第31回 2021年からの中小企業経営

中小企業経営

「あけましておめでとうございます。かんれき財務経営研究所の雄蕊覚蔵(おしべかくぞう)です!今年も当ブログへお越しいただきありがとうございます。引き続きよろしくお願いします。」
2021年の第1弾となる第31回は、「2021年からの中小企業経営」と題してウイズコロナ、ポストコロナ時代の中小企業経営のニューノーマルについて考えてみたいと思います。

 

《自社で稼ぐ経営の実践》
「攻撃は最大の防御なり」という諺があります。古代中国の軍略家・孫子の兵法が出典ともいわれていますが、孫子の趣旨はちょっと違います。兵法書には「勝つべからざるは守なり、勝つべきは攻なり」とあります。現代語訳すると「勝てないときは守り、勝てそうなら攻める」つまり、「守りが基本で、好機が来れば攻めに転じる」ということです。
コロナ禍で先行き不透明な状況が続くなか、中小企業はどの様に対応していけばよいのでしょうか。企業経営の究極の目的は、将来にわたって企業を存続させることです。そうだとしたら、今の時代には、兵法の「守りが基本で、好機が来れば攻めに転じる」が基本になるのではないでしょうか。
負けないようにするのは自助努力でできますが、勝てるか否かは敵によって決まります。なので、負けない態勢を作ることはできても、勝てる態勢を作ることは難しいのです。昔の戦巧者は、先ず、敵から攻撃されても負けない態勢を整えたというのです。
では、負けない態勢とはどのようなことでしょうか。それは「基本」に立ち返ることだと思います。基本の「型」が身に付いていないと、対処療法に終始する等、迷走して良い結果に結びつきません。ちなみに武道でいう「型」とは、攻撃と防御の対応を定型化した行動様式のことをいいます。
「自社で稼ぐ経営」を実践するためには、「安定(負けない態勢の構築)」と「成長(環境適応態勢の構築)」という基本に沿った二つの打ち手が効果的だと考えます。まず、安定の打ち手(負けない態勢の構築)で足元を固め、その後に成長の手を打つこと(環境適応の態勢構築)が重要です。

 

《加速するパラダイムシフト》
新型コロナの感染拡大の影響で、常識的な考え方の枠組みが、劇的に大きく転換する「パラダイムシフト」が、加速度的に進んでいます。パラダイムシフトが起こると、これまでの常識や経験が全く通用しなくなるのです。今回のコロナ禍のパラダイムシフトは、明治維新や第2次世界大戦といったレベルでモノの見方や考え方といった価値観の大変革が起きていると認識する必要があります。
バブル経済の崩壊やリーマンショック時とは、比較にならない大変革だと思います。誤った認識で経営していると先を見誤ってしまう可能性があるのです。
大企業は規模の経済で動いていますから経営環境変化へ即応することが難しく、事業縮小、それに伴う人員削減といった対処療法が目立ちます。
中小企業は、大企業の縮小版ではないため、大企業とは異なる経営特性を持っています。よくいわれるのは「柔軟性」「機動性」です。これらの特性は、経営環境の変化が早くて大きいほど力を発揮することができます。これまで数々の経済危機を乗り越え、日本経済の屋台骨を背負ってきた中小企業には、こうした特性を持っていたので生き残ってきたといえます。
雄蕊も中小企業の経営に関わって、中小企業の持つ「柔軟性」「機動性」を体感しています。

急激な経営環境の変化(Change)は、中小企業にとってイノベーションに果敢に挑戦(Challenge)する最大の機会(Chance)であると捉えることができます。
「イノベーション」を狭義の技術革新ととらえると近視眼的になってしまいますが、難しい技術が必要なわけでなく、コロナ禍でこれまでにはなかったような新しい価値を求め出した顧客ニーズに適応する商品・サービスを提供すればよいのです。具体的には、コロナ禍前と比べて、顧客が新たに困っていることを明らかにし、自社の技術・ノウハウでその解決策を提案することです。企業の成長は、外的な経営環境の変化に適応してこそ図られるものです。経営環境が変われば市場も変わり、経営手法も変わってくるからです。

 

《デジタル化の進展》
コロナ禍で、仕事の仕方にも変化が起きています。テレワークや時差出勤の導入等、働き方の多様化が一気に進みました。こうしたことを背景にデジタル化の進展も加速していくものと思われます。雄蕊もWEB会議、リモートワークを経験しました。
デジタルトランスフォーメーションという言葉を聞いたことがありますか?
デジタルトランスフォーメーションとは、テクノロジーにより産業構造を変化させることであり、DXと略されています。
経済産業省が公開しているガイドラインによると「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されており、また、情報処理推進機構(IPA)では「AI や IoT などの先端的なデジタル技術の活用を通じて、デジタル化が進む高度な将来市場においても新たな付加価値を生み出せるよう従来のビジネスや組織を変革すること」と説明されています。
今後、こうしたデジタル化が加速度的に進展すると思われます。デジタル化への対応も課題の1つと考え、対策を検討・実施する必要があります。

 

《売上拡大とコスト管理のバランス》
孫子の兵法に「昔の善く守る者は、九地(きゅうち)の下に蔵(かく)れ、九天(きゅうてん)の上を動く。故に、能(よ)く自らを保ちて、勝ちを全(まっと)うするなり」という教えがあります。現代語訳すると「昔の防御が上手な将軍は、まるで地に深く潜っているように自分の力を隠してタイミングを図り、攻撃に転じるときには空の上からすべてを見ているように動いた。だから味方を安全にして、しかも完全な勝利を遂げることができたのだ」
孫子は攻撃と防御、両方を重視しています。基本は防御にありますが、鉄壁の守備を固めながらも攻撃のチャンスを狙うのです。
防御ばかりでは成長・拡大はできません。中小企業を取り巻く外部環境には、顧客、競争相手、取引先、株主、その他の人的環境、自然環境等、多くの変動要因があります。外部環境が絶えず変化しているならば、それに適応できるように手を打つ必要があります。「安定(負けない態勢の構築)」という「防御」の時であってもすぐに「成長(環境適応態勢の構築)」に移れる態勢でいなければ、急な変化に対応できません。対応できないと主導権は競合先に握られて、こちらはいつか市場から退場(事業閉鎖)することに繋がります。
事業拡大(成長)には、売上を伸ばすことが最重要であることに間違いはありませんが、負けない態勢の構築(コスト管理)が出来ておらず、拡大・成長だけにしか目が向かないと「骨折り損のくたびれ儲け」になってしまいます。オフェンス(事業拡大)とディフェンス(コスト管理)の両面に目を向けることで、高収益化、高付加価値化に繋がると考えています。

 

《事業計画の策定》
事業計画の根底にあるのは、その企業のミッション(使命)、ビジョン(将来構想)、理念(行動規範)です。ミッションとは、自社が何のために存在しているのかを明確化したもの、そのミッションを元に将来構想としてビジョンを描き、行動規範となる理念を根本に据えて、経営計画を立てる必要があります。
「外部環境」と「内部環境」の分析について説明します。
外部環境とは、新型コロナウイルスの感染拡大や収束の状況、顧客の変化、景気の状況、法律制度、政治に関わる問題、競合先企業等の動向という自社でコントロールできない事象のことです。
内部環境とは、自社の「強み・弱み」のことを指します。内部環境分析では、商品の品質、価格、サービス、そして人員や設備の状況について他社との違いを比較します。
外部環境、内部環境を十分に分析したうえで、ミッションやビジョン、理念に基づいて事業計画を立てることが大切です。経営者の中には数値目標を立てることが事業計画だと勘違いしている人がいますが、間違いです。事業計画の根幹には、お客さまに価値を提供する「マーケティング」と、新しい価値を生み出す「イノベーション」がなければなりません。
今の時代、難しいのはコロナ危機の影響が、今後どの程度、経営に影響するかということです。経営者は最悪シナリオ、最善シナリオ、両者の中間的なシナリオを考えて、最悪シナリオでも生き抜いていける事業計画を立てなければなりません。そして3つのシナリオをベースにして資金計画、人員計画等を作る必要があります。

 

《事業計画・経営戦略策定ツール》
事業計画や経営戦略を立案するためのツールとして様々な「戦略フレームワーク」があります。代表的なフレームワークを簡単に紹介してみます。
●アンゾフのマトリクス
1960年代に「経営戦略の父」とも呼ばれるアンゾフが提唱した4象限のマトリクスが、その後の経営戦略の理論展開や実践に大きく貢献し、未だに経営戦略の基本の型となっています。4つの象限は、「市場浸透」「市場開拓」「製品開発」「多角化」です。

●SWOT分析
強み=Strength、弱み=Weakness、機会=Opportunity、脅威=Threatの4つの情報から自社の経営戦略・事業戦略を分析します。
経営に直接関わる部門は、外的要因と内部要因の分析を行い、事業戦略・経営戦略に的確な提案をしていく必要があります。
とくに、外部環境要因は自社では解決できない問題が多いため、最後までボトルネックになることがあります。
したがって、外部環境要因に対しての分析はまず先に入念に行います。
その後に内部環境要因を分析し、外部環境による影響を重視しながら分析検討することが大切だと言われています。

●実行計画ツール PPM
現存の自社製品を4つの市場ポートフォリオに配置し、今後の戦略を分析する手法です。
軸となるのは、「マーケットシェアの大小」と「市場成長率の大小」です。
・花形:市場成長大かつマーケットシェア大 →「積極投資」
・金のなる木:市場成長小かつマーケットシェア大 →「市場シェア維持」
・問題児:市場成長大かつマーケットシェア小 →「攻めるか引くか」
・負け犬:市場成長小かつマーケットシェア小 →「撤退時期検討」
各ポートフォリオに基本戦略として書いてあるように、「積極投資」「市場シェア維持」「攻めるか撤退か」「撤退時期検討」が大局的な方針となります。
このツールにはめ込むことで、自社の事業のどこに資源を集約させていくのか等の判断を大局的に分析することができます。

コロナの感染は、とどまるところを知らない勢いで拡大しています。感染拡大防止と経済の再生という難しい舵取りが、当面は継続しそうです。新生活様式(ニューノーマル)は、もう後戻りすることはないと考えるべきだと思います。
中小企業経営者にとっては、ウイズコロナ、ポストコロナに備えたニューノーマルな経営に適時適正に対応できるか否かが企業の勝敗を分けるポイントだと言っても過言ではないと思います。
2021年が明るい1年となることを期待して、前を向いて進んでいきましょう。

投稿者プロフィール

矢野 覚
矢野 覚
LINK財務経営研究所 代表 
1982年 4月 国民金融公庫入庫
1993年 4月 公益法人日本生産性本部経営コンサルタント養成講座派遣
2015年 3月 株式会社日本政策金融公庫退職
2015年10月 株式会社山口経営サポート(認定支援機関)入社
2019年12月 同社 退社
2020年 2月 LINK財務経営研究所 設立
2022年 5月 健康経営アドバイザー
2022年 7月 ドリームゲートアドバイザー
中小企業金融の現場で、33年間、政府系金融機関の担当者~支店長として事業資金融資の審査(与信判断)や企業再生支援、債権回収業務に従事するとともにそれに関する稟議書の起案・決裁に携わっていました。
その後、中小企業の財務責任者として資金調達、経営改善業務をお手伝いさせていただき、短期間で赤字体質の中小企業を黒字体質に改善するコトができました。
こうした経験を活かして、「財務の力でヒトとカイシャを元気にする」ために、小規模事業者・中小企業の皆さまのお役に立ちたいと考えています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました