第55回 誰のための組織なのか ~組織運営を考える~

コラム

「こんにちは、かんれき財務経営研究所の雄蕊覚蔵です!」第55回は、誰のための組織なのか~組織運営を考える~と題して、組織運営の在り方について雄蕊なりの考え方を交えながら紹介しようと思います。

 

《組織運営とは》
組織運営とは、目標達成に向けた組織活動が円滑に行えるように、企業の有する経営資源を管理者が適切に配分・組織化し、有機的に機能させることです。ここでいう主な経営資源は「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」を表しますが、特に「ヒト」が最も大切な経営資源です。組織を目指す方向へ導くためには「ヒト」の働きが必要不可欠だからです。
組織は、同じ目的や目標を目指す「ヒト」の集合体です。「ヒト」そのものが目標達成に直結する要素であり、同じ組織に所属している「ヒト」がそれぞれ勝手に動いてしまうと、組織は正しい方向に進めなくなります。円滑な組織運営を行うには「ヒト」は、最も力を入れるべき経営資源なのです。
一方で「ヒト」は、感情や体調、生活環境といったものに影響されやすく、マネジメントを行う上で組織の管理者の力量が問われます。

 

《組織運営の意味と必要性》
現代は非正規社員、業務委託、時短勤務等、働き方が多様化しています。そのため、今後一つの組織の中には、生活環境やキャリア、文化も異なるメンバーが混在していくことが考えられます。
そこで求められるのが組織運営です。管理者はメンバー1人ひとりの適性や能力、価値観に合わせて仕事を割り振り、マネジメントを行う必要があります。管理者の采配がうまく機能し、各メンバーが能力を最大限に発揮できるようにすることで、組織としての業務効率を高めることができます。
個々の適正を把握し、上手く仕事の役割に活かすこと(適材適所)によって、お互いの弱点を補完し合う強い組織運営をすることができます。強い組織をつくることは事業拡大につながり、競合他社から真似されにくい自社の強みにもなります。
組織をスムーズに運営するために、人材をどのような業務・部署に配属するかという人事的な観点は従来からあったもので、特に目新しいものではありません。しかし、グローバル化の進展や働き方の多様化等が進むにつれて、組織を支える1人ひとりが組織の抱える課題を自分事として捉え、課題解決のための取り組みを全体で共有し、自らの行動変容に繋げていくといった、より効率的な組織運営が求められるようになったのです。

経済産業省は、ダイバーシティ経営の推進に取り組んでいます。同省は、ダイバーシティ経営を「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげていく経営」と定義しています。「多様な人材」とは、性別、年齢、人種や国籍、障がいの有無、性的指向、宗教・信条、価値観などの多様性だけでなく、キャリアや経験、働き方などの多様性も含みます。
「能力」には、多様な人材それぞれの持つ潜在的な能力や特性なども含みます。
「イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」とは、組織内の個々の人材がその特性を活かし、生き生きと働くことのできる環境を整えることによって、自由な発想が生まれ、生産性を向上し、自社の競争力強化につながる、といった一連の流れを生み出しうる経営のことです。
女性をはじめとする多様な人材の活躍は、少子高齢化の中で人材を確保し、多様化する市場ニーズやリスクへの対応力を高める「ダイバーシティ経営」を推進する上で、日本経済の持続的成長にとって不可欠です(経済産業省HPから抜粋)。

 

《組織運営で大切な「組織の7S」》
組織マネジメントを実施するにあたって、世界的に有名なコンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニー社が提唱した「組織の7S」の概念は押さえておく必要があります。
7Sとは、組織を考える上で必要な7つの経営資源の相互関係を表したもので、組織の全体像を捉える際のフレームワークとして使われています。また、この7つの要素は経営陣の意思決定によって変更可能な「ハードの3S」と、容易に変更できない「ソフトの4S」に分類されます。

ハードの3S戦略(Strategy
戦略とは、企業が目指す将来像に到達するために何を行わなければならないかという道筋を示すものです。
戦略は、企業のビジョンの方向付けを行う「企業戦略」、商品やサービスの展開を考える「事業戦略」、事業を運営するための研究、開発、調達、生産、営業などの機能を設定する「機能戦略」の順に策定します。
戦略には、自社が競争優位に立っている理由は何か、その優位性を維持するためには何が必要か、また経営課題の解決の手段には何があるか、といった視点が求められます。

ハードの3S組織(Structure
組織は組織構造、集団が最大限のパフォーマンスを出せるように構成された形態のことを指し。人々が組織の中で働く上で最も基本的な決めごとです。
組織構造は、仕事の種類・目的ごとに組織を構成する「機能別組織」、独立した各事業部が意思決定権を持ち業務を行う「事業部制組織」、特定のプロジェクト専門のチームを作り、各々のチームで独立して事業を動かす「プロジェクト組織」に大別することができます。

ハードの3Sシステム(System
システムとは、組織の活動を円滑にするために、経営資源の1つである「ヒト」を最大限生かす仕組みや制度(ルール)のことです。具体的には、目標管理制度、人事評価システム、会計システム、情報・業務管理システム等が挙げられます。
会社に制度がないと、個人のパフォーマンス頼りになってしまう恐れがあるため、業務に関する手順やルールを明文化することで、すべての社員が一定のレベルで業務を行うことができるようになります。

ソフトの4Sスキル(Skill
スキルとは、文字通りスタッフ個人の能力、自社が持つ独自の営業力や技術力のことで、組織が持つ他社との競争優位性を意味しています。
この競争優位性を有していると、独自のビジネスを展開することができるため、競争が優位になるとともにマーケットをリードする存在になることができます。
他社と比較し、自社のどのスキルを向上させるべきかについて分析することも組織には求められます。

ソフトの4S人材(Staff
人材とは、人材の本質を理解することを指しています。
人材のスキルや知識は、会話などである程度推測できますが、本質は簡単に理解できるものではありません。業務内外でコミュニケーションを活発に行う仕掛けを設け、個々の本質の理解を深めることで、その人が力を発揮できる場を用意することに繋がります。
「どんな人材がいるか」「どんな人事を行っているか」「その人にあった働き方ができているか」等を分析し、最適な人材配置ができているかを確認する要素です。

ソフトの4Sスタイル(Style
スタイルとは、その企業特有のビジネスの進め方のこと、企業カラーのことです。
ルールとして明文化していない、暗黙の了解や不文律の積み重ねがそのまま企業のカラーとなります。
会社の雰囲気、職場環境、組織の意思決定の流れ、また社風のことを指し、トップダウンやボトムアップなどのフローもこのスタイルの要素に含まれます。

ソフトの4S共有価値(Shared Value
共有価値とは、組織全体で共有するべき価値観や理念のこと。企業のミッションやビジョンは経営陣が理解していることはもちろんのこと、現場のスタッフにまで浸透しているか、また理解に齟齬がないかなどを分析します。
ビジョンとは自社の存在意義であり、経営者が組織を立ち上げて事業を展開する際、組織を構成するメンバーが力を合わせて事業を進めるためには、明確なビジョンの共有が不可欠です。十分に落とし込まれていないと、掲げているミッションやビジョンと現場のメンバーの行動が異なってしまい、企業の印象も悪くなってしまう恐れがあります。

 

《適切な組織運営で課題解決》
適切な組織運営を行うことで、組織からの人材の流出を防ぐことができます。
それは、多様な人材をマネジメントすることで、メンバーにとって居心地の良い職場を作ることができるからです。現在、働き方が多様化しており、どの社員にとっても居心地の良い現場であることの重要性はさらに高まっています。
適切な組織運営を行うことによって、組織全体の生産性が向上します。
組織マネジメントとは組織を円滑に運営するためのマネジメント手法です。ヒト・やモノ・資産がスムーズに動くようになれば、業務を効率化でき、結果的に組織全体の生産性が上がります。

 

《適切な組織運営に必要な能力》
適切な組織運営を行うためには、管理する側に運営能力がなければ円滑に機能させることが出来ません。組織運営を行う上で管理者に求められる能力について述べてみます。

① 目標設定力
管理者には目標設定能力が求められます。現場の現状を把握し、どの程度が「頑張れば達成できる目標」となるのかを見極める必要があります。目標設定が低すぎても高すぎても、メンバーのモチベーションは下がってしまいます。特に目標が高すぎる場合は、モチベーションが下がるばかりでなく、メンバーがついていけなくなってしまいます。
「達成できるギリギリのライン」に目標をおくことで、ほどよい緊張感がうまれ、やる気や達成感を引き出すことができます。組織として達成すべき目標を理解・把握した上で、それを達成するための計画を立案し、最適な人員配置を行うことが大切です。

② プロジェクト管理力
管理者にはプロジェクトを管理する能力が求められます。具体的には、目標達成までのプロセスを逆算し、計画を練れる計画力、それぞれのプロセスに費やす時間・工数・労働力を把握した上でスケジュールを組む計画遂行力等です。
立てた目標を遂行するためには、人を動かす仕組みづくりが欠かせません。全員が目標に向けて頑張れるような仕組みを作り、個人の努力が相乗効果を生み出すような環境を作ることが大切です。メンバーの進捗状況を逐一把握し、即座に問題解決やスケジュール調整を行い、目標達成まで導く能力が必要です。

③ モチベーション管理力
メンバーのモチベーションが下がると生産性が下がり、目標を達成することが難しくなります。モチベーションを管理する能力も管理者には求められます。
メンバーのモチベーションを維持するために大切なのは、自ら率先して行動することです。指示・命令をするだけでなく、自分がやって見せることでメンバーの自発的な行動を促すことにつながります。
メンバーのモチベーションが低くなった時には、管理者の資質が問われます。モチベーションが低い時でも一定の成果を産むことができる仕組みづくりが管理者には求められます。管理者は、メンバーの適正・能力を把握した上で適材適所を考え、それぞれに応じた業務配分を行い、それぞれのメンバーに適したサポートや指導も同様に行うことが必要です。

④ コミュニケーション能力
組織運営を行う上で、人間関係は大きな役割を果たします。特に管理者には、上司と部下双方に対するコミュニケーション能力が欠かせません。
管理者は部下と信頼関係を築き、働きやすい職場環境を整える必要があります。一方で、経営陣との信頼関係構築も不可欠です。
経営陣は売上げや利益を優先し、現場に指示・命令を出しますが、その際に管理者は現場の状況を経営陣に伝え、場合によっては指示そのものを変更してもらう必要も出てきます。組織を円滑に動かすためには、現場と経営側双方の間を取り持つ高度なコミュニケーション能力が求められます。

 

《誰のための組織なのか~円滑な組織運営のポイント~》
組織運営を円滑に行うためには、先に挙げた能力を管理者が備えていることはもちろんのこと、メンバーの意見を定期的に取り入れていくことが大切です。
そのためには、普段からメンバー同士が何でも気軽に話ができる関係性を築いておくことが重要です。また、意見を聞くだけでなく、その意見を何らかの形でできる限り反映させていくことで、信頼関係が生まれ、モチベーション維持にも繋がります。
組織運営を行う上で、優秀な成果を挙げたメンバーにはインセンティブ等の報奨を与える評価制度の導入も必要です。
いくらがんばっても認められなければ、モチベーションが下がってしまいます。適正に評価を行うことで、評価された本人だけでなく、周囲のメンバーにもライバル心が芽生えます。結果的に、全体の意欲が高まり、組織の好循環が生まれます。

実際に組織運営を行ううえでは、さまざまな困難な課題が発生します。特にコミュニケーション不足やモチベーションの低下など、人的な課題が多く発生します。
人的な課題が発生する要因は、管理者が管理者然とした仕事が出来ていないことです。組織の構成員であるメンバー1人ひとりの個性(能力や価値観等)を管理者がしっかり把握し、メンバーの強みを活かし,弱みを強化する指導・育成が必要なのです。山本五十六の名言 「やってみせ言って聞かせてさせてみて褒めてやらねば人は動かじ 話し合い耳を傾け 承認し任せてやらねば人は育たず やっている姿を感謝で見守って信頼せねば人は実らず」まさに管理者にはこういう姿勢が必要だと思います。また、不足部分をお互いに補完できる組織づくりを心掛けることが大切なのです。

管理者は、経営陣の指示・命令に黙って従う「イエスマン」や上ばかり見ている「鮃(ひらめ)幹部では駄目なのです。そういった管理者の姿勢は、すぐにメンバーに見抜かれ、管理者としての威厳を保てなくなります。管理者は、メンバーとビジネスライクな付き合い方だけではなく、メンバーが意気に感じて動いてくれるような人間関係を築くことが必要なのです。そうすることで表面上だけではなく、潜在化している課題までしっかり現場を掌握することが出来ます。そして、現場の実態・実情を経営陣に的確に伝え、現場に沿った指示に変更してもらうくらいの勢いと行動が、管理者には必要なのです。

また、勘違いしてはいけません。組織は経営者だけのものではありません。取引先・商品やサービスの受益者、そして組織を構成するメンバー全員のものなのです。このことを管理者はしっかり認識しておく必要があります。

こうした管理者の心構えと行動により、組織の各メンバーが、組織の掲げる目標を自分事として捉えて自主的に動くことができれば、組織はオートマチックに動き始め、より大きなパフォーマンスを生み出すことができるようになります。

投稿者プロフィール

矢野 覚
矢野 覚
LINK財務経営研究所 代表 
1982年 4月 国民金融公庫入庫
1993年 4月 公益法人日本生産性本部経営コンサルタント養成講座派遣
2015年 3月 株式会社日本政策金融公庫退職
2015年10月 株式会社山口経営サポート(認定支援機関)入社
2019年12月 同社 退社
2020年 2月 LINK財務経営研究所 設立
2022年 5月 健康経営アドバイザー
2022年 7月 ドリームゲートアドバイザー
中小企業金融の現場で、33年間、政府系金融機関の担当者~支店長として事業資金融資の審査(与信判断)や企業再生支援、債権回収業務に従事するとともにそれに関する稟議書の起案・決裁に携わっていました。
その後、中小企業の財務責任者として資金調達、経営改善業務をお手伝いさせていただき、短期間で赤字体質の中小企業を黒字体質に改善するコトができました。
こうした経験を活かして、「財務の力でヒトとカイシャを元気にする」ために、小規模事業者・中小企業の皆さまのお役に立ちたいと考えています。

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