第56回 宮仕え(ロスジェネ世代)の分岐点

コラム

「こんにちは、かんれき財務経営研究所の雄蕊覚蔵です!」第56回は、宮仕え(ロスジェネ世代)の分岐点と題して、人生100年時代のセカンドキャリアの在り方について考えてみようと思います((注)金融機関の定義:小規模事業者・中小企業に事業資金の融資を行っている金融機関とします)。

 

《銀行消滅?!》
「銀行員が消える日」「銀行機能は必要だが、今の銀行はいらない」といった話が巷で拡がっています。雄蕊は金融機関出身なのでどうしても金融機関の動向が気になります。
金融関連のテクノロジーの進展には目を見張るものがあります。そういった状況を考えると、銀行業界の仕組みそのものは今後大きく変態していくことは想像に難くないといえます。金融関連のテクノロジーは、ファイナンス(金融)とテクノロジー(技術)を組み合わせて、「フィンテック」と呼ばれています。

こうした金融業界の将来性について、不安に感じている方も多いかもしれません。地方銀行では、銀行そのものの収益力が低下しているという事実もあります。合併も進んでいます。1990年代のバブル崩壊後、低金利の時代が続いており、本業での収益確保が難しくなっているのです。

銀行窓口や受付業務、データ入力等の業務は、テクノロジーの発達や人工知能(AI)の発展によりどんどん代替化すると考えられます。食料品や衣料品の小売店舗でセルフレジが増加しているのと同様に、銀行の窓口業務が機械化されてもおかしくはないといえます。

個人向けの融資や資産運用業務に関しては、すでにビッグデータや人工知能の活用が進んできています。キャッシュフローデータを活用し、どのように資産運用するべきかを人工知能(AI)を使ってのアドバイスも登場しています。
この流れが続けば、法人向けの融資審査も人工知能が行なう事例も増えていくことが容易に想像できます。しかし、法人向けの融資判断は、数字だけではありません。ここに中小企業金融担当者の生き残る道があると思っていますし、生き残らなくてはならないのです。
ある地方銀行の営業部門の役席の方とお会いした際に、「銀行は、ヒト(経営者)を見て融資する。経営者の顔も見ないで融資し、デフォルト(回収不能)になったのなら、それは銀行にも責任がある。」と仰っていました。まさにその通りだと思います。中小企業の経営者の想いも一人ひとり違うので、ビッグデータでは測りきれない要素があります。銀行機能そのものは大きく変態する可能性はありますが、少なくとも法人取引、中小企業金融の分野で専門性の高い知識・スキルを持った部署・担当者は今後も生き残ることができると信じています。

 

《雇用環境の変化》
「60歳の定年まで働いたらあとは年金で悠々自適に暮らせる」一昔前までは、ほとんどの人がそう信じていました(?)。しかし、今や時代は変わったのです。
2012年改正高年齢者雇用安定法における高年齢者雇用確保措置として、①定年を60歳未満とすることの禁止、②65歳までの雇用確保措置として次の3つのいずれかの措置を事業主に義務付け
(1)定年を65歳に引き上げ
(2)65歳までの継続雇用制度の導入
(3)定年制の廃止

更に、2020年改正では「70歳までの就業確保措置」が事業主の努力義務とされました。この本来の目的は、もうこれ以上、社会保障制度を手厚くできない。今の若い人には70歳まで働いて、前期高齢者までは自己責任で生活してほしいということです。
これからの時代、体が元気なうちは働き続けることが当たり前になっているのです。
ほとんどの勤務者は、減給等、待遇が著しく悪くなるにも拘わらず、定年延長や再雇用制度により65歳まで同じ組織で勤務を続けています。

雄蕊が聞いた金融機関に勤務する知り合い方の声です。
入行3年目の行員:経営陣の経営方針に不信感を抱く、現場では「おまえ死ね!」と言ったパワハラ発言が横行、昭和にタイムスリップしたような職場環境、尊敬していた優秀な先輩から次々退職していく。自分も転職を考えている。
地域金融機関の元支店長:60歳で再雇用になったが、年収が大幅に激減、これからの生活をどうしようかと思う。
地域金融機関の元支店長:来年55歳でポストオフになる。高額の給与をもらっており、組織としてはどこかに出向させたい意向。同期の約半数がいなくなった。明日は我が身か・・・

何かで読んだのですが、あるメガバンクでは、40代を迎えると年齢的にもう銀行内には上のポジションがないので、取引先の経理部長等に転職しなさいと、所謂「肩たたき」が始まるようです。その話を受ける行員も入行時からそういうものだと知らされているので、ショックはあっても抵抗する人は多くないようです。決して優越的地位の濫用にはあたらない形で、多くの企業が銀行員を喜んで経理部に迎えています。メガバンクでは、実質的に定年まで銀行にいられない行員が相当数いるということです。金融機関では、入行した銀行で65歳まで働き続けることになかなか難しい面もあるようです。

 

《キャリアチェンジ》
日本型雇用システムにおいては、終身雇用や年功序列等の特徴から、若いころは多大な労働力を提供しながら給料は低く抑えられ、年齢が上がるにつれて給料が上がり、50歳前後になると、給料が生産性を追い抜いてしまうという現象が起きることになります。最近、新聞紙面や雑誌等でよく目にするようになった40~50代のサラリーマンを揶揄する言葉「働かないおじさん」や「妖精さん」たちは若いころの会社への貸しをいま、取り返しているのであり、日本型の雇用システムの象徴といえる存在です。
こんな言葉がクローズアップされたり、国内の大企業が日本型雇用システムの刷新に手を付け始めたり、こういった現象は、社会の流れ自体が日本型雇用システムからの脱却にはっきりと向かい始めたということだと思います。

2021年9月9日に開催された経済同友会のオンラインセミナーで、サントリーホールディングスの新浪剛史社長が導入を提言した「45歳定年制」が大きな波紋を呼びました。

この提言に対して、経済界のお偉方や大企業経営者はいっさい発言していないそうです。この反応から、働きの悪い高コスト社員をなんとかしたいという悩みは、大企業共通の経営課題だと捉えることが出来ると思います。

一方、日本の今後の年齢別人口構成比の予測をみると、50代以上が50%以上を占める見通しとなっています。つまり、この50代以上のほとんどの人が、ミドルシニア時代からもう一度活躍しないと成り立たない社会構造へ移行しているのです。これは「転職や独立」等、セカンドキャリアに挑戦するときが必ず来るということを意味していると考えて良いのではないでしょうか。

「45歳定年制」が良いかどうかという議論はさておき、ロスジェネ世代のビジネスパーソンが本当に考えなければならないことは、自分の50歳から70歳までのキャリア人生がイメージできるかどうかだと思います。
かつてのように、会社が一生面倒見てくれるという時代は、幕を下ろしつつあります。そもそも自分の人生は自分で作っていくものです。充実したセカンドキャリアを設計できるのは、ファーストキャリアの経験をよく知る自分しかいません。出向や役職定年で嘆くのではなく「これからは自分のために働く、だから自分でキャリアを設計する」という自立意識を持つことが大切だと思います。

雄蕊は、50歳の時、およそ5年後の55歳で退職して、起業家や中小企業の財務支援、金融マンに中小企業金融のノウハウを伝授するような仕事ができればいいなと一大決心をしました。55歳で辞めようと決めたのは、幸せな60代を迎えるためには、還暦を迎えるまでの5年間は充電期間として更に使いこなせる武器を身につけようと思ったからです。このまま金融機関に留まっても幸せな60代がイメージ出来なかったのです。リスクある決断であったことは間違いありません。元上司から「よく思い切ったなあ」「60歳からでも遅くないのでは」と言った言葉も頂きました。

62歳の爺になった雄蕊は、現在も第一線で働くことが出来ていることに喜びを感じています。金融機関時代の同期が再雇用されて閑職に就いている話を聴くと50歳の決断は強ち間違っていなかったのではと今は肯定することが出来ます。正直、退職直後は、こんな無計画、無謀な夢が実現できるのだろうかと、少しの後悔と不安な気持ちが強かったのは事実です。しかし「人間万事塞翁が馬」人生、一寸先は闇」実現に向けてホンキのヤル気になって取り組めば夢は叶うもの・・・なのです。

 

《武器を身につける》
「かんれき財務経営研究所」が賑やかになりました。第53回「ホンキのヤル気」《かんれき財務経営研究所にスタッフ誕生》で女性スタッフが1名加わったとお伝えしましたが、更に2名仲間が増えました。30代、50代の女性行員の方が「キャリアアップに向けた武器」を身につけるために研修生として半年間、一緒に勉強することになりました。
キャサリン(?)、オリビア(?)、メアリー(?)一瞬にして事務室が華やかな舞台(?)に一変しました。

「かんれき財務経営研究所」が提供できるサービスは、一言で言うと「バックヤード財務」です。具体的には、中小企業の経営者の相談相手として、経営者が意思決定するための財務資料の作成と作成した資料の読解支援と経営が悪化した中小企業の財務を基軸にした経営改善業務です。
「第42回 中小企業に対する伴走型支援とは」《中小企業金融担当者による中小企業に対する伴走型支援》では、以下のようにお伝えしました。
事業とは「お金を集める⇒お金を遣う⇒利益を出す」このサイクルの繰り返しだと考えます。経営資源は大きく「ヒト・モノ・カネ」と言われていますが、ヒトを集めるにも、モノを所有するにも「お金」が必要です。やはり、経営を行ううえで、最も重要なことは「数字とお金」の管理が適正に出来るか否かではないでしょうか。
このブログで何度もお伝えしているのですが、中小企業の経営者は、数字とお金にあまり目を向けません。また、財務の専門家も現場には存在しません。金融機関系のコンサルティング会社が支援に入り、立派な経営改善計画を策定したとしても、現場にはその計画を実行する主人公がいないので、計画通り実行できないのが現状です。なので、しっかりサポートできる人財が必要なのです。この「数字とお金」の番人には、金融機関の中小企業金融担当者が相応しいと雄蕊は思っています。

かんれき財務経営研究所に記帳代行業務の依頼が来ています。研修生達は銀行員なので、仕訳を切ったり、会計ソフトに仕訳入力したりする知識やスキルはありません。元々そういうサービスは当研究所の業務メニューにはないのです。しかし、依頼主の方のお話を聞くうちに少々無謀ながら顧問の会計事務所、経理担当の専務の支援等、協力をしてもらいながら、手探りのなか進めてみようかという気持ちになりました。「会計処理を進める過程のなかで財務の視点から課題を発見し、経営者に助言する」そういうフレームワークの構築に取り組んでみようと思ったからです。こちらの持つ現時点での処理能力の低さ等を依頼主に伝えたところ、銀行在籍者が担当してくれる信用力、安心感といったプライオリティを評価してもらい、とりあえずスタートすることになりました。研修生の方々にとっては、不安もあるでしょうが、武器を身につける絶好のチャンスです。雄蕊の何事にも首を突っ込みたがる悪い癖が出たかもしれませんが、とりあえず、研修生達の武装化に向けてLet’s Try!!です。

投稿者プロフィール

矢野 覚
矢野 覚
LINK財務経営研究所 代表 
1982年 4月 国民金融公庫入庫
1993年 4月 公益法人日本生産性本部経営コンサルタント養成講座派遣
2015年 3月 株式会社日本政策金融公庫退職
2015年10月 株式会社山口経営サポート(認定支援機関)入社
2019年12月 同社 退社
2020年 2月 LINK財務経営研究所 設立
2022年 5月 健康経営アドバイザー
2022年 7月 ドリームゲートアドバイザー
中小企業金融の現場で、33年間、政府系金融機関の担当者~支店長として事業資金融資の審査(与信判断)や企業再生支援、債権回収業務に従事するとともにそれに関する稟議書の起案・決裁に携わっていました。
その後、中小企業の財務責任者として資金調達、経営改善業務をお手伝いさせていただき、短期間で赤字体質の中小企業を黒字体質に改善するコトができました。
こうした経験を活かして、「財務の力でヒトとカイシャを元気にする」ために、小規模事業者・中小企業の皆さまのお役に立ちたいと考えています。

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