第78回 【2000字commentary】船頭多くして船山に登ると三人寄れば文殊の知恵の例え

中小企業経営

「こんにちは、かんれき財務経営研究所の雄蕊覚蔵です!」第78回は「船頭多くして船山に登ると三人寄れば文殊の知恵の例え」と題して、ボード・メンバーによる経営について考えてみます。

 

多くの中小企業経営者は、意思決定を一人で行わなければならない立場にあります。腹心がいれば一緒に考えることもできますが、なかなか適任者はいないものです。
大企業であれば「ボード・メンバー(取締役会等)」といった複数で意思決定するのが、一般的です。ガバナンスやコンプライアンスを考えたときも複数で意思決定することで牽制機能を働かせることができ、不正防止にも繋がります。
中小企業でも家族的な規模の経営から成長して100人規模の大所帯になると、なかなか経営者一人では全体に目配りもできなくなり、どうしても経営者の右腕、左腕・・・として一緒に経営をしていくメンバーが必要になってきます。組織としての経営が求められるようになるのです。

雄蕊が関わっているクライアントも規模が大きくなり、経営者も複数の事業経営を行っているため、1つの事業だけに目を行き届かせることが物理的にも難しい状態にあります。そこで、フロント、ミドル、バックオフィスそれぞれの責任者でボード・メンバーを構成し、経営者をサポートする仕組みを運用することにしました。
さらに現場業務の運営責任者である「○長、副○長」等、規模が拡大するにつれて船頭さんも多くなってきました。
「三人寄れば文殊の知恵」の例えのとおり、増えた船頭さん達がそれぞれの得意分野に関する知識やノウハウを結集して経営に活かせることが理想なのですが、現実にはなかなかそうは問屋が卸さない。どちらかというと「船頭多くして船山に登る」の例えがしっくりくるような状況に陥っていると懸念しています。
前述した現場の運営責任者は、専門職の方達です。専門職の方というのは多かれ少なかれプライドを持って仕事に取り組んでおられる。裏返せば、なかなか切り崩せない頑なまでのこだわりを持っている。専門職の方にはそれが必要不可欠なのですが、全体最適を目指すために、組織全体を俯瞰して、ときには妥協もしながら経営していくという側面と符合させることには難しい面もあると思っています。

少し、以前になりますが、「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」という飲食店が話題になりました。高級専門店のカテゴリーキラーです。価格を思い切り引き下げ、原価を50%近くかけ、そのかわり客数(回転数)で稼ぐスタイルで、粗利益を抑えて数(客数)で利益を稼ぐというこれまでとまったく違った利益構造です。この話題をここで取り上げたのは、料理の専門家であるシェフのこだわりを最大限引き出すために材料にかかるコストはケチらない。つまり、専門家のこだわりを活かしながら利益も稼ぐという新しいビジネス・モデル、経営スタイルの成功例として紹介させてもらったものです。
こんなふうに専門職の頑固さも活かしながら、経営の専門家と手を組んで経営する仕組みができれば何も心配することはないのですが、やっぱり難しい。それどころか、法人経営、組織運営の主役となるべきフロント、ミドル、バックオフィスそれぞれの責任者間にもベクトルの方向にバラツキがあり、一枚岩になることが難しい状況がずっと続いています。

今回は、その原因を大きく捉えて、その小さな突破口について、雄蕊なりの考えに基づいた話をしてみます。
それは、我々が生きている時代をしっかり認識するということです。
日本では、少子高齢化が進み、市場の縮小、労働力人口の減少、国家財政の逼迫等々の課題が顕在化しています。社会のライフサイクルが後退期・衰退期に差し掛かっている、もう既に入っている。そんな環境に我々は置かれていると認識した方が正しいのではないでしょうか。

経営の視点から見ると「組織を健全な状態で維持することが非常に難しい時代で経営している」ということです。経済の悪化、人口減少、世界情勢・社会インフラによるコスト高、地域住民の高齢化による市場規模の縮小・・・数々の課題が山積しており、経営存続の難しさが浮き彫りになっています。一方、団塊の世代の高齢化による幹部層の世代交代、働き方改革による労働環境の変化、ハラスメント等の価値観の多様性、少子化による人財採用難、教育機会の縮小・リーダー人材不足・・・組織存続の側面からも課題山積みなのです。
日々現場で起こる様々な課題や問題に対して適切に対応していくことばかりに焦点があたると、ゴールの見えないしんどい日々の繰り返しという負のスパイラルに陥ってしまいます。

現代の経営環境を俯瞰してみると、経営者・経営幹部をはじめとする経営陣・管理者に掛かる負担は益々増える一方であり、難しい舵取りを強いられ続けると考えるのが妥当でしょう。
こうした企業を取り巻く経営環境の変化=企業の規模や業種業態問わず普遍的かつ構造的な課題を、ボード・メンバー一人ひとりがしっかり認識し理解したうえで、企業としての存在価値は何か、経営者や経営幹部をはじめとする経営陣・管理者層、現場スタッフ、それぞれの生き甲斐、やり甲斐のある職場とはどんな職場なのか。こうしたことを議論のテーブルに乗せ、徹底的に協議・追求することが、バラバラになっているベクトルの向きを少しでも修正するキッカケになるのではないかと考えます。

経営者・経営陣は一枚岩となって、自企業の将来に向けたディテールを描き込み、属人的組織に陥ることなく、組織に属するスタッフ全員がしっかり活躍できる企業、組織の構築に取り組む必要性を全スタッフが共有できる環境作りに心血を注ぐことも大切だと思う今日この頃なのです。

投稿者プロフィール

矢野 覚
矢野 覚
LINK財務経営研究所 代表 
1982年 4月 国民金融公庫入庫
1993年 4月 公益法人日本生産性本部経営コンサルタント養成講座派遣
2015年 3月 株式会社日本政策金融公庫退職
2015年10月 株式会社山口経営サポート(認定支援機関)入社
2019年12月 同社 退社
2020年 2月 LINK財務経営研究所 設立
2022年 5月 健康経営アドバイザー
2022年 7月 ドリームゲートアドバイザー
中小企業金融の現場で、33年間、政府系金融機関の担当者~支店長として事業資金融資の審査(与信判断)や企業再生支援、債権回収業務に従事するとともにそれに関する稟議書の起案・決裁に携わっていました。
その後、中小企業の財務責任者として資金調達、経営改善業務をお手伝いさせていただき、短期間で赤字体質の中小企業を黒字体質に改善するコトができました。
こうした経験を活かして、「財務の力でヒトとカイシャを元気にする」ために、小規模事業者・中小企業の皆さまのお役に立ちたいと考えています。

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