第22回 お金を「稼ぐ仕掛け」と「儲かる仕組み」の構築

中小企業経営

「こんにちは、かんれき財務経営研究所の雄蕊覚蔵です!」第22回は、お金を「稼ぐ仕掛け」と「儲かる仕組み」の構築について、雄蕊なりの「考え」を紹介させていただきます。

 

《「稼ぐ」と「儲ける」の違い》
「稼ぐ」という言葉は、「お金を稼ぐ」以外にも「時間を稼ぐ」や「点数を稼ぐ」といった使い方をされます。一方、「儲ける」という言葉は、「お金を儲ける」、「子供を儲ける」といった使い方をされます。
お金を手に入れるという意味で、「稼ぐ」と「儲ける」を考えると、「稼ぐ」は精を出して働くことやその働きでお金を得ることを表し、「儲ける」は予想外な利益が出たり、うまく利益を得たりすることを表現していると言えるようです。英語では、稼ぐ=profit、儲ける=gainなのかもしれません。
雄蕊は、今回この2つの言葉を次のように定義付けして考えることにしました。
「稼ぐ」は、お金を手に入れるという流れ(フロー)、「儲ける」は、お金が貯まるという蓄積(ストック)を示す。
この定義に従い、お金を「稼ぐ仕掛け」と「儲かる仕組み」の構築について、雄蕊流に解説します。
これからお話しようとすることは、実は言葉・表現を変えただけで、その本質は、これまでこのブログで雄蕊が述べてきたことと同様のことなのですが、切り口を変えてお伝えします。

 

《事業の本質》
 “経営の神様”と称され、明治、大正、昭和、平成と、4代を生き抜いた松下幸之助が、88歳のときに「松下さんにとってお金とはなんですか」という質問に対して「お金がなかったら何もできしまへん。お金は重要ですよ。まだお金は欲しいでっせ」と答え、その後に続けて「けど、金は天下の回りものやから、いいことをしていれば、自然に集まってくる。やることに間違いがなければ集まってくる」とつけ加えているという記事をネットで目にしました。

その記事によると、松下幸之助にとって、お金は仕事の潤滑油であると考えていたそうです。仕事をする理由は、食べるためではなく、人間生活のすべてを良い方向に成長させていくためであり、そうした人間生活の働き、つまり経済活動をスムーズにするいわば潤滑油がお金である。だから、お金は目的ではなくあくまで道具であって、目的は人間生活の向上である。仕事そのものが良く、世の中のためになるときには、潤滑油としてのお金はついてくるが、いくら儲けようと思っても、それに値するものがなければお金はついてはこない。といっていたそうです。
この言葉を雄蕊流に解釈すると、お金儲けを目的にした事業では、いくらお金を稼ごうと思っても天下の回りものであるお金はついて来ない、社会に貢献するような、そして顧客が解決したい困りごとを対応することを目的とした事業に対しては、お金はついてくるということです。

 

《ニーズをシーズでウォンツに》
事業が成功する第一歩は、その事業が社会や人々が必要とされているか否かです。赤字事業は、もともと必要とされていない事業なのでさっさと撤退すべきだという過激な意見を述べる方もいらっしゃいます。
成熟化した現代社会では、モノは溢れており、人々の生活も豊かになっているので、高度成長期のようなプロダクトアウト型の事業では、需要が見込めません。一方、多様化するニーズのなかからまだ誰も手を付けていないニッチな市場を見つけて、そこに参入する。そうしたマーケットイン型の事業開発が当たり前になっています。市場ニーズは、もうとっくに重厚長大から軽薄短小へパラダイムシフトしているのです。
また、デジタルトランスフォーメーション(デジタルを活用した変革)やキャッシュレスやシュガーレスに代表される○○レス時代、そしてリモートワークやテレワーク等々、AI等のIT技術の進展による新業種新業態の台頭等、今後、産業構造が大きく地殻変動を起こすことは容易に予測が付きます。
新型コロナウイルスの影響で、ニューノーマルへの転換は、加速度的に進んでいくことに疑う余地はありません。ニューノーマルの世界には、必ず新しい市場が生まれます。新しい顧客ニーズをいち早く捉えて、参入することが重要です。

「ニーズをシーズでウォンツに」というマーケティング分野に関する言葉があります。ニーズ、シーズ、ウォンツの言葉の定義には諸説ありますが、この用語についても、雄蕊は、次のように定義して、このブログで使うことにします。
ニーズとは、顧客が求める必要性のこと、満たされない状態のこと
ウォンツとは、ニーズを満たすもの、顧客の満たされない状態を満たす具体的な商品やサービスのこと
○ビジネス用語としてのシーズとは、自社資源のこと、顧客のニーズに対して企業が提供する新しい技術や材料、ノウハウのこと

例をあげて説明します。
「中小企業経営者が、新規事業を立ち上げたいが、その事業に投資できるお金がいくらあるか分からない。経理・会計の担当者は配置しており、手許にある資金総額を知ることは出来るが、資金繰り等を考えた時、いくら使って良いかが不明である。」
この事例の経営者のニーズは、投資に使えるお金の総額を知りたいということです。
しかし、現場の経理・会計担当者は、資金繰りの将来予測をするスキルはなく、使えるお金を明示することができない。
ある財務コンサルティング会社には、財務の専門家が常駐しており、資金繰りの将来予測をするノウハウを持っている。つまり、シーズがある。
財務コンサルティング会社が、経営者に対して財務人財による業務受託サービスの提供を提案し、経営者がこの業務受託サービスを利用したいと思うことがウォンツです。
新規事業に投資したいというニーズを把握し、資金繰り管理というシーズを活用して、財務人財による受託サービスを利用したいというウォンツを顕在化させるということです。
つまり、「商品というモノを売る」のではなく、「顧客の課題を知り、その解決策を提供するというコトを売る」のがこれからの事業の本質だと思います。

 

《お金を稼ぐ仕掛け》
独りよがりな考え方で、いくら良いモノを生み出しても顧客ニーズにマッチしていなければ事業化することは難しく、「ガラケー状態」に陥ります。市場の変化を的確に捉え、市場の求めに対応できる事業を立ち上げることが成功のカギになるのです。
経営者の方の中には、数多くの事業化したいアイデアを次から次へと思いつき、事業化しようと試みる方も多いのですが、なかなか前に進むことができません。
新規事業を起こすためには、当然ながらお金が必要ですが、もう1つ重要なことは、経営者のやりたいことに共感して動いてくれる人の存在が不可欠なのです。
やりたいことを事業化するため、繰り返し会議をするが、なかなか具体化しない。傍から見ていると、いつの間にか会議をすることが目的のように見えてしまったりする。
また、新規事業のために法人を新設したものの、事業の具体的な中身を明確に出来ないため売上が何年も立たず、経費ばかりが先行して、気が付けば債務超過に転落している。そんな最悪な事例も間近で起きています。
新規事業計画が遅々として進まない原因は、戦略や戦術が明確に外部に示されていないからだと思います。誰が、何時までに、何を、何処で、どのような方法で、どうするのか、具体的な事業計画に落とし込み、新規事業の責任者、現場スタッフ、利害関係人にしっかり説明し、共感と納得をしてもらうことが重要なのです。
1つの新規事業に何時までも固執して事業化の検討に時間を費やすのではなく、期限を決めて事業の具体的なディテールを描くことが必要です。時代は、スピード感を持って変化しています、時間を掛け過ぎていると、どんないいアイデアもあっという間に陳腐化してしまいます。

 

《お金が儲かる仕組み》
いくらお金を稼ぐ仕組みが出来上がっても、稼いだお金が右から左へ流れていくようでは、儲かったとはいえません。企業が成長するためには、従業員満足度を高めたり、より優れた商品やサービスを開発して顧客に提供したり、常に市場の変化に対応していくことが不可欠です。従業員満足度を高める仕掛けや新商品・新サービスの開発には、当然お金がかかります。「経営とは、お金を使うこと、事業とは投資した資金を増やして手許に残すこと」だとある会計事務所のトップの方が仰っていました。雄蕊も同感です。

では、「儲かる仕組みとは、何か」ですが、それはバックヤードを強固にする仕組みを構築することだと雄蕊は思います。
雄蕊が中小企業金融の現場で、事業資金の貸し手として多くの経営者と面談したり、実際に中小企業の財務の現場に入って事業資金の借り手として財務管理をしたり、そうした経験から見つけた答えは、バックヤードの重要性です。
雄蕊が手掛けたある中小企業は、お金を稼ぐ力はありましたが、お金を儲ける力はありませんでした。そのため、赤字が続き、手許資金も底を尽きかけていました。雄蕊がとった改善策は、バックヤード部門を強化することでした。2年で黒字化、4年目には過去10年間で最高益を出すことが出来ました。
バックヤード部門については、これまでこのブログのなかで何度もお伝えしています。改めて解説することは止めますが、この仕組みが重要だと実感しています。

投稿者プロフィール

矢野 覚
矢野 覚
LINK財務経営研究所 代表 
1982年 4月 国民金融公庫入庫
1993年 4月 公益法人日本生産性本部経営コンサルタント養成講座派遣
2015年 3月 株式会社日本政策金融公庫退職
2015年10月 株式会社山口経営サポート(認定支援機関)入社
2019年12月 同社 退社
2020年 2月 LINK財務経営研究所 設立
2022年 5月 健康経営アドバイザー
2022年 7月 ドリームゲートアドバイザー
中小企業金融の現場で、33年間、政府系金融機関の担当者~支店長として事業資金融資の審査(与信判断)や企業再生支援、債権回収業務に従事するとともにそれに関する稟議書の起案・決裁に携わっていました。
その後、中小企業の財務責任者として資金調達、経営改善業務をお手伝いさせていただき、短期間で赤字体質の中小企業を黒字体質に改善するコトができました。
こうした経験を活かして、「財務の力でヒトとカイシャを元気にする」ために、小規模事業者・中小企業の皆さまのお役に立ちたいと考えています。

コメント

  1. 山下 平 より:

    はじめまして!笑笑
    何度も読み返しております。
    今回の記事は私の業務にも当てはまり大変参考になりました。
    あとはどう行動するかです。絵に描いた餅にならない様に肝に命じます!

    • 矢野 覚 矢野 覚 より:

      はじめまして(笑)投稿ありがとうございます。
      不定期ですが、出来る限りお役に立てるテーマを取り上げてお届けできればと考えています。
      テーマについてご要望等がありましたら、ぜひリクエストしてください。
      引き続きよろしくお願いします。

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