第102回 話が通じにくく、扱いが難しいと感じる人との接し方

スキルアップ

「こんにちは、かんれき財務経営研究所の雄蕊覚蔵です!」第102回は「話が通じにくく、扱いが難しいと感じる人との接し方」と題して、なかなか上手くコミュニケーションが取れないために話が通じにくく、扱いが難しいと感じてしまう人との接し方について考えてみます。

40年余り、様々な職場で数多くのメンバーと仕事をしてきましたが、そのメンバーの中には、なかなか上手くコミュニケーションを取ることができず、どうすれば話が通じるのだろうとその解決に苦心することもしばしばでした。結局、解決に至らなかったテーマなのですが、同じような悩みを持つ人も多いのではないかと思い、あえて上手くいかなかったこの問題をテーマに取り上げて考えてみることにしました。

 

話が通じない人の特徴(2つにパターン化)
1つ伝えれば10のことを理解して貰える人、どんなに説明を尽くしても理解して貰えない人、伝えたことへの理解が少しズレている人、様々なタイプの人がいます。その中でも、どう話しても理解してくれない、仕事を進めていく上で意思疎通を図るのが難しいという人が上司や同僚や部下にいると辟易としてしまいます。
あまりの話の通じなさに、「本当は理解しているけれど、自分の考えを曲げるつもりがないので、あえてそういう態度をとっているのか?」「伝えていることは相手にとって価値がないので、無視されている?」と相手との間に深い溝があるのではないかと不安に思ってしまうこともあります。そうしたことが積み重なると、話が通じない相手に対してイライラしてストレスになったり、人間関係が悪化したりということに繋がってしまいます。
話が通じない人には、大きく分けると「自分の意思を持ってそうしている人」と、「無意識のうちに話が通じない人になっている場合」の2つのパターンがあるようです。ネット上に興味深い記事があったので、それを参考にまとめてみます。

1 自分の意思でそうしているパターン
① 人の話はあまり聞かず、自分の意見ややり方が正しいと思い込んでいるタイプ
仕事のやり方で、論理的にアドバイスしたとしても全て「でも」で返ってくる、もしくは黙る等の特徴があればこのタイプの可能性が高いそうです。
「でも」は反対意見です。何を言っても「でも」と反論したり、無言になったりする人は、伝えたことに納得していませんし、そもそも人の話を聞いていません。

② プライドが高い人やこだわりが強いタイプ
プライドが高い人は、他者からの指摘で自分がイメージする自分像ではなくなってしまう事を嫌います。また、こだわりが強い人は、その人だけのマイルールを持っているので、他者からのアドバイスはそもそも理解しがたいものなのです。

③ 競争心や承認欲求が高く、意図的に話が通じない人になっているタイプ
誰かの意見を聞き入れたり、自分の足りなさを認めたりすることは「負けること」と思っていて、勝ち続けることこそが大切でそのためには他人を悪く言って、自分がどれだけすごいかということを見せたいので、いつでもマウンティングしたがるのです。基本的に自分の非は認めませんし、人の話は聞かないので成長もせず、扱いに手を焼くのです。

2 無意識にそうなってしまっているパターン
① 短気で感情的になりやすいタイプ
ただ意見が違うだけでも「否定された」と過度にネガティブに捉え、瞬間湯沸かし器のように怒り出してしまいます。怒りもそうですが、落ち込みや悲しみの波も大きく、簡単なアドバイスでも「怒られた」「自分はダメだ」と深く落ち込んでしまいます。

② 語彙力や知識、理解力がなく、「頭が悪い」「飲み込みが悪い」「勘が悪い」と言われてしまうタイプ
深く接してみると、一般常識がなかったり、知識が薄かったりする場合が多いのです。
会話をしていても「どういうことですか?」「どういう意味ですか?」といった質問が多く、理解できていないという表情を浮かべています。

 

話が通じないと感じる人への対処法
話が通じないと感じる人への対処法は、上述した特徴によって異なる対応が必要だと思いますが、ここでは汎用性のある対処法について、上司と部下という設定も交えながら考えてみることにします。

① 否定しない
間違っていることを理解させたいために、否定してしまう等強く出てしまう事があると思います。しかし、普通に接していて話が通じないのですから真っ向から立ち向かっていっても意味がありません。まずは、一歩引いて相手が言っていることを否定せず、認めさせようとすることをやめることが第一歩です。

② 相手を認める
「なぜ話が通じない?」と思うこと自体がストレスになりますので、憤るのではなく、変わった個性だと発想を転換するのも1つの方法です。本心では違うと思っていても相手の意見を一旦は認める努力から始めてみることが大切です。
「なぜわかってくれないの?」と思ってしまうとそこで思考は停止、ずっと平行線のままです。「価値観が違うから仕方ない」「どのようにしたらわかってくれるのか?」と理解し、思考と行動を変えることで、コミュニケーションを変化させることもできると思います。

③ 噛み砕いて説明し、丁寧に確認する
価値観が違う相手だと認めることができれば、自ずと相手が理解できるように話そうと努力するようになります。同じことを話しても、相手によって話のアプローチ方法が変わるかもしれません。相手が部下であればなおさら、自分よりも経験や知識が薄いという前提のもと、なるべく分かりやすく噛み砕き、会話の中で「わかった?」「何か疑問はある?」等、理解しているかどうか確認しながら話をするのです。

④ 究極の状態といった決定的な瞬間を経験できる場を設定する
個性というのは、その人の性格もありますが、主に経験してきたことにより作られています。
何十年もその考え方や性格で生きてきた人を変えるのは容易ではありません。価値観を180度変えるような決定的な瞬間に出会わない限り、劇的に変わることは無理です。
話が通じない理由の1つに、お互いの「問題意識」や「危機感」の違いも影響していると思っています。
経験したことのない「たぶん」や「だろう」の想定事には実感が沸かず、理解できないことが多いのです。危機的で追い詰められた究極の状態を一緒に体験して同じ認識を持って貰うこと、つまり、意識を変える必要性に迫るような現実の危機感や切迫感を共有することも大切なのです。

⑤ 扱いが難しいと感じる人の話の聞き方を身につける
文句や要求ばかり言う扱いが難しいと感じる人の話をどう聞くかについて考えます。
そうした人からの話は「単なる愚痴レベルであり、受け止めるだけでよいこと」なのか「真に困っていることであり、納得して対処すべきこと」なのかをハッキリ分けて聞くことが求められます。受け止めるのと納得するのを分けて聞くためには、状況確認をしっかりすることが基本になります。話の真意は「単なる思いつき」や「身勝手な要求」であることも多いので、要望やニーズだけを聞こうとしてはいけません。
文句や要求だけを聞くのではなく、状況についてきちんと説明させることを習慣化して、なぜ難しいのか、なぜ忙しいのか等を納得するまで聞かなければなりません。そうすると「優先順位がついていない」等の状況が見てとれるケースがよくあります。そのような状況を放置したままで、要求を飲んでも、望む効果は得られません。また、話を受け止めることはしても、内容に納得がいかない時には、その旨をハッキリと伝えなければならないのです。

⑥ 意識を変えるために、アプローチを工夫する
上司にとって、部下ができる人間で、言ったことをきちんと守ってくれたり、こちらの伝えたい意図をくみ取り、自分で考えて改善してくれたりする部下であったら、上司としての様々な悩みは起きないのですが、残念ながら「できる部下」というのは、ほんのひと握りしかいません。誤解を怖れず率直にいうと、ほとんどが「ダメな部下」なのです。
だからといって、急に部下は育たないし、ダメだからといってすぐに人を変えることも難しいので、基本的には、今いる部下を手間暇かけて育てていくしかありません。
そもそも、人は簡単に変わってくれません。部下に変わることを期待するよりも、上司の部下に対するアプローチ法を変えることが一番手っ取り早い方法です。
何度注意しても同じミスを繰り返す部下に、つい「ダメなやつだな」とイラついてしまうことは、上司といえども人間である以上、それは仕方がないことかもしれません。ただし、それを表に出して相手を萎縮させてしまうようでは、上司として失格です。そういうときに自分の感情を上手にコントロールして、部下にしっかりと仕事をさせる意識付けができるか否かが、上司としての力量の有無の分かれ目といえます。
その人のキャラクターや置かれている状況によって、響く言葉、響かない言葉は違うので、どういう言葉がいいか、言葉の選択や伝え方に工夫を加えて、一人ひとりにあったコミュニケーションが取れればベストです。

⑦ 具体的な話を聞き出すのに効果的な言葉を使って質問する
状況、原因、理由等を聞いていく際に「きっかけは?」という質問を使うと、具体的な話が出てきやすくなると学びました。
「文句や要求ばかり言う人」からの要求に対して「そう考えたきっかけは?」という聞き方をすると、状況、原因、理由等についての具体的な話が出てくるものです。もし、「きっかけは?」と聞かれて具体的な話が出てこなかったら「単なる思いつき」で要求している可能性が高いことになります。

話を聞いている時に、ちょっと引っかかる感じがする時には、すかさずツッコミを入れたり、言いたいことをうまく汲んであげたりできると、大きなトラブルや突然の退職を未然に防ぐことができます。
「というと?」「とすると?」「そうすると?」「それって?」「ということは?」「どうした?」「なにそれ?」「なになに?」「どういうこと?」等、話の先を促す「問いかけ」に近い相槌を打つことで、相手の言葉尻や、言葉の切れ端を拾いやすくなります。
話の先を促す相槌は、話し手の話に疑問を覚えたり、不満や不安、戸惑い、ためらいなどを感じ取ったりした時に、やさしく問いかけるように使うと効果的です。ちょっとした話を聞いてあげることで、救われる人は多いと思います。

⑧ 先入観や固定観念を捨てて、真っ正面から向き合ってみる
「部下とはあまり話さないので、何を考えているのかよくわからない」と思っている上司は、まず「自分は部下に関心を持っているか? 話を聴こうという気持ちがあるか?」と自分に問いかけてみることから始めてください。人は、自分に関心を持っていないと感じる相手とは、積極的に話そうとはしないものです。また「自分はダメだと思われている」と感じれば、部下は心を閉ざしてしまい、二人の間の溝は深まるばかりです。
この状況を改善するためには、まず部下に関心を持ち、日頃から言動や変化をよく観察してみてください。そして、ちょっとした雑談でよいので根気よく声を掛け続けることを心掛けてください。それにより少しずつ胸襟を開いてくれるはずです。部下とさまざまな話をしていく中で、少しずつその人となりもわかるようにもなります。
部下をダメだと思っている先入観やダメな部下のイメージといった固定観念を捨て、まっさらな気持ちで相手と向き合うと、部下の違った一面が見えてくるでしょう。「承認」は、相手の優れた点だけを評価することではなく、その人の存在そのものを認めて受け入れることなのです。

⑨ 「ペーシング」と「ミラーリング」で話しやすくさせる
自分の評価を過剰に気にする部下の場合は、上司が雑談等でコミュニケーションを図っても余計なことを言わないように自制してしまうことがあります。そのような部下に対しては「正しい答えを求めているのではない。味方だから安心して話してほしい」「評価するためではなくて、お互い気持ちよく仕事をするために、君の価値観やこだわりを知りたい」等と伝えることが大事です。
人には、自分と似ている人に安心感を持つ性質があります。その安心感を引き出すのが「ペーシング」と「ミラーリング」です。ペーシングは、会話をするときに呼吸や話すスピード、声のトーン、ボリューム、抑揚をできる限り相手に合わせる手法です。ミラーリングでは、鏡のように相手の身振りや手振りといった動作や表情等の見た目を合わせます。こういった方法を駆使して、相手の共感や信頼感を呼び起こし、普段の自分らしく受け答えできる状況を作り出すのです。

 

基本は「円滑なコミュニケーション」の実践
人は感情の生き物であり、一人ひとり育った環境もキャリアも異なります。意識や考え方も十人十色です。企業を経営し続けていくうえでは、そうしたバラバラな人の集団を統率して、経営者が目指す企業目的の達成に向けて組織として動かさなければなりません。そのために経営ビジョンや経営理念という共通のゴールを設定して、バラバラな集団のベクトル合わせをしなければならないのです。また、良い意味で締まりと緊張感のある組織運営を続けるためには、しっかりとした管理者を置いてマネジメントしなければならないのです。3つの「信」を活かすことも、従業員エンゲージメントを高めることも、こうした様々な取り組みの基本になるのは「円滑なコミュニケーション」です。

コミュニケーションの取り方に正解はありません。常に試行錯誤の連続です。この記事もそうなのですが、こうした類いの「コミュニケーション・スキル向上策」は巷に溢れています。こうした情報を参考にしながら様々な手法を幅広く学び、失敗を怖れずに実践することを粘り強く繰り返すことが大切です。一人ひとりのコミュニケーション・スキルに磨きをかけ、自分にあったコミュニケーションの取り方を見つけるしかないと思っています。

投稿者プロフィール

矢野 覚
矢野 覚
LINK財務経営研究所 代表 
1982年 4月 国民金融公庫入庫
1993年 4月 公益法人日本生産性本部経営コンサルタント養成講座派遣
2015年 3月 株式会社日本政策金融公庫退職
2015年10月 株式会社山口経営サポート(認定支援機関)入社
2019年12月 同社 退社
2020年 2月 LINK財務経営研究所 設立
2022年 5月 健康経営アドバイザー
2022年 7月 ドリームゲートアドバイザー
中小企業金融の現場で、33年間、政府系金融機関の担当者~支店長として事業資金融資の審査(与信判断)や企業再生支援、債権回収業務に従事するとともにそれに関する稟議書の起案・決裁に携わっていました。
その後、中小企業の財務責任者として資金調達、経営改善業務をお手伝いさせていただき、短期間で赤字体質の中小企業を黒字体質に改善するコトができました。
こうした経験を活かして、「財務の力でヒトとカイシャを元気にする」ために、小規模事業者・中小企業の皆さまのお役に立ちたいと考えています。

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