(経営承継

円滑化法)

【認定支援機関の確認書】 合意の対象とした事業用資産が、贈与の直前において、旧個人事業者が所有し、かつ、その事業の用に供していた資産の全てであること及び後継者が当該事業用資産の全部を自己の事業の用に供していること又はその見込みがあることの確認
事業承継・集約・活性化支援資金融資事業
【融資を希望する事業者が日本政策金融公庫に提出する事業承継計画】
・事業者が「事業承継計画」を策定する際に支援機関が実施した支援内容
・計画の内容に対する支援機関の評価・所見
個人版事業承継税制

(経営承継円滑化法)

【事業者が都道府県に提出する承継計画に添付する「所見」】
・個人事業承継計画に記載のある取組への評価や、実現可能性(及びその実現可能性を高めるための指導・助言)
先端設備等導入計画( 生産性向上特別措置法)
【事業者が市区町村に提出する認定申請書に添付する「確認書」】
・生産・販売活動等に直接つながる先端設備等を導入することにより、目標を達成しうるような労働生産性の向上が見込めるか。
法人版事業承継税制

(経営承継円滑化法)

 

【事業者が都道府県に提出する特例承継計画に添付する「所見」】
・特例承継計画に記載のある取組への評価や、実現可能性(及びその実 現可能性を高めるための指導・助言)
【認定を受けた事業者の雇用が8割を下回った場合に都道府県に提出する報告書に添付する「所見」】
・平均雇用人数の5年間平均が8割を下回った理由について、その理由が事実であるか確認
事業承継補助金

 

【認定支援機関の確認書】
・応募者が地域に貢献する中小企業者であること・応募者の取組に独創性等が認められること
企業再建資金

(企業再生

貸付制度)

【事業者が日本政策金融公庫に提出する以下の書類(書類の一部)】
・認定支援機関による経営改善計画策定支援事業を利用して経営改善に取り組んでいる場合は、認定支援機関向けに発行される「支払決定通知書」の写し
・過剰債務に陥っている者が経営改善計画の策定を行い、認定支援機関による指導および助言を受けている場合は、「経営改善計画書」の記載 項目の一部(実施した指導および助言の内容、本計画の評価)
中小企業経営力強化資金融資事業

 

【事業者が日本政策金融公庫に提出する事業計画書における記載項目の一部】
 ・実施した経営革新等支援業務の内容
・新商品の開発または新役務の内容の所見・本計画の評価
経営改善計画策定支援事業

 

【事業者が認定支援機関と連名で経営改善支援センターに提出する以下の申請書及び添付資料】
○利用申請(再度利用含む)
・経営改善支援センター事業(再度)利用申請書
・申請者の概要
・自己記入チェックリスト(経営改善計画策定支援事業のみ)
・業務別見積明細
○支払申請・経営改善支援センター事業費用支払申請書
・経営改善計画
・自己記入チェックリスト(経営改善計画策定支援事業のみ)
・業務別請求明細
・従事時間管理表
○モニタリング費用支払申請
・モニタリング費用支払申請書
・モニタリング報告書
・自己記入チェックリスト(経営改善計画策定支援事業のみ)
・業務別請求明細 ・従事時間管理表
経営力強化保証制度

 

【事業者が金融機関に提出する所定の申込資料に添付する以下の書類の一部】
○「経営力強化保証」申込人資格要件等届出書
・経営支援の内容(選択式)
○事業計画書(申込人が策定)
・認定経営革新等支援機関の所見(計画策定支援を行っている場合)
○認定経営革新等支援機関による支援内容を記載した書面 (事業計画書に記載されている場合は不要)
【金融機関が信用保証協会に提出する事業計画実行状況等報告書の一 部】
・四半期ごとの事業者の報告内容に対する認定支援機関の対応等
・翌事業年度における認定支援機関の経営支援の内容等

(中小企業庁HPを基に作成)

もともと経営革新等支援機関制度設立の目的は、「モラトリアム法」によりリスケを繰り返してきたにも拘らず、中小企業の経営、特に資金繰りの改善が思うように進まなかったため、中小企業の経営改善を促進するためだったと理解していたのですが、その役割も認定された機関の得意分野を活かした役割発揮に舵をきったものと感じました。

 

《金融機関によるコンサルティング機能等の発揮》
金融庁のHPに地域金融機関に期待されるべき役割等について記載があります。その記事からポイントを抜粋してみます。

中小企業をはじめとした利用者から、経営改善支援、事業再生支援、担保・保証に過度に依存しない融資等の取組みにとどまらず、経営課題への適切な助言や販路拡大等の経営支援、ニーズに合致した多様な金融サービスの提供が強く期待されている。
地域密着型金融の推進は、顧客企業(個人事業主を含む。以下同じ。)との長期的な取引関係を前提とした取組みであり、その成果を短期間で金融機関の財務の健全性や収益力の向上に結びつけることは難しい場合が多く、中長期的な視点に立った取組みや評価が重要である。
①地道な企業訪問や経営相談・経営指導など、短期的な効果の測定が必ずしも容易でない継続的な取組みに関する姿勢や活動を評価・推進していくための工夫が必要
②人材やノウハウの面から、顧客企業に対し十分なソリューション(経営目標の実現や経営課題の解決を図るための方策)を必ずしも提案できていない。各業種に関する知識の吸収などノウハウの底上げが必要
③顧客企業の経営改善や再建に際して金融機関に求められるのは、当該企業との日常的・継続的な接触を更に深め、当該企業の事業価値を見極め、経営課題を発見・把握していく営業職員の目利き能力の向上
④顧客企業の経営課題を発見・把握した後は、金融機関が課題解決のための役割を常に全て担うのではなく、必要に応じ、積極的に地域の外部専門家や外部機関の知見・ノウハウを集めて対処
⑤顧客企業の創業、成長、経営改善・再建のためには、当該企業の経営者自身が明確なビジョンをもって自ら主体的に取り組むことが重要であり、自らの経営課題を正確かつ十分に認識できていない経営者も少なくないため、経営者の意識改革も必要

⑥地域の中小企業等を支え地域経済を活性化するため、地方公共団体、商工関係団体等との連携が必要であり、地域の関係者等との連携・協力が一層重要
地域金融機関は、地域密着型金融の推進をビジネスモデルの一つとして明確に位置づけ、自らの規模や特性、利用者の期待やニーズ等を踏まえて自主性・創造性を発揮しつつ、「顧客企業に対するコンサルティング機能の発揮」、「地域の面的再生への積極的な参画」、「地域や利用者に対する積極的な情報発信」の取組みを中長期的な視点に立って組織全体として継続的に推進、顧客基盤の維持・拡大、収益力や財務の健全性の向上につなげていくことが重要

 

《中小企業金融担当者による中小企業に対する伴走型支援》
事業とは、「お金を集める⇒お金を遣う⇒利益を出す」このサイクルの繰り返しだと考えます。経営資源は大きく「ヒト・モノ・カネ」と言われていますが、ヒトを集めるにも、モノを所有するにも「お金」が必要です。やはり、経営を行ううえで、最も重要なことは「数字とお金」の管理が適正に出来るか否かではないでしょうか。
このブログで何度もお伝えしているのですが、中小企業の経営者は、数字とお金にあまり目を向けません。また、財務の専門家も現場には存在しません。金融機関系のコンサルティング会社が支援に入り、立派な経営改善計画を策定したとしても、現場にはその計画を実行する主人公がいないので、計画通り実行できないのが現状です。なので、しっかりサポートできる人財が必要なのです。この「数字とお金」の番人には、金融機関の中小企業金融担当者が相応しいと雄蕊は思っています。
しかしながら、金融庁の指摘にもあるように、すべての中小企業担当者が、顧客企業に対して満足のいく支援は出来ていないようです。担当者の能力向上も重要、つまり顧客企業の期待に応えることが出来る担当者育成が急務ではないでしょうか。新型コロナウイルスの影響もあり、生半可な支援では中小企業の経営改善は難しいと危惧しています。
雄蕊は、「財務を基軸にした経営支援担当者の育成」を目指し、前回のブログで記述しましたが、今、地域金融機関の行員と財務の専門家育成に向けた勉強会を行っています。

中小企業の経営者は、売上志向が高いので財務の専門家の必要性に気付いていないと思っていますので、財務の専門家の必要性を理解してもらうことが課題です。その啓蒙活動にも力を注がなければならないと強く感じています。

中小企業、金融機関そして地域経済が「三方よし」となることを期待して!

投稿者プロフィール

矢野 覚
矢野 覚
LINK財務経営研究所 代表 
1982年 4月 国民金融公庫入庫
1993年 4月 公益法人日本生産性本部経営コンサルタント養成講座派遣
2015年 3月 株式会社日本政策金融公庫退職
2015年10月 株式会社山口経営サポート(認定支援機関)入社
2019年12月 同社 退社
2020年 2月 LINK財務経営研究所 設立
2022年 5月 健康経営アドバイザー
2022年 7月 ドリームゲートアドバイザー
中小企業金融の現場で、33年間、政府系金融機関の担当者~支店長として事業資金融資の審査(与信判断)や企業再生支援、債権回収業務に従事するとともにそれに関する稟議書の起案・決裁に携わっていました。
その後、中小企業の財務責任者として資金調達、経営改善業務をお手伝いさせていただき、短期間で赤字体質の中小企業を黒字体質に改善するコトができました。
こうした経験を活かして、「財務の力でヒトとカイシャを元気にする」ために、小規模事業者・中小企業の皆さまのお役に立ちたいと考えています。

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