第35回 伝えることの難しさ(雄蕊流伝達力)

スキルアップ

「かんれき財務経営研究所の雄蕊覚蔵(おしべかくぞう)です!」第35回は「伝えることの難しさ」と題して、円滑なコミュニケーションを図るためには、どうすればよいかについて考えてみたいと思います。

《人を動かすことの難しさ》
人を動かすための単純な原則は、「相手の利益を損なうような提案は受け入れてもらえない。なので、自分本位に陥らずに相手にとって利益や価値のある提案をしなければならない」ということです。つまり、前回のブログに記述したバーナードの「誘因の経済」が働くということです。
「共通の目的・目標を共有する」ことの大切さについて話をしていると、「きちんと話せば必ず分かってくれる」「熱意は必ず伝わる」といった意見が大半を占めます。雄蕊もそう思います。同じ目的・目標に向かう仲間・同士であるならば、話せば分かるし、情熱もしっかり伝わっていきます。しかし「分かるだろう」「伝わるだろう」と勝手に期待し、手前勝手なシナリオを書くようでは、相手の納得を得ることは難しいと言わざるを得ません。情熱と理論で想いを伝えようと努力しているつもりなのかもしれませんが、相手の利益を無視している場合が多いからです。
「お客様の立場で検討します!」と言いながら「自身の目標達成や自社企業の売上や利益のため」に押し込み提案をするような行動は、相手の利益に反するものです。「素直に共感できる」といった納得感をいかに醸成するかが重要だと思いますが、現場では、やむを得ず、多かれ少なかれ、似たような行動をとることがあります。出来る限り、我々もこうした傾向にあることを自覚し、これを戒める努力をしなければならないと思います。

《伝える技術》
雄蕊自身の経験談。雄蕊は、前職時代に3支店で10年間、支店の課長を務めました。3支店目で営業部門の課長を務めた時のこと、この支店は西日本の所謂旗艦店舗で、雄蕊が配属されたのは、本店経験者の優秀な方たちが歴代務めたポストです。雄蕊のような支店経験しかない者にとっては、少々荷が重すぎるポストで、部下達も全国の優秀な選りすぐりの精鋭が大半を占め、当然ながら最初は苦労の連続でした。
雄蕊の上司である支店長、次長からは支店の業務目標達成に向け、日々発破をかけられます。上司の指示・命令を件の精鋭たちに納得させ、動かすことが雄蕊の役割です。この遥かに雄蕊より優秀な部下達に雄蕊の指示を聞いてもらうために取り組んだこと。兎に角、この部下達に「雄蕊は凄い」と思ってもらうことでした。そう思わせることが早道だと自分なりに考えて動きました。つまり、支店経験しかキャリアのない雄蕊を部下達に課長として認めてもらうためには、自身の知識・スキルを高めるしかないと思ったのです。

経営者や経営陣と同席している商談の場等で「雄蕊は、気難しい人間ですから」冗談交じりにそう言っても、誰も否定してくれません。自他ともに認める「気難し屋」なのかと内心ショックですが、そんな雄蕊の信念は「他人に厳しくする前提として、自分には更に厳しくする」ことです。優秀な部下達をコントロールするために自身の知識・スキルアップに懸命に取り組み、課長就任後3年目くらいからその効果が現れ始めました。雄蕊なりの努力の結果、課長として部下に伝える力が備わったということだと思います。

雄蕊は、前述した課長、次長職、支店長職時代を通じて取引先や関係団体の会合等で講演する機会にも恵まれました。今思えば「政府系金融機関」という看板が後ろ盾としてあったことも重要な要素だったのかもしれませんが、雄蕊の講演は意外に好評で、リピートのオファーもたくさんいただきました。
講演が終わるたびに反省することしきりなのですが、それを繰り返すことにより「伝える技術」に磨きをかけることができたのかもしれません。また、雄蕊は、プロの技を盗む目的で、専門家講師の講演も数多く聴きに行き、オーディエンスを惹きつける所作・話法等、随分勉強させていただきました。

《準備することの大切さ》
雄蕊は、講演のオファーを請けると、何時、何処で、誰に対して、どんなことを伝えて欲しいのかを主催者の方と入念に打ち合わせさせていただきました。折角、貴重な時間を割いて講演を聴きに来てくれるのですから、そうした方々が満足できるコンテンツを届ける必要があると思っているからです。
講演までに時間があるときは、講演の目的、オーディエンスが得られる満足を想定して、コンテンツを決めていました。何度も何度も推敲を繰り返し、雄蕊なりに満足のいくコンテンツを練り上げました。十分な準備が出来た講演は、自身も満足できることが多かったと思います。
最終的な「あるべきゴール」を明確にすることも「伝える技術」の1つだと思っていますし、プロの神髄はやはり「万全の準備をすること」だと実感しています。

しかし、雄蕊は、自身がどうしても伝えたいことは、少し強引でも押し付けてしまう性格を持ち合わせていて、時には、相手にとって「ハラスメント」に感じてしまうこともあるようです。家族からもよく指摘されていますが、本気になって熱が入ると無意識にそうなってしまいます。残念ながら性格的な問題なので、軌道修正は難しいかもしれません⤵。

《立ち位置によって変容する思考回路》
雄蕊が、専門職(スペシャリスト)出身の経営幹部の一人と業務量の増加に伴う業務分担見直しの打合せをしていた時のこと、人員の効率的活用のため、時間に余裕があるときはスペシャリストの方にもバックヤード業務を応援して欲しいと伝えたところ、スペシャリストにそんなことをさせるなんてと想定外の返事がありました。
この経営幹部の現在の役割は、フロント部門(所謂、生産・販売部門)のコントロールがメインです。日常業務では、フロント業務中心に動いているため、フロント業務中心の考え方、言い換えると「全体最適思考」から「部分最適思考」へシフトしたと、少なくとも雄蕊はそう感じました。
経営幹部として、トップマネジメントの一翼を担ってくれると今も期待しているのですが、業務の偏りや現場の多忙さが引金となり、トップマネジメントとしての大所高所から全体を俯瞰する目線からミドルマネジメントまたはロワーマネジメント(現場監督)目線になってしまったのではないかと感じています。もともとスペシャリストの方なので、専門性に特化した分野に偏った思考に陥ることは、当然のことなのかもしれませんが…
スペシャリストの方を納得させることは至難の業です。今回の打合せで、この経営幹部に雄蕊の伝えたいことが正確に伝わらず、予期せぬ返答があった要因は、経営幹部のスペシャリスト思考に気付かず、本来なら最初に「全体最適」という土俵に目線合わせをする必要があったにも拘らず、それを怠ったため意見に相違が生まれてしまったと考えています。

組織のなかで果たすべき役割によって、組織に対する考え方も異なります。部門や課を任されているミドル層やロワー層の管理者は、自分の部門や課を守ろうとします。それは当たり前のことです。トップマネジメントを担う経営者や経営幹部は「全体最適」を常に考え、部門や課の利害という「部分最適」を主眼に捉える管理者層にその理解と協力を求める「伝える力」を身につけることが不可欠です。こうした中間管理者層と円滑にコミュニケーションをとるために最初に取り組むべきことは「考える土俵」を同じにすること、考え方や価値観の目線合わせをすることだと思います。相手の立ち位置を把握し、その位置での利益や価値観を理解したうえで、コミュニケーションをとることがトップマネジメント層には必要だと考えます。

《ロジックとパッション》
雄蕊は、人を納得させる「伝える力」の基本は、「ロジック(理論)とパッション(情熱)」だと思っています。しかし、このブログの冒頭で述べた通り、相手の利益や価値観に反するものだと簡単には受け入れてもらえません。相手にとって不利益なことも相手に納得してもらうためには、受け入れてもらいたい理由を明確にし、情熱を持って論理的に説明することが不可欠です。

さて、コミュニケーションスキルを語るとき、「メラビアンの法則」がよく取り上げられます。メラビアンの法則は、1971年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校の心理学者であるアルバート・メラビアンが提唱した概念で、「感情や気持ちを伝えるコミュニケーションをとる際、どんな情報に基づいて印象が決定されるのか」ということを検証したものです。メラビアンの実験では、言葉と表情、態度が矛盾している状況で、人はどんな印象を抱くのかが検証され、その結果、提唱されたのが「3Vの法則」と言われるものです。この法則は、「言語情報=Verbal」「聴覚情報=Vocal」「視覚情報=Visual」の頭文字を取って命名されたもので、この3つのVが以下の割合で伝達するとされています。

メラビアンの実験は、あくまでも「感情を伝えるコミュニケーションにおいて」という限定的な状況で得られた結果です。話の内容そのものが重要であることに間違いはありませんが、身だしなみや態度、表情やボディランゲージといった非言語コミュニケーションで相手に好意を伝えることで、メッセージをさらに強化し、齟齬なく伝えることができるというのがこの法則の本質です。
メラビアンの法則を正しく理解し、コミュニケーションに活かすことで、日常業務や日常生活のなかで「伝える力」は格段に強化されると思います。雄蕊も非言語情報の部分を意識しながらコミュニケーションをとるように心掛けています。

《雄蕊流伝達力》
今回、お伝えしたかったことをまとめてみます。
①伝える相手にとって価値観の相違がある場合や相手の利益にならないことは、納得を得られない。
②相手にとって、伝える側に相応の威信がなければ伝わりにくい。
③正確に情報を伝えるためには、準備に時間をかけることが必要である。
④伝える相手の立場に立ち、相手と価値観に相違があったり利益が相反したりすると考えられる場合は、お互いに同じ土俵に立つこと、つまり目線合わせをしてから、本題を伝えなければ齟齬が起きる可能性が高まる。
⑤相手に突き刺さるような伝え方は、まず「ロジック(理論)とパッション(情熱)」、そして非言語情報である「視覚情報」「聴覚情報」にも配意しなければならない。

伝える方法は、「話す」「書く」そして「聴く」こともその1つだと思います。こうして雄蕊が書くブログも伝えるためのツールです。まだまだ「伝える力」が未熟であり、更に精進しなければならないと思いながらも書き続けています。
「量が質をつくる」、数を熟すことによって質を高めるということです。雄蕊もまずは数を熟して質を高めるよう努力していきますので、引き続きよろしくお願いします。

投稿者プロフィール

矢野 覚
矢野 覚
LINK財務経営研究所 代表 
1982年 4月 国民金融公庫入庫
1993年 4月 公益法人日本生産性本部経営コンサルタント養成講座派遣
2015年 3月 株式会社日本政策金融公庫退職
2015年10月 株式会社山口経営サポート(認定支援機関)入社
2019年12月 同社 退社
2020年 2月 LINK財務経営研究所 設立
2022年 5月 健康経営アドバイザー
2022年 7月 ドリームゲートアドバイザー
中小企業金融の現場で、33年間、政府系金融機関の担当者~支店長として事業資金融資の審査(与信判断)や企業再生支援、債権回収業務に従事するとともにそれに関する稟議書の起案・決裁に携わっていました。
その後、中小企業の財務責任者として資金調達、経営改善業務をお手伝いさせていただき、短期間で赤字体質の中小企業を黒字体質に改善するコトができました。
こうした経験を活かして、「財務の力でヒトとカイシャを元気にする」ために、小規模事業者・中小企業の皆さまのお役に立ちたいと考えています。

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