第67回 金融機関がお金を貸したいと思う強い組織の作り方

中小企業経営

「こんにちは、かんれき財務経営研究所の雄蕊覚蔵です!」第67回は「金融機関がお金を貸したいと思う強い組織の作り方」と題して、雄蕊なりの考えを述べようと思います((注)金融機関の定義:小規模事業者・中小企業に事業資金の融資を行っている金融機関とします)。・・・なんとか2月に1本投稿できました。

 

《大型プロジェクトに対する心配事》
あるクライアント企業が大型プロジェクトを計画しています。もう1年以上前から、もっといえば5年ほど前から話には上がっているプロジェクトなのですが、なかなか前に進みません。この企業にとって最重要課題だと認識しているのですが、経営者始め現場の方達にはそこまでの本気度がないのです。

雄蕊が関わり始めた当時のこのクライアント企業の財政状態を始め、返済不能に陥った数多くの残念な企業を見てきた雄蕊の経験からすると、このクライアント企業が推進しようとしている大型プロジェクトを成功させるうえでの冒頭申し上げたような心配事がどうしても拭いきれません。
大型プロジェクトがなければ、現状のままで推移してもこのクライアント企業が今すぐ事業閉鎖に追い込まれるような危険性はありません。数字やお金に関して収益構造の基盤は出来上がっているので、ゆっくり組織改革に出来る範囲で取り組めば良いと思います。
しかし、大型プロジェクトを成功させるためには数多くの課題を、スピード感をもって解決しなければなりません。なぜなら、このプロジェクトはかなり背伸びした計画だからです。
本来なら計画の80%程度が達成できれば、事業が回せる計画を策定し、実行すべきなのですが、この企業には残念ながらそこまでのポテンシャルはないのが現実です。
経営者自身も身の丈以上の借金を抱えた経営を経験したことがないと思っています。経営者・経営幹部全員が「借金経営」への処女航海なのです。
大型プロジェクトへの雄蕊の関与ですが、雄蕊は「中途半端」は嫌いです。引き受けた以上、自分事として真剣にそして徹底的に取り組みます。経営者と雖も妥協は許せません。妥協したら失敗するからです。

正直、昨年末からこの年初にかけてこのプロジェクトの成功は難しいかなと思い始めました。一番の原因は、経営者の本気度が計れなかったからです。しかし、経営者と何度か二人で話をするなかで、経営者の思いを理解することができたので、少なくとも向こう2年間は全身全霊を懸けて取り組もうと思いました。期限を切って取り組まないと成功しないという思いから敢えて期限を設定しました。

しかし、現場の幹部からはそういう真剣さが感じられません。「ながら仕事」で片付けようとしか思えません。ここも変らなければいけないと思いますが・・・

大型プロジェクトへの総投資額のほぼ満額を金融機関からの借入で賄う計画です。
複数の地元の民間金融機関と政府系金融機関から資金調達する計画を立てています。
雄蕊は、政府系金融機関で一定範囲の融資決定の最終権限を持った支店長職の経験者です。融資判断の基本(政府系金融機関の判断基準)は普遍的だと思っています。判断基準を一言で言うと「持続可能性の高い強い組織か、否か」です。政府系金融機関は民間金融機関と違い、決済機能がなく顧客との継続的接触がほぼないので、わずかなインタビューと資料だけで融資判断をすることになります。つまり、融資相談の時だけの一発勝負で忖度する余地がないのです。
一方で、国の予算の執行機関である政府系金融機関は予算消化に向けた融資推進には積極的です。しかし不良債権化して収支が悪化すると税金による資金補填が必要となり、国民からの批判が強まります。つまり、デフォルトの可能性が低く、政府系金融機関が貸したい強い企業になれば、積極的に融資してくれるのです。

雄蕊は、金融機関の目利き力を基にクライアントの大型プロジェクトの可能性を評価しています。雄蕊が融資可能と判断できれば融資して貰う方向で金融機関に対して強気の交渉も出来ますが、そうでなければ及び腰の交渉をするしかありません。

 

《金融機関の融資のポイント》
これまでこのブログの記事で、金融機関から融資して貰うために経営者が考えなければならないこと等をお伝えしてきましたが、改めてこの機会に金融機関がお金を貸したいと思う強い企業の作り方について考えてみます。

金融機関は定性評価と定量評価の両面から総合的に与信判断を行います。融資判断を行うポイントを大きく分けると以下の項目になります。
1 経営者等の法人運営に対する考え方
2 法人のガバナンス体制(経営管理体制やコンプライアンス体制等)
3 今後の事業展開やビジョン
4 財務及び収支状況
5 事業計画及び資金計画
6 人材確保、教育・研修計画
7 収入支出・償還計画
8 担保、保証人
以上のポイントから読み取れることは、以下の4項目です。
①組織と人に関することが融資判断の最重要ポイント(組織の持続可能性の追求が最重要)
②足下の数字とお金の重要度は低い(フローよりストックを重視)
③事業計画、資金計画と計画実行のための人材確保(計画の妥当性と実行性の担保)
④担保等、保全状況(融資金回収のリスクヘッジ)

つまり、金融機関が重視するのは、財務諸表に示された数字ではなく、経営者の資質であったり、組織運営に関わる管理体制だったり。しかし、こういったポイントは、可視化することが出来ません。経営者や従業員へのインタビューであったり、現場を実地調査したり、金融機関の担当者が自分の五感をフル活用して暴き出すしかありません。こうした決算書の行間に潜む企業のドラマをいかに見抜くかが金融担当者の「目利き力」なのです。
逆に借りる立場である中小企業の経営者からすれば、金融機関の融資のポイントを理解し、金融機関が貸したくなる強い組織を作れば、必要なときに必要なだけ融資を受けることができるようになると言うことです。
さて、それでは強い組織作りのポイントをいくつか考えてみます。

 

《実行力と行動力が発揮できる組織風土・文化の醸成》
あるクライアントの経営企画会議では、現場に関する確認事項、承認事項は決まったことが実行されるのですが、組織改革や組織運営に関わること、人の意識改革・行動変容を求めること等、こうした議題に関しては会議の場限りで終わってしまい、事後の実行・行動変化に結びつけることができていません。
営業活動等の具体的な戦術も、経営幹部が現場業務に忙しく、集中して議論できる時間が確保できていないのが実情であり、具体的な内容への落とし込みもまだで、ほとんど暗礁に乗り上げた状態だと思っています。

こうした足下の(ある意味小さな)課題解決だけでなく、議論すべき事が会議や協議のテーブルに乗り、共通の課題認識の下で共通のゴールを目指してしっかり議論・協議して決めた対応策等を実行に移せる実行力・行動力を備えることが重要だと思います。

 

《持続可能な強い組織作りの第1歩は、経営者・経営幹部同士、経営者、経営幹部、管理者と現場スタッフ、それから部署・部門間、それぞれがお互いに良好な人間関係・信頼関係を築くこと(組織内での人間同士の関係作り)》
雄蕊が目指している企業の姿は「カネを借りるための組織作り」ではなく、「持続可能性の高い、強い組織作り」です。強い組織が出来上がれば金融機関はいくらでも喜んでお金を貸したがります。
経営者や管理者は常に数字を考えなければなりません。このプロジェクトからも分るように自己資金であれ、借入であれ、資金調達ができなければ何も進まないのです。
数字やお金は意思を持たないので、人が意のままに操ることが出来ます。つまり、企業の経営者・経営幹部が一枚岩となって数字とお金を操ることこそ最も大切なこと=本質だと思っています。もっと言えば、数字とお金を操るためには、現場の管理者やスタッフの協力が必要なのです。それには、スタッフを育てることもスタッフが辞めない組織にすることも大切なことなのです。スタッフに病院に対する高いロイヤルティ(忠誠心)を持って貰う必要があります。
我々がまず取り組むべきことは、円滑な組織運営のための人間関係・信頼関係の構築だと思います。

 

《管理者の部下に寄り添う相談しやすい雰囲気作りと現場に潜むリスクを見逃さず、適時適正に対応できるコミュニケーション、情報共有、課題をしっかり議論できる環境作り》
「誰に相談して良いか分らない」「相談しても対応して貰えない」雄蕊や経営管理部に相談に来るスタッフ、或いは経営者に直接相談を申し出る管理者等が口にする言葉です。
こうしたスタッフの行動を直属の上司としては、当然面白くないでしょう。良く分ります。ラインを飛び越えて、直接本部や経営管理部に直談判みたいなことは許せないと感じるのが、責任感ある管理者なら誰でもそう思うことです。
そうした上司に理解して欲しいことは、相談に来るスタッフ達は、人の悪口を言いに来るのではなく、自分が困っている課題解決を求めに来ているということです。そのスタッフの単なる愚痴なのか、現場に潜む組織上の課題なのか、相談の内容は経営者が理解・納得出来る内容なのか等、常にそういった観点を持って相談を受けています。内容によっては「上司は知っているの」と確認もしています。また、雄蕊が相談を受ける際には、スタッフの相談事の本質をしっかり掴むこと。「言ったモン勝ちにしない」ということには気をつけています。

相談を受けるたびに、いつも思う疑問「何故、ライン上の上司等に相談しないのか?」です。疑問に対する雄蕊なりの答えを考えてみました。
雄蕊がある部門のスタッフだとして、悩み事、困り事があった場合、まず、直属の上司に相談し、それでも解決しないなら上司の上司に相談しようと思います。
ところが、上司はシフト勤務に入っているので、常には現場にいない。たまにいても不機嫌そう。上司の上司は、時間内に収まらないほどの業務を抱えている。現場の運用上の相談や調整はできても、難しい課題を解決できる余裕はないだろうと考えます。ならば本部・経営管理部へGO!
この仮説が正しいか否かはわかりませんが、雄蕊ならこんな風に考えてしまいます。

雄蕊の役割は「部分最適」を目指すのではなく、「全体最適」を目指すことです。法人全体の重要度・緊急度の高い課題解決が最優先事項です。
こうした思いを理解されず、議論のテーブルにも乗らない管理者の身勝手な発言には怒りも覚えますし、好きにしたらと投げやりにもなります。
ここで問題だと感じていることは、個人や各部署だけの偏った主張を繰り返し、「WHY(何故)」とか「HOW(どうすれば)」といった原因追及や改善方法等の議論に発展しないことです。
部分最適を求めた「結論ありき」で議論しようとするので、それ以上、議論を深めることが出来ず、結果として前進、発展することに繋がりません。「お任せするので、勝手にしてください」で終わるしかないのです。

残念ながら、経営幹部同士でもそれぞれの主張や結論が先に立ってしまい、共通認識を持って共通理解を得られる突っ込んだ議論が出来ないと感じています。

 

《「人の管理」ではなく「仕事を管理する」姿勢を持った議論》
質問です。「人を管理する」ことと「仕事を管理する」ことの違いが説明できますか。
「人を管理する」ことに偏ってしまうと、管理者の部下等(人)に対する好き嫌い等の感情が入ってしまいます。そうすると依怙贔屓が生じて、管理される側からみれば、不公平・不平等な扱いと取られかねなくなります。
「仕事を管理する」とは、与えられたポストや職種等に期待される役割を果たしているか否かだったり、部下の仕事ぶりをしっかり点検・検証し、進捗に遅れが生じていたり、知識やスキルが不足していたりすれば、指導や助言を行ったりすることです。時には厳しく叱責することも必要かもしれません。
仕事を管理することは、部下を成長させること、企業に対する顧客の信頼を得てファン層を広げることに繋がると思います。

経営幹部のメンバーにも「人の管理」という視点から捉える方、「仕事の管理」という視点から捉える方がいると感じています。
我々の役割は、その人の人格や人間性を評価するという趣旨を含めた「人」を管理するのではなく、「仕事」を管理することに徹することです。そして我々が期待する各ポストの役割を明確にして、適材適所の人事を実行する。そうすれば目の前で起きている組織の「分断」等の課題も解決する糸口が見つかると思います。

まずは、数字やお金ではなく、数字やお金を適正に操ることが出来る組織体制や人間関係・信頼関係の構築が、強い組織を作ることに繋がり、金融機関もお金を貸したいと思ってくれるのです。

投稿者プロフィール

矢野 覚
矢野 覚
LINK財務経営研究所 代表 
1982年 4月 国民金融公庫入庫
1993年 4月 公益法人日本生産性本部経営コンサルタント養成講座派遣
2015年 3月 株式会社日本政策金融公庫退職
2015年10月 株式会社山口経営サポート(認定支援機関)入社
2019年12月 同社 退社
2020年 2月 LINK財務経営研究所 設立
2022年 5月 健康経営アドバイザー
2022年 7月 ドリームゲートアドバイザー
中小企業金融の現場で、33年間、政府系金融機関の担当者~支店長として事業資金融資の審査(与信判断)や企業再生支援、債権回収業務に従事するとともにそれに関する稟議書の起案・決裁に携わっていました。
その後、中小企業の財務責任者として資金調達、経営改善業務をお手伝いさせていただき、短期間で赤字体質の中小企業を黒字体質に改善するコトができました。
こうした経験を活かして、「財務の力でヒトとカイシャを元気にする」ために、小規模事業者・中小企業の皆さまのお役に立ちたいと考えています。

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