第77回 生産性向上を目指す組織づくり~強い組織を見える化する~

中小企業経営

「こんにちは、かんれき財務経営研究所の雄蕊覚蔵です!」第77回は「生産性向上を目指す組織づくり~強い組織を見える化する~」と題して、生産性の重要性について考えてみたいと思います。

 

雄蕊のクライアント企業の従業員一人当たりの賞与が前年度に比べて減少しました。この企業自体の業績は増収増益であり、人件費総額は前期より大幅に増加している。なのに、企業の業績に応じて査定する賞与の従業員一人当たりの支給額は下がっているのです。
その企業は、ある目標達成に向けて強い組織作りを目指しているのですが、「強い組織を見える化」できる数値(指標)として適したものがないかと考え、「労働生産性」という指標を活用してみることにしました。一人当たりの賞与額が下がった要因の1つは、その指標の悪化だったのです。
そこで今回のブログでは「労働生産性」を取り上げてみます。

 

《日本の労働生産性の国際比較》
少し話を飛躍させます。公益財団法人 日本生産性本部が2021年12月17日に公表した「労働生産性の国際比較 2021」をみると、OECDデータに基づく2020年の日本の時間当たり労働生産性は49.5ドル(5,086円)で、米国(80.5ドル/8,282円)の6割の水準に相当し、OECD加盟38カ国中23位。経済が落ち込んだ一方で、労働時間の短縮が労働生産性を押し上げたことから、前年より実質ベースで1.1%上昇したものの、順位は1970年以降最も低くなっています。就業者一人当たり労働生産性は78,655ドル(809万円)、OECD加盟38カ国中28位と1970年以降最も低い順位になっています。
何が原因でこんなに日本の労働生産性は低いのでしょうか。それは、重要度の高いアウトプットに労働力を集中させていない。つまりメリハリが効いていないということだと思います。日本人はすべてを考慮し、無駄な資料作成等も完璧にしようとします。雄蕊が在籍した金融機関もそういった意味では、無駄な仕事が多かったような気もします。
こうした日本人の行きすぎたアウトプットに対するこだわりが生産性低下の影響となっていると思います。しかし、こうした細部にまでのこだわりが、高品質な製品開発に結びつき、日本を世界最高の高品質生産国にしていることも事実です。
一方、非製造業の仕事において、付加価値が認められない部分にいくら労働力を投入しても、それは収益の増加にはならないのです。適正価格、適正原価、費用対効果の適正を見極める視点が必要です。売上や利益に結び付かない仕事に多くの労働力の投入を行うべきではないのです。

《労働生産性とは》
労働生産性とは、労働者1人あたりが成果を生み出す上での効率性を数値化したものです。労働者1人または1時間で生み出す成果が、労働量や投資額にどれだけ見合っているかを数値化したもので、この値が大きければ大きいほど生産性は高く、労働者のスキル、業務効率などにより変化します。そのため多くの企業が労働生産性の向上を目指し努力しています。
労働生産性は効率を表す「数値」なので、以下の計算式で求めることができます。
・生産性=成果/労働量(労働者数、労働者数×労働時間)
また、労働生産性は成果の基準により大きく2種類に分けることができます。
生産量を成果の基準とした「物的労働生産性」と売上高から材料費や運送費など元値を引き、自社の加工や工夫によって付け加えられた金額を成果の基準とした「付加価値労働生産性」です。生産量と金額、どちらを成果の基準とするかにより、式も異なったものとなりますが、今回は付加価値労働生産性を取り上げます。
付加価値労働生産性では「付加価値額」を成果とします。こちらの計算式は次のようになります。
・付加価値労働生産性=付加価値額(売上-諸経費[燃料費、材料費、運送費など])/労働量

付加価値をどのように捉えるかにより計算式が変わることはありますが、非製造業の場合は付加価値額=売上総利益と捉えてよいと思います。この計算を行うことで、年間の総売上利益と従業員数で企業全体の労働生産性を割り出すことができます。

【参考】

自社の労働生産性の値を確認して生産性の状況を把握する。
生産性の指標の基準値は一概には言えませんが、従業員一人あたりの付加価値額(労働生産性)は520万円前後が平均値となっています(大企業では1,100万円超)。ここ10年の推移をみるとほぼ横ばいで推移しています。これを越えていれば生産性が高いといえるかもしれません。

《労働生産性が低い》
労働生産性が低い状態とは、労働者1人または1時間あたりに生み出す成果が少なく、労働量や投資額に見合っていないことを指します。たとえば、売上額は変わらないのに働く時間だけが長い状態や、人数を増やしても作れる製品の個数が変わらない状態などは、労働生産性が低いと言えます。労働生産性が低い状態が続くと、どれだけ投資しても狙った利益が得られなかったり、長時間労働によって従業員が疲弊してしまったりと、企業にも従業員にも悪影響を及ぼしてしまいます。

《労働生産性を向上させるメリット》
労働生産性を向上させることで、企業や従業員にとって以下のようなメリットが生まれます。
ワークライフバランスの向上
生産性向上のメリットのひとつは、従業員のワークライフバランス向上につながることです。業務のムリ・ムダ・ムラを是正するなどして1人当たり・1時間当たりの成果量を増やせれば、仕事環境を改善して従業員の不満を解消できる上、長時間労働を抑制できます。

従業員は心にゆとりを持って生活に充てる時間をより多く確保できるため、ストレスも解消できます。

人材不足の懸念解消
生産性向上によって従業員のワークライフバランスを向上させることができれば、エンゲージメントやモチベーションの向上にもつながります。この変化は従業員の離職率低下に効果的です。
また生産性向上を実現した企業は求職者から見た仕事環境の魅力も増し、優秀な人材の確保にもつながります。このように人的リソースの好循環が生まれ、人材不足の懸念解消に効くのも生産性向上のメリットです。

コスト削減と適切な投資
従業員1人当たりの生産性が高まれば、無駄な残業代や電気代等の経費の削減につながり、少ない投資でより多くの成果が得られます。
ムダなコストの削減や成果量の増大により資金に余裕が生まれ、従業員の賃金引き上げや最新設備やシステムの導入、そして新規事業にも投資でき、戦略的な事業計画を推進しやすくなるのも大きなメリットです。

《生産性向上の阻害要因》
長時間労働は生産性向上の阻害要因
日本は他の先進諸国に比べて長時間労働の傾向が強く「働き過ぎ」であることはよく知られていますが、前述のように生産性向上に結び付いておらず、「不要な長時間労働でムダな仕事をしている」のが現状です。
また「労働時間が短縮するほど労働生産性は高くなる」ことも示されています。労働時間を長くする、つまりインプットを大きくすることは生産性向上の原則に反します。

過度なマルチタスクは生産性低下の要因
1人の働き手が複数のタスクを同時進行することをマルチタスクといいますが、過度なマルチタスクは生産性を低下させます。使い減りしない一部のスタッフはマルチタスクで成果量の向上が期待できますが、多くの場合、同時進行する全てのタスクで均質な成果を出すことは困難です。
これは個々のタスクに集中できないことや、それぞれのタスクで要求されるスキルレベルが異なり、業務効率が低下することに起因します。業務のムラが発生すると生産性向上に向けた取り組みは阻害されやすいため、過度なマルチタスクを避けることも大切です。

《生産性向上に向けた施策》
生産性向上に効く施策はさまざまなものが考えられますが、比較的簡単に実行でき、かつ効果の高い施策例は以下の通りです。
業務の内容やビジネス・プロセスの可視化と分解・整理
生産性向上の取り組みでは、まず業務を可視化することが必要です。業務の内容やビジネス・プロセス、成果等を可視化して客観的に把握することで、業務のどこにどのような問題があるかボトルネックを洗い出すことができます。
ビジネス・プロセス全体のなかから一番処理能力や効率の悪い部分、いわゆるボトルネックを次のような着眼点で洗い出します。
①よく遅延する作業、②発生頻度の高い作業、③同じ失敗が何度も起こる作業、④たくさんの時間を使っている作業
業務の詳細な把握・分析を行い、全業務を細分化してリスト化・関連付けし、事業内容を分解・整理することが大切です。
スタッフの適性把握と適材適所の配置及びタスクシフティングの導入
従業員は業務内容によってスキルのレベルが異なるため、複数業務の中で成果に差があったり、同じ業務でも担当者によって成果に差があったりします。従業員の得意・不得意を把握し、適材適所に配置することが重要であり、各従業員がパフォーマンスを発揮できる配置に変えて生産性向上が期待できる組織を構築することが必要です。その際には、上司(管理者)と部下(スタッフ)の信頼関係が求められます。部下としっかりコミュニケーションを取りながら、部下(スタッフ)の心理面も踏まえて適性を把握し、適所に配置替えすることが大切です。

過度なマルチタスクは生産性を低下させると述べましたが、タスクシフティングは、生産性向上のためには必要な方法だと考えています。これは同時進行で複数の業務をさせるのではなく、あらかじめ設定した任意のタイミングで、タスクからタスクへ作業を切り替えるという方法です。外部要因によって強制的にタスクがシフト(マルチタスク)することは、脳にとってストレスなのですが、任意のタイミングでスイッチングする分には、作業効率は上昇することが分かっています。長期タスク・短期タスクも細分化して洗い出し、そのタスク内ですべきことを順序立てて、ピックアップし、タスクに、時間と重要度の観点から優先順位を付けて、優先度の高い順に、あらかじめ決めた間隔で、定期的にタスクを切り替えていけば効率化が進むと思います。

ノンコア業務のアウトソーシング
利益を生むための直接的・非定型の業務をコア業務、コア業務に付随する定型業務をノンコア業務といいます。ノンコア業務にかける人的・時間的リソースは生産性向上の取り組みの足かせとなるため、業務内容によってはアウトソーシングすることが有効です。
ノンコア業務を外部の組織に委ねる、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)というスタイルが主流になりつつあります。BPOとは、各部署で発生するノンコア業務や、社内にノウハウがない業務等を継続的に外注に任せることです。
事務作業やマーケティング活動、ウェブページ運用やデータ処理等さまざまな業務をアウトソーシングできます。BPO化する作業を見極めることで、必要に応じて社外へと切り出せるメリットがあります。BPOサービスを提供する企業は、特定の仕事に精通しているプロフェッショナルです。豊富な業務ノウハウを生かし高い品質で業務を実現するため、作業全体の質を上げることが期待できるメリットもあります。
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業者に業務プロセスを委託すれば、自社の業務部門の一部のように機能します。これにより自社リソースをコア業務に集中させられるため、マルチタスクや長時間労働の防止という意味でも生産性向上に効果的です。

ICTツールによる情報共有
生産性向上にはICT(Information and Communication Technology)ツールによる情報共有も重要です。デジタル化が進展する企業では、各部門で日々大量の業務データが生成されます。ICTツールの活用は働き方改革においても欠かせません。テレビ・WEB会議システム、チャットツール、ナレッジ共有ツール、ファイル共有ツールなど、生産性向上に向けて、さまざまな目的でICTツールは活用されています。これらのツールはチーム単位・プロジェクト単位のノウハウ共有にも役立ち、生産性向上に大きく貢献します。

機械やプログラムによる自動化
生産性向上を進めるなら機械やプログラムによる自動化も重要です。
機械・プログラムに任せることで人手より素早く正確に作業をこなし、小さなインプットで大きなアウトプットを得られる上、人間はより創造的な業務に集中できます。業務自動化のツールはRPA(ロボットによる業務自動化)が有名ですが、AI搭載ツールによるデータ収集・分析の自動化も効果的です。

《労働生産性を向上させるのはマネジメント層の責任》
雄蕊の近くに、もの凄く仕事熱心なスタッフがいらっしゃいます。ほとんど土曜日の休みも返上し、時間も惜しまず、多くの仕事を一人で抱えて黙々とそれをこなしている。そのスタッフが属している企業は専門性の高い労働集約型業種です。そのスタッフは、専門的で高度な業務内容についての知識やノウハウも豊富で、現場では組織の牽引者としてスタッフを引っ張っており、そのおかげで業績も高値安定推移しています。
しかしながら、確かに勤勉で職場にいる時間も長いのですが、そのスタッフに期待されている役割としてのアウトプットが期待通りにされていないのではないかと懸念することもあります。その1つが「労働生産性」という指標の伸び悩みでした。そのスタッフは人の上に立つ役割の方です。期待されている最大のアウトプットは組織を動かすこと、人を動かすことだと思っています。

日本の多くの企業ではこうように役割に応じたアウトプットとインプットが不明瞭で、アウトプット(成果)に対する評価も曖昧なところが往々にしてあるのではないでしょうか。何か不具合が起きて始めて対応するような面もあります。つまり、明確に生産性を向上するマネジメントサイクルが回っていないのです。
効率的にアウトプットを出すのではなく、頑張る姿勢を評価し、アウトプットに対するインプットを適正評価できない状況が日本の企業では数多く見られるようです。
組織運営上、その組織のアウトプットとインプットの定義と、インプット最小化でのアウトプット最大化を目指すマネジメントサイクルが必要なのです。このサイクルを描き、運用するのは経営者をはじめとしたマネジメント層の責任です。

投稿者プロフィール

矢野 覚
矢野 覚
LINK財務経営研究所 代表 
1982年 4月 国民金融公庫入庫
1993年 4月 公益法人日本生産性本部経営コンサルタント養成講座派遣
2015年 3月 株式会社日本政策金融公庫退職
2015年10月 株式会社山口経営サポート(認定支援機関)入社
2019年12月 同社 退社
2020年 2月 LINK財務経営研究所 設立
2022年 5月 健康経営アドバイザー
2022年 7月 ドリームゲートアドバイザー
中小企業金融の現場で、33年間、政府系金融機関の担当者~支店長として事業資金融資の審査(与信判断)や企業再生支援、債権回収業務に従事するとともにそれに関する稟議書の起案・決裁に携わっていました。
その後、中小企業の財務責任者として資金調達、経営改善業務をお手伝いさせていただき、短期間で赤字体質の中小企業を黒字体質に改善するコトができました。
こうした経験を活かして、「財務の力でヒトとカイシャを元気にする」ために、小規模事業者・中小企業の皆さまのお役に立ちたいと考えています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました