第26回 「経営する」「管理する」とは(その1)

マネジメント

「こんにちは、かんれき財務経営研究所の雄蕊覚蔵です!」第26回は、『「経営する」「管理する」とは』具体的に何をどうすることなのかついて、考えてみたいと思います。

《「経営する」「管理する」という言葉だけが独り歩き?!》
これまでに何度もお伝えしてきましたが、雄蕊は長年、中小企業金融の世界で多数の経営者の方とお会いしてきました。特に現職に就いてからは、資金面だけでなく、人事・労務等経営全般について関わることが多くなりました。
そんな中で、最近改めて、経営者や経営幹部が口にする「経営する」「管理する」とは、どういうこと?具体的な中身は何?という素朴な疑問を持つようになりました。そこで、改めてこうした言葉の持つ意味について考察してみようと思い、今回はこのタイトルで話を進めます。
中小企業の現場では、経営者と雖も「プレイングマネージャ」として第一線に立ち、日々、積極的に営業活動等に取り組んでいることが多く、経営者の立場に立ち「経営について考える」時間は限定的だと思います。
雄蕊が勤務していた政府系金融機関のお客さまは、小規模事業者が主体でしたので、組織だって物事を考えるというよりは、生業維持を念頭において判断する企業が多かったと思います。しかし、企業が成長し、ある程度の売上規模や従業員が増えてくると組織としての仕組みの構築や経営者の想いを従業員に対してコミットメントすることが組織運営上の重要課題になってきます。
経営者の方が口にする「経営する」、経営幹部(管理・監督者)が口にする「管理する」という言葉だけが、独り歩きしていて、中身のない空疎な絵空事のように聞こえてくる感じが最近とてもしています。言い換えると、経営・管理が体系的に進められているのではなく、場当たり的でその場凌ぎになっているのではないかという懸念に繋がっているということです。

《「経営する」とは》
一言で「経営」と言っても、その言葉の持つ意味は、経営者一人ひとりにとって異なる意味を持っているものです。何故なら、特に中小企業は、千差万別であり、一社一社の存在意義や経営課題等が異なるからです。
「経営者」は、経営者自身にとっての「経営」を定義する必要があります。それが定義されていない限り、真の経営者にはなれないのです。
中小企業では、社長がトップ営業マンや人事管理責任者や財務管理責任者等を兼ねている企業が数多く存在します。職務分掌として、社長にトップ営業マンの仕事を割り振るのはその企業の実情次第です。特に限定的な人的資源で業務運営をしていかなければならない中小企業にとっては、一人で複数の仕事をこなせる人財を確保することは不可欠なことです。

ここで考えなければならないことは仕事の数ではなく中身(質)だと思います。社長が経営者としての仕事ができておらず、部長レベルの仕事しかしていない企業では、部長は課長レベルの仕事に留まり、課長は平社員レベルの仕事をしており、平社員に至ってはほとんど戦力になっていないのが実情です。多くの中小企業では、社長は統括部長に過ぎず、経営者ではないのです。それは、自身にとっての「経営」を明確に定義していない社長だからです。

それでは、「経営とは何か?」について考えてみます。
経営の基本は「ヒト・モノ・カネ・ジョウホウ」
経営の基本は、人事の「ヒト」販売の「モノ」財務の「カネ」戦略の「ジョウホウ」という経営資源の活用だと思います。この4本柱を上手く活用することで、質の高い経営を実現させるのです。
「ヒトの活用」:最もセンシティブでマネジメントが必要
「モノの活用」:商品や商材等提供する「モノ・コト」の決定
「カネの活用」:財務的な視点から、売上や費用、投資についての計画策定
「ジョウホウの活用」:経営ビジョン、経営方針、事業計画策定の基本

具体的に企業経営を考えてみると、大きく「ハード面」と「ソフト面」に分類することができます。
経営の1つは、商品の販売、サービスの提供を「会社」という集団で行うことです。つまり、会社経営とは、人の力を集めることだといえます。人が集まると、そこには費用が発生します。従業員に給料を支払う必要があるのは当然ですし、働く場所や机、椅子、パソコン等の備品も用意しなければなりません。経営には、会社を維持するために必要なハード面(経済面)を整備するという側面があります。
もう1つは、ソフト面(精神的な面)です。人が集まって構成される会社は、誰かがしっかりと方向を示し、構成員をグリップしないと機能しません。構成員が、自分勝手に各自のやりたいことをやっていたのでは、機能不全に陥ってしまいます。会社が目指す方向を定めること、それが会社を経営するために必要なことの2つ目です。会社の経営者は、このハード面(経済面)とソフト面(精神面)の両面を支える存在でなければならないのです。

経営とは、営みを経ける(いとなみをつづける)と書きます。経営の本質は、ゴーイングコンサーンとして企業の永続性を確立することだと思います。
「事業の将来はどうあるべきか?」という、たった一つの問いかけに対する答えを真剣に考え、企業の永続性を確立するためのアイデアや経営課題を抽出し、抽出されたすべてのアイデアを具現化し、経営課題を解決に導くのが経営者としての役割だと言えます。
然るべき目標(ゴール)を指し示して、会社の業績を上げ続けるためには、社長としてどのような仕事に重点を置き、それらの仕事を高い精度でこなすには何をすれば良いのか?
企業の永続性を確立する上で欠かせないと雄蕊が考える中小企業の社長が経営者として果たすべき役割を列挙してみます。

役割1「企業の永続性の確立」
企業の永続性を確立するための、衰退を予見し先手を打つ経営システムの構築は、最も重要な経営者の役割である。中小企業においては、社長以下の社員は目の前の仕事に精一杯で、未来の会社の姿を冷静に予見する機会に殆ど恵まれていない。従って、社長は経営者としての重要な役割として会社の将来を見つめ、事業の持続的成長の限界点や企業の永続性を阻害する課題を予見して先手を打たなければならないのです。
また、経済環境や社会情勢、テクノロジーの変化がもたらす事業価値の変化を先取りすることも忘れてはなりません。
万が一、経営課題を見逃す、或いは、事業価値が陳腐化すると会社はあっさり衰退してしまいます。

リスクマネジメント
会社経営にリスクはつきものですが、リスクを完全に排除することは不可能です。そのため、リスクの最小化に向けて、組織的にリスク管理することが必要です。避けられるリスクは事前に回避し、避けられない場合でも被害を最小限にする。こういったリスク管理のプロセス全体のことをリスクマネジメントといいます。会社を経営するにあたっては、想定されるリスクを挙げて、事前にリスクを小さくし、損害を小さくする対策を講じなくてはいけません。重要なことは、リスクや損害が隠蔽されない仕組みを作ることです。従業員が失敗を隠そうとする会社は、経営者のところに情報が上がってくるまでに時間がかかり、適切な対処ができなくなります。常日頃から、リスクや損害については、包み隠さず上司・経営者に報告が上がってくるような会社の雰囲気にしておくことが大切です。

企業風土
企業風土というのは目に見えるものではありませんが、どの企業にも存在するものです。雄蕊も複数の企業と関わるうちにそれぞれの企業に独特の雰囲気があることに気付きました。企業風土は、従業員のモチベーション等とも密接に関係します。企業の永続性を確立するうえで、人的資源の課題は避けて通ることが出来ませんので、企業風土に意識を向けることも経営者の重要な役割の1つです。
リスクや損害の隠蔽も、その企業体質、企業風土である可能性があります。経営者や従業員の一人ひとりの心構えで、どんな企業風土が作られていくかが決まります。企業風土というのは無意識に形作られているものなので、直ちに変えることは難しいかもしれませんが、悪しき風土が蔓延しているようでしたら、経営者の強い意思で変えることも必要です。

役割2「明確な経営ビジョン、経営理念・方針のコミットメント」
経営者の経営ビジョン、経営理念・方針を組織の構成メンバーと共有することが不可欠です。企業の成長は「経営者が掲げるビジョンや理念・方針の実現に向けて動く」ことがスタートラインになるからです。
明確なゴール設定がなければ行き当たりバッタリの会社経営に陥ってしまい、成長しないならまだしも、会社の衰退リスクが高まるばかりとなります。また、仮にゴール設定があったとしても、そもそもその設定が誤っていれば、いとも簡単に会社は衰退してしまいます。

役割3「ビジョン、理念・方針を実現するための事業計画の策定と実行」
経営者の掲げる経営ビジョン、経営理念・方針が明確になったら、それを具現化するための事業計画を策定し、実施することが経営者の役割です。
会社の最良の未来予想図を示す経営改善計画書の作成と計画実行の推進は、社長の胆力がモノをいう、終わりなき経営者の役割なのです。

役割4「数字の理解と精度の向上」
会社の数字の理解は経営者の重要な役割の1つです。なぜなら、会社の業績の良し悪しを判断するには、会社の数字の理解が不可欠だからです。
会社の数字には事業活動の全ての結果が集約されています。会社の規模に関係なく、会社の数字は正しい会社経営に欠かせない情報であり、会社の数字なしに満足な会社経営など出来るものではありません。また、会社の数字は、現在の状況だけを把握していればよいというものではなく、常に、決算時点や1年先、もっと先を見通すことも大切になります。先行きが分かれば、正しく先手を打つことができるからです。
経営者は、誰よりも会社の数字を理解する努力をしなければなりません。経営者が数字に疎いと、社員も数字に疎くなります。数字に疎い集団に、まともな会社経営など出来るものではなく、失敗しか道がないという状態に陥ることもあり得るのです。会社の数字の理解なしに、正しい経営力は身につきません。資金繰りも、数字の理解なしにはうまくいきません。会社の数字を理解することは、の経営者としての役割の第一歩です。
また、会社の数字の精度を上げることも重要です。なぜなら、数字の精度が低いと、経営者の最たる仕事である意思決定(決断)の精度が低下してしまうからです。
会社の数字は、会計処理を通して財務諸表(貸借対照表・損益計算書)と呼ばれる会計資料に集約されます。1年間という会計期間で作成される決算書(確定申告書)や1カ月という会計期間で作成される月次決算書(月次試算表)等、会計期間によって会計資料の内容は変わりますが、会計期間内の事業活動と会計資料の整合性が高いほど、優れた会計資料になります。事業活動や儲けの実態が正確に反映されていない会計資料は、経営に役立つことはなく、ゴミ同然といっても過言ではありません。いい加減な会計資料であれば無い方がマシで、正しい数字が認識できないばかりか、経営判断を誤る元凶にもなりかねません。
事業活動の実態が正しく反映された会計資料なくして、まともな会社経営などできるものではなく、会社の数字の精度を上げることは、数字の理解と同様、経営者の重要な役割です。

経営者は、最終的には自分が決定を下す必要があります。周囲の人に相談することはできますが、最終決定をするのは経営者自身です。実際のところ、経営者の悩みは、その立場になった人でなければ理解できない場合が多くあります。経営に関しては、人に相談するよりも、先人の経営哲学に学ぶ方が役に立つことも多いかもしれません。

雄蕊が関わる中小企業において、経営=お金の管理という意識が強くなっています。これは、雄蕊がその企業にかかわった当時は、お金の管理が最重要課題だったので、お金にフォーカスして経営に取り組んできた経緯があるからだと思います。しかし、この企業が現時点で直面する経営課題は、「お金の問題」から「人の問題」にシフトしています。企業も生き物なので、その時その時で抱える課題も変わります。的確に経営課題を把握することが求められています。

中小企業の成長等は経営者で決まります。経営者の最たる役割は意思決定(決断)する事であり、その意思決定(決断)の結果が会社の成長に反映するからです。意思決定(決断)の質は社長の能力で決まり、社長の能力は日々の仕事の質で決まるため、社長の仕事の質は業績を大きく左右する重要な要因になります。つまり、経営者の資質が、そのまま会社の盛衰を決定づけると言えます。

今回は、「経営する」に焦点を当てて考えてみました。次回は、「管理する」に焦点を当てて考えます。

投稿者プロフィール

矢野 覚
矢野 覚
LINK財務経営研究所 代表 
1982年 4月 国民金融公庫入庫
1993年 4月 公益法人日本生産性本部経営コンサルタント養成講座派遣
2015年 3月 株式会社日本政策金融公庫退職
2015年10月 株式会社山口経営サポート(認定支援機関)入社
2019年12月 同社 退社
2020年 2月 LINK財務経営研究所 設立
2022年 5月 健康経営アドバイザー
2022年 7月 ドリームゲートアドバイザー
中小企業金融の現場で、33年間、政府系金融機関の担当者~支店長として事業資金融資の審査(与信判断)や企業再生支援、債権回収業務に従事するとともにそれに関する稟議書の起案・決裁に携わっていました。
その後、中小企業の財務責任者として資金調達、経営改善業務をお手伝いさせていただき、短期間で赤字体質の中小企業を黒字体質に改善するコトができました。
こうした経験を活かして、「財務の力でヒトとカイシャを元気にする」ために、小規模事業者・中小企業の皆さまのお役に立ちたいと考えています。

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