第62回 ヒューマンエラーの防ぎ方

マネジメント

「こんにちは、かんれき財務経営研究所の雄蕊覚蔵です!」第62回は「ヒューマンエラーの防ぎ方」と題して、ヒューマンエラーの種類、発生する要因、その対策について考えてみます。

《今回のポイント》
人はミスを犯す生き物であることを理解する
ヒューマンエラーの種類を知る
ヒューマンエラーの要因を掴む
ヒューマンエラー削減対策をするための手順を理解する
ヒューマンエラーの削減方法を知り、実行する

 

《人はミスを犯す生き物》
ヒューマンエラーとは、人が原因となっておこる失敗(問題)のことです。人は完璧ではないので、誰でも必ずミスをしてしまいます。このことをしっかり理解しておく必要があります。さもないと、ヒューマンエラーが原因で、企業の信用失墜に繋がったり、大きな損失を被ったりして、企業存続の危機に瀕することになってしまいます。

 

《ヒューマンエラーの種類》
ヒューマンエラーは、大きく2つに分類することができます。
1つは「意図しない(気がつかない、うっかり)エラー」、もう1つは「意図的(あえて、わざと)なエラー」です。
それぞれのエラーについて詳しく見てみます。

まず、意図しない(気がつかない、うっかり)エラー。このエラーは、問題を起こした本人は、そうなるとは思いもしなかったのに起こってしまったエラーです。多くのエラーは、このタイプに分類されると思います。
意図しないエラーには「記憶エラー」「認知エラー」「判断エラー」「行動エラー」等があります。それぞれについて以下にまとめてみます。

種類 行動 具体的な内容
記憶エラー うっかり忘れてしまう それをやらなければいけないとはわかっていたのに、うっかり忘れてしまうパターン
(例)「今日中に資料を発送してください。」という指示を受けていたのに、うっかり忘れてしまった。
認知エラー 勘違いしてしまう なんらかの指示や情報に対して、勘違いや間違った思い込みをしてしまうパターン
(例)本当は新しく作ったBの案内状を送らなければならなかったが、前回と同じAの案内状を送るものだと思い込んでしまった。
見落としてしまう 予定表に記載されている内容や、メールを見落としてしまい、やるべきことができていないパターン
(例)顧客からメールで変更の依頼が届いていたが、見落として変更処理ができていなかった。
判断エラー 判断を誤ってしまう 本来はAと判断すべきところを、Bと判断して行動してしまうパターン
知識不足、慣れによる油断、思いこみ、自己流の方法をとったことなどが要因となる。
(例)お客様はすでに知っていると思い、伝えるべき情報を伝えなかった。
行動エラー 方法や手順を間違ってしまう 決められた方法や手順を間違えたり、抜かしてしまったりするパターン
(例)①〜③の作業が終わったら、一度点検が必要だったが、すぐに④の作業を行ってしまった。

現場では、これらのエラーが独立して起こるのではなく、いくつかのエラーが重なり合ったり、関係しあったりして起こることがほとんどです。

もう1つの意図的(あえて、わざと)なエラーは「うっかりして」「気づかずに」ではなく「これをしなかったらまずいかもしれない。」とわかっていたのにあえてやらなかったり、面倒に感じてわざと工程を省いたりしたことによって起こるものです。
(例)お客様から口頭で聞いた要望は、必ずメールで再確認をするルールになっていたが、
面倒だったのでそれを省いた結果、間違った対応をしてしまった。

 

《ヒューマンエラーの要因》
ヒューマンエラーはどういった要因によって起こるのでしょうか。

種類 要因
意図しないヒューマンエラー 認知エラー ●覚えにくい情報  
(例:意味のない情報の羅列、多すぎる情報量等)
●反復、復習しないことによる記憶内容の薄れ、変化
●思い出す手掛かりの不足
判断エラー ●情報の質の悪さ
・情報の漏れ、不足、誤った情報、あいまいな情報
・識別の弱い情報
●伝え方の悪さ
・発信力の弱さ、受信力の弱さ  
(例:文字が小さい→発信力の弱さ、近眼→受信力の弱さ)
・伝達途中(発信~受信の間)に邪魔や障害がある  
(例:周囲が暗くて、手元の文字が見えにくい)
行動エラー ●状況理解の困難さ
・現状把握がしにくい、先々の予測がしにくい
・あるべき姿や目的、目標、予定、計画、進むべき方向が不明確
●意思決定の困難さ
・評価基準、対応・行動基準等の判断基準がない、不備
・思い込み、過信、また周囲の影響により正しい意思決定を阻害 されるような要素  
(例:周囲が全員反対の意見の場合、自分の意見は違っていて も反対意見に同調してしまう)
記憶エラー ●操作性の悪さ
・操作器具の操作方法、配置、間隔等が人間の自然な操作の感 覚に合わない
・持ちにくい、つかみにくい、操作しにくい等の扱いにくさ
全エラー共通 ●注意がうまく働いていない
・過度な集中や長時間の集中が要求される、注意を振り向けるべき対象が多い
・注意を阻害する障壁がある
●作業及び作業環境に潜む疲労やストレスの素
意図的(あえて、わざと)なエラー ●決まり事の内容と必要性の理解不足
●決まり事の納得不足(理屈は分かっているが腑に落ちない)
●決まり事を守る意識が職場全体で不足している

 

以上のようにそれぞれのエラーや環境、状況によって要因は異なりますが、エラーの要因を探る時のヒントとなる視点を次に考えてみます。

両エラー共通
注意力の欠如 注意力が欠如していると、「うっかり」が発生しやすくなる。
本人は注意深く行っていたとしても、それを阻害するような環境になっていることがエラーの要因となることもある。
「まぁいいか」といい加減な判断をすることにも繋がる。
疲れ 疲れがたまっていると、正しい判断ができなくなる。
また、疲れから「この工程は省いてしまおう」といった気の緩みや、いい加減な判断をしてしまうことがある。
企業風土の問題 とにかくスピードや生産性を重視し、質への意識が低下少しくらいのミスは仕方がないという考え、ルールを破ることが常態化等だとエラーは発生しやすくなる。
意図しない(気がつかない、うっかり)エラー
知識やスキル不足 知識やスキルの不足が原因となり、正しく理解できなかったり、判断を誤ったりしてしまい、エラーが発生する。
連携・連絡不足 伝えるべき内容が伝えられていなかったり、内容が不足していたりすることにより、必要な情報が認知されないというエラーが発生する。
連携が取れるような関係性ができているか、連絡に関するルールがあるか、またルールが浸透しているかどうかもエラー発生に関係する。
業務内容が煩雑 業務内容が煩雑であると、正しく覚えることができなかったり、間違えてしまったり、忘れてしまったりする可能性が高くなる。
それほど込み入った内容ではなかったとしても、人が記憶しやすいよう、操作しやすいように整理されていない場合もエラーにつながる。
ミスを誘発する仕組み 例えば、よく似た書類が隣同士に置かれていたり、押すべきボタンよりも押してはいけないボタンの方が目立っていたりすると
ミスが起こりやすくなる。
判断基準・行動基準が曖昧・難しい 何らかの判断が人に委ねられる場合、何を基準にするのかが曖昧であれば、判断エラーが発生する要因になる。
基準があっても、それ判断するのが難しい場合も、エラー発生の要因となる。
意図的(あえて、わざと)なエラー
ルール等の必要性の理解不足 なぜそれをやらなければならないか、またやってはいけないか、ということについて、正しく理解できていないと、簡単にルールや手順を破ってしまうことに繋がる。
ルール等の必要性の納得不足 なぜそれをやらなければならないか、またやってはいけないかということについて、理解はできるが自分の考えとは異なっていて納得ができない場合、その反発心などから勝手な行動をとってしまい結果エラーが発生してしまうことがある。
過信 細かいチェックを行わなくても大丈夫だろう、何回もやっているからミスなど起こらないだろう、といった過信により、エラーが発生することがある。

 

《ヒューマンエラー削減対策をするための5つの手順
手順①現在起こっているヒューマンエラーの洗い出し
現在起こっているヒューマンエラーを書き出します。この時、管理側だけではなく、現場の従業員の意見もしっかりと聞き出すことが大切です。なぜなら、エラーの多くは、現場で起こっており、さらに管理者が全てを把握しているとは限らないからです。

手順②すでに対策が取られているヒューマンエラーの除外
明らかに対策が間違っている、足りないといった場合を除き、対策を正しく実行することで削減が可能である場合、いったんリストから外します。

手順③対策を取るべきヒューマンエラーの要因の検討
書き出したヒューマンエラーの要因を考えます。

手順④ヒューマンエラーの削減策の検討
実際に何を行うのか、その削減案を検討します。実現可能かどうかは考えず、できる限りバリエーションをたくさん出すように努めることが大切です。

手順⑤実行する対策の絞り込み
全ての削減案を実行するのは現実的ではありません。実効性の高い対策に絞り込んで確実に実行することが大切です。また、予算や手間、時間に合わせて絞り込むことも併せて間がなければなりません。

 

《ヒューマンエラーの削減方法》
ヒューマンエラー削減の対策は、人を変えるのではなくプロセスや環境を変えるところにあります。そして、エラーが発生するのを防ぐとともに、エラーが発生したことにできるだけ早く気づけるようにしなければなりません。

①人の関与する場面を極力減らす
ヒューマンエラーは当然のことながら、人が関与することによって起こります。そのため、できる限り人の関与を減らすことにより、削減することが可能です。
人が関与しなくても良いルールに変更する、システムや機械を導入するなどの対策を検討する等です。

②フロー・手順を簡略化する
フロー・手順が多く、複雑であると、それだけミスが発生しやすくなるので、不要なものは削ぎ落とし、できるだけ簡略化しなければなりません。

③マニュアルを作成する
業務フローや手順がわかるマニュアルを作成し、その通りに実行することでエラーの発生を削減することができます。
マニュアル作成上の留意点としては、以下に述べるようなことだと考えます。
・見間違いやすい記号や文字があれば書き換える。
・誰が見てもわかるような内容に作り替える。
・ミスが起こりやすいところに、あらかじめ注意書きをする。
加えて、マニュアルを正しく実行するための研修や教育をセットで行うと効果的だと思います

④To Doリスト(チェックリスト)を作成する
マニュアルがあっても、人はうっかり忘れてしまうことがあります。
To Doリスト(チェックリスト)を作成し活用することで、作業の漏れが削減できると思います。

⑤ダブルチェックプロセスを追加する
一人の人が作業と確認を行うと、思い込み等によるエラーを削減できない可能性があります。そこで、ダブルチェック(他者の再確認)を行うようにします。

⑥指さし呼称確認を徹底する
指さし呼称とは、操作・確認対象を指さし、名前を「呼称して」確認する一連の作業をいいます。この動作により行動は正確になり、何もしない場合に比べて指差し呼称すると誤りの確率が6分の1になるとされています。

⑦起こったヒューマンエラーを共有する
これまでに起こったヒューマンエラーが全てではありません。また新たなエラーが生まれる可能性は大いにあります。起こる可能性があるエラーを知っておくことは、エラーの削減に繋がります。
何か新しいエラーが起こったときにはそれを全体で共有することが不可欠です。

⑧わからないことを「わからない」と言える環境を作る
自分で考えて行動することも大切ですが、何かを聞かれたときに、「なぜそんなこともわからないんだ。」「自分で考えろ。」というコミュニケーションを常にとっていると、重要な場面で聞くことができず、大きなヒューマンエラーを起こしてしまう可能性があります。

⑨ヒューマンエラーの発生を前提とした仕組みを作る
ヒューマンエラーはどれだけ対策をしても無くすことはできませんので、エラーが起こることを前提とした仕組みを作っておくことが重要です。
ヒューマンエラーをカバーすることを想定した人員配置、スケジュール配分、予算設定などを検討することも必要です。削減方法ではありませんが、重要なポイントです。

⑩企業風土を整える
意図的なエラーは、特に企業全体の気の緩みが影響していることが多いものです。
ヒューマンエラーがどのようにして発生するのか、そして発生した場合にどういった影響が出るのかを共有し、会社全体でヒューマンエラーの発生を削減するという意識を持つことが重要なのです。

⑪組織で安全文化を醸成する
ヒューマンエラーの削減は、組織として取り組むことが大切です。組織の文化として「当たり前」に取り組める意識を全スタッフが共有できるよう根付かせることが必要だと思います。企業文化として以下のような文化を根付かせたいものです。
・「報告する文化」:潜在的な危険に直接触れる現場が、自らすすんで報告する
・「正義の文化」:安全に関する正しい知識や情報をもとに 許容できる行動と出来ない行動の境界を明確に理解し行動できる
・「柔軟な文化」:状況に応じて、指揮命令系統の明確な階層型組織と迅速に対応できるフラット型組織に組織が柔軟に再構成できる
・「学習する文化」:正しい情報から結論を導きだす意思と能力、大きな改革を実施する意思を持つ

 

《風通しのよい組織にして細かなことまで情報共有できる仕組みを作る》
ある企業の従業員意識調査の結果では、風通しのよい組織だと思っている割合が約30%、管理者が管理者然とし他役割を発揮していると思っている割合が約40%でした。
この企業では、最近、関係機関やお客さまの信用失墜、企業の多大な機会損失に繋がるようなヒューマンエラーが散見されています。経営者・経営幹部は、この結果を真摯に受け止め、課題の本質を掴み、一丸となってホンキで、迅速に改善に取り組まなければならないと強く感じています。

投稿者プロフィール

矢野 覚
矢野 覚
LINK財務経営研究所 代表 
1982年 4月 国民金融公庫入庫
1993年 4月 公益法人日本生産性本部経営コンサルタント養成講座派遣
2015年 3月 株式会社日本政策金融公庫退職
2015年10月 株式会社山口経営サポート(認定支援機関)入社
2019年12月 同社 退社
2020年 2月 LINK財務経営研究所 設立
2022年 5月 健康経営アドバイザー
2022年 7月 ドリームゲートアドバイザー
中小企業金融の現場で、33年間、政府系金融機関の担当者~支店長として事業資金融資の審査(与信判断)や企業再生支援、債権回収業務に従事するとともにそれに関する稟議書の起案・決裁に携わっていました。
その後、中小企業の財務責任者として資金調達、経営改善業務をお手伝いさせていただき、短期間で赤字体質の中小企業を黒字体質に改善するコトができました。
こうした経験を活かして、「財務の力でヒトとカイシャを元気にする」ために、小規模事業者・中小企業の皆さまのお役に立ちたいと考えています。

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