第58回 コロナ時代の組織運営マネジメント(ニュー・ノーマル・マネジメント・スタイル)

マネジメント

「こんにちは、かんれき財務経営研究所の雄蕊覚蔵です!」暫くぶりの投稿になりました。
第58回は、コロナ時代の組織運営マネジメント(ニュー・ノーマル・マネジメント・スタイル)と題して、ウィズコロナ、ポストコロナ時代のマネジメントについて考えてみようと思います。

 

《組織運営マネジメントの重要性》
中小企業の組織運営マネジメントの現場にいると、経営者然とした経営者や管理者然とした管理者が少ないことに頭を痛めます。以前、このブログにも投稿したのですが、「経営する、マネジメントする、管理する」とは、「何を、どのような方法で、どうすること」なのでしょうか。
ヒトを同じ目標に向けて動かすことは、非常に難しいことだと感じています。しかしながら、経営の基本は「ヒトを動かすこと」=「組織運営マネジメント」だと思いますので、改めてウィズコロナ、ポストコロナ時代の組織運営マネジメントについて考えてみたいと思います。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で社会は大きく変化しました。最も大きく変化したのは、「非対面・非接触でのコミュニケーション」が主流になったということです。

感染防止のため、常にソーシャルディスタンスを保ち、3つの密(換気の悪い密閉空間、多数が集まる密集場所、間近で会話や発声をする密接場面)を避けるよう呼びかけられています。
各企業では在宅勤務(リモートワーク)が急速に進み、社内打ち合わせや取引先との商談も、リモート会議が増えました。今後もこの流れは継続すると考えられ、対面型コミュニケーションを基本としてきたこれまでの「常識」や「定石」は通用しない時代になったと言えます。

また、職場で行われていた懇親会も「オンライン飲み会」が増える等、これまでになかったコミュニケーションの方法が広がりつつあります。
こうしたニューノーマル時代に適応できる組織運営マネジメントの勘所は何なのでしょうか。基本に帰って考えてみます。

まず、「集団」と「組織」の違いを確認します。
集団は、ただの人の集まりですが、組織は「共通の目的・協働意思・コミュニケーション」の3要素のうえに成り立った、役割をもった人の集まりだと言えます。そのため、組織に属する人には、必ず役割が紐づいています。
ただの人の集まりのままで「組織化」ができていないと、スタッフに共通の目的・協働意思・コミュニケーションといった組織の目標等が理解されていないため、モチベーションや生産性の低下に繋がってしまいます。

経営者が、組織の共通目的という大きな旗を掲げられるかどうかが大切な要素であり、普段から企業理念やビジョンの浸透度合いを高めることが重要なのです。
企業理念やビジョンが浸透し、一体感のある組織は、有事の際にも非常にスピーディーに「運動神経良く」対応ができています。

 

《ニューノーマル時代のマネジメント層の対応・施策》
ニューノーマル時代のマネジメント層が実際に行うべき対応・施策を具体的に確認してみます。

① 業務の進捗状況の見える化
「ニューノーマルの時代だから」ではなく、組織を円滑に運営するうえでは当たり前のことなのですが、上司が部下の業務の進捗をうまく把握できなければ、適切なタイミングで指示やアドバイスをすることができなくなり、その結果として、業務がうまく進まなくなり、生産性の低下に繋がってしまいます。また、部下が課題を抱えていることやオーバーワーク状態になっていることに気が付けないケースも発生します。
トラブルを防いで適切に業務管理を行うためには、従業員それぞれの業務の進捗状況を把握できる仕組みを作る必要があります。
リモートワークにおいても同様です。各自の業務の進捗をオンライン上で分かりやすく見える化して、従業員同士で共有でき、管理できる仕組みを作る必要があります。

例えば、タスク管理ツールを活用して見える化するのもひとつの方法です。コミュニケーションツールを活用して、決まったタイミングでチャットによる業務報告を行うこともできます。

② コミュニケーションを増やす
仕事の話だけではなく、雑談によりお互いに相手に興味や関心を持つこと、相手を知ることで信頼関係が構築できると思っています。これまでは、移動時間や仕事の合間、飲み会での交流といった場面でそうしたコミュニケーションをとることが出来ていたのですが、そうした日常的なちょっとしたコミュニケーションが難しくなっています。オンラインツールがあれば、スムーズに情報共有を行うことはできますが、生物には「五感」が存在します。
「五感」とは、身体の目・耳・鼻・口・皮膚の5つの器官で感じる視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚のことです。この五感を働かせて様々な情報を得ているので、視覚と聴覚しか活かせないオンラインツールだけでは部下の人となりを知り、成長をフォローするのは至難の業です。マネジメント層には、意識的に部下とのコミュニケーションの機会を増やしていく努力が求められます。

最近、Web会議ツールを活用した定期的な1on1ミーティングの必要性が高まっています。1対1の面談は、部下の評価や進捗管理などを目的とするもので、上司から部下への一方的なコミュニケーションになりがちでした。上司が主役、上司目線のミーティングだといえます。一方通行のコミュニケーションなため、信頼関係を築くことも難しくなっていました。
一方で1on1ミーティングは、部下がどのようなキャリアを目指しているのか、どういう悩みを持っているのかを把握して部下との信頼関係を構築し、部下の自主的な行動を促すためのコミュニケーションを目的としています。部下が主役、部下目線のミーティングです。そのため一方的なコミュニケーションではなく、対話型の質の高いコミュニケーションができます。
双方向のコミュニケーションでは、部下の情報を引き出すことで上司の考えに変化をもたらし、新しい方針やビジョンをフィードバックすることができます。また部下の視点でも、自分の意見が採用される機会が増えることで、モチベーションが上がり、意欲的に行動する動機となります。頻度は、1週間に一度、1ヵ月に一度といった比較的短いサイクルで行われるのが一般的です。

③ 部下のモチベーションの維持、向上を図る
ニューノーマルな時代のマネジメントには、仕事の見える化や業務報告のルール化、1on1といった対応が最低限必要になります。
こうした時代の管理職は「部下を監視し、管理する」という従来の感覚から脱却して、「部下の能力を引き出し、育成する」という観点で業務にあたらなければなりません。

人材育成の基本は、部下の現在の状況やスキルを適確に把握し、能力に見合った業務を与えて適切にフォローしていくことです。そのためには、部下と地道に対話を重ね、十分な信頼関係を築く必要があります。信頼関係に基づくマネジメントが実現できれば、テレワーク下でも従業員はモチベーションを維持し、成長し続けることができると思われます。

④ 目標を設定し、共有する
従業員のモチベーションを維持するためには、目標設定も重要です。オフィスで働いていると、日々の会話や雑談を通して、上司や同じチームのメンバーと目標を共有できる場面があるものですが、テレワーク下では、自分が何のために、何を目指して働いているのか分からなくなりがちです。これまで以上に、組織全体やチームの目標・ビジョンを明確にして部下に伝えていかなければなりません。

⑤ ミドル(管理職)層を中心とした管理体制を構築する
今後、さらにリモートワークが拡がると、組織全体に「当事者意識」を浸透させることが不可欠になると考えられます。特に、ミドル(管理職)層の意識改革が重要です。
今の組織に以下のような懸念はないでしょうか。
・管理職が受け身姿勢で、部署、部下への働きかけが弱く、統率力が不足している。
・各部署の目標、計画に対する取り組みが不十分である。
・組織全体を自分事として捉える管理職が少ない。
・部署間の意思疎通が不十分で、十分な連携が図られていない。
・一般職のモチベーションが低下しており、メンタルを患ったり、有能な人材が離職したりしている。
・バックヤード部門の柔軟性や動きが鈍く、積極性に欠けている。
・トップと一枚岩になれる経営幹部が少数で、組織全体をガバナンスできていない。
・トップからの理念やビジョンに関する発信・働きかけが十分とはいえない。

これまでの組織運営マネジメントは、トップダウン型、ボトムアップ型が主流ではないでしょうか。この2つのマネジメントの「いいとこ取り」をしたのが「ミドルアップダウン型」マネジメントです。ミドル層を主人公にしたマネジメントスタイルです。
ミドルアップダウン型マネジメントの目的は、トップ(経営層)の考えと現場の実情を、双方へ的確に伝え、組織の新しい方針や動きを徹底的にマネジメントすることです。こうした「ツナグ」という役割が、中間管理職であるミドル層には、最も重要な業務になるのです。
具体的には、ミドル層に次のような「ツナグ」役割を果たすことが必要だといえます。
・管理職と経営幹部をツナグ:経営幹部と管理職が対話を重ね、 一丸となって方針や戦略を立てる
・管理職と現場をツナグ:管理職が現場に対して影響力を持ち、 方針や戦略を伝えるとともに 現場の気づきを拾い上げて上層部へ 提案・実行する
・管理職と管理職をツナグ:多職種の管理職同士が同じ目的を 共有して連携しあう

 

《管理職層の意識改革》
ミドルアップダウンマネジメント実践に向けて、経営者・経営幹部等の意識改革も重要です。
ある経営幹部の仕事ぶり。組織のためにという強い想いと部下等に仕事を任せるより自分がやったほうが楽だし早いという想いが勝り、自分の役割を逸脱して、本来やるべき仕事でない仕事に時間を使い、残業につぐ残業をしています。
一見すると、組織に対する貢献度が高くとてもよさそうに思えるのですが、こうしたリーダーの下では部下が育たず、挙句、人不足なのに、人が辞めていくことにつながり兼ねません。
マネジメントを知らない人がマネジメントに携わった時に、陥りがちな失敗事例です。
マネジメント初心者であるこの経営幹部には、まったく悪気がないのです。だから、いくら改善を促しても同じことを繰り返し、繰り返し、やり続け、知らず知らずに失敗に陥っているのです。
「相手のことを思うから相手の横に座り相手の仕事を手伝う」、このように人として美しい行為は、友人関係であれば、絶賛されるべきですが、リーダーがこれをやる場合は、よほど戦略的な思考が背後にあってやる場合以外は、必ず失敗に終わります。
「大変そうな相手のことを慮る」感情自体は、まったく責められるものではありませんが、リーダーが部下の仕事をただ手伝うというのは、「部下の成長の機会を奪う」ことです。
この結果、残念な部下が育ってしまいます。自分で考えることができない部下、自分で危険を想定しない部下・・・が出来上がります。
成果の出ない組織では、この管理職層の役割の概念が理解されていないので、管理職が本来の役割から逸脱しても、本人も気にしなければ、経営者や経営幹部層も気が付かない。その結果、リーダーが自分の役割そっちのけで、困っている部下を助けてあげるリーダーに誰も違和感がない状況が当たり前になるという負のスパイラルに陥ってしまっているのです。
本当に相手のことを慮るなら、相手が一人で生きていくだけの知識や技術をつけることを手伝うのが一番重要なことは誰にでもわかることだと思います。
ニューノーマル時代のマネジメントの最大のポイントは「一人ひとりが主人公」「当事者意識」を持つスタッフを育て、そういう組織風土を醸成することです。

 

《コロナ時代の組織運営マネジメントの実践に向けた経営者の自覚と覚悟》
ニューノーマルな時代を勝ち続ける経営は「働き方、仕事に対する意識、組織の見方や自分自身のコミュニケーション等、これまでの考え方を変え、自ら考えて動く力が必要がある」ことを経営者がしっかり自覚し、「今ここにある状況を観察し、自分たちはどのような状態に向かえば良いか考えて自ら目的目標を設定し、それに対して必要な対応を試行錯誤の中で繰り出していく」ことができる組織に仕立てていくことが重要なのです。

経営者は、これまでの成功体験、固定観念や先入観を捨て、改めて「4つの目」を凝らして時代に即したマネジメントスタイルに組織変容させることが必要なのです。
「4つの目」とは、組織の細部・深部に潜む本質的な重要課題をしっかり捉える「虫の目」、幅広い視野で、全体を俯瞰して観る「鳥の目」、時代の流れ・変化を的確に捉える「魚の目」、そして、それらを総合的に判断し、的確な意思決定を行う「人の目」のことです。

ぜひとも、経営者の方々には、こうした気付きを持って経営に取り組んでいただきたいと思います。

投稿者プロフィール

矢野 覚
矢野 覚
LINK財務経営研究所 代表 
1982年 4月 国民金融公庫入庫
1993年 4月 公益法人日本生産性本部経営コンサルタント養成講座派遣
2015年 3月 株式会社日本政策金融公庫退職
2015年10月 株式会社山口経営サポート(認定支援機関)入社
2019年12月 同社 退社
2020年 2月 LINK財務経営研究所 設立
2022年 5月 健康経営アドバイザー
2022年 7月 ドリームゲートアドバイザー
中小企業金融の現場で、33年間、政府系金融機関の担当者~支店長として事業資金融資の審査(与信判断)や企業再生支援、債権回収業務に従事するとともにそれに関する稟議書の起案・決裁に携わっていました。
その後、中小企業の財務責任者として資金調達、経営改善業務をお手伝いさせていただき、短期間で赤字体質の中小企業を黒字体質に改善するコトができました。
こうした経験を活かして、「財務の力でヒトとカイシャを元気にする」ために、小規模事業者・中小企業の皆さまのお役に立ちたいと考えています。

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