第29回 仕事の品質

マネジメント

「こんにちは、かんれき財務経営研究所の雄蕊覚蔵です!」第29回は、「仕事の品質」について考えてみたいと思います。

《仕事の品質》
仕事の品質とは、その仕事の中身や完成度のことです。また、ここでいう中身が意味するのは、業務内容ではなく、意義や貢献度のことです。
仕事の品質の捉え方は、業種業態、役職、職種等により、種々様々です。例えば、「品質の高い成果物を作ること」だとその意味を捉えている人もいれば、「お客様の喜ぶ顔を見ること」だとその意味を捉えている人もいます。
雄蕊は、仕事の品質を「その仕事の対象となる相手の満足度を高めること」だと思っています。具体的には、
①上司からの会議資料の作成依頼に対して、指定した納期限までに上司が必要としている情報を網羅し、分かり易くまとめられた資料の作成
②お客様の困りごとに対してタイムリーにお客様の満足を得られる対処をすること
③製造業であれば、品質の高い製品を作ること
④営業担当者であれば、与えられたノルマを達成すること
⑤技術者であれば、高い技術力を発揮すること
⑥管理職であれば部下のモチベーションを高め、コストパフォーマンスを最大限発揮できる環境にして、業績を上げること
等々が考えられます。

それでは、経営者にとっての「仕事の品質」を考えた場合、それは自社を持続可能な企業として、日々成長・発展させ、従業員や取引金融機関を含めたステークホルダーの信頼を得ることではないでしょうか。
元金融マンの雄蕊が経営者の「仕事の品質」を測る物差しは、どうしても損益が黒字か赤字かという数字とお金に目が行ってしまいがちです。
また、管理職にとっての「仕事の品質」とは、仕事(業績)の管理、人の管理、モノの管理等、マネジメントの優劣でしょうか。
仕事(業績)の管理については会計資料で、モノの管理については商品、設備機器や資材等、目に見える形でその品質(仕事の成果)を確認することができますが、人の管理については、例えばモチベーションの維持・向上と言ってもその成果が形として表れにくいため、品質を評価するには難しい側面があります。

《仕事の品質を高めるには》
仕事の品質を高めるうえで、最も重要なことは「仕事をする当事者のやる気」だと雄蕊は考えます。「鬼滅の刃」よろしく「全集中」で仕事に取り組める環境や精神状態にあるか否かだと思うのです。心配事があったり、許容量を超えた仕事を抱えていたりすると、どうしても意識が散漫になってしまう可能性が高まります。
特に経営者や管理者の立ち位置だと、仕事の対象が従業員や部下になる場面も多いと思います。従業員や部下からのオーダー(依頼)は、経営者や上司の支援を期待していることが多いので、それに応えられないと「口では良いことを言うけど、現場に顔を見せない」「訴えても上(上司)は動いてくれない」「いくら言っても変わらないからもう言わない」「あの上司は、許容量以上の仕事を抱えているからこれ以上訴えても対応できないだろう」といった従業員や部下であるスタッフの不平不満に繋がってしまう懸念も生じます。

精神的に安定した状態を保つには、「メリハリ」を付けることが重要だと思います。雄蕊は気持ちの切り替え(コントロール)が得意ではありません。四六時中モヤモヤしていたり、家に帰ってからもあれこれ考えたり、この状況は今も変わっていません。雄蕊にとってのモチベーションは仕事仲間の姿特に笑顔を見ることです。今もスタッフ等、人に会うことで「やる気」と「集中」をなんとか取り戻しています。

納期限までに中身のある成果物(モノにしてもコトにしても)を出すためには、適正な仕事量にする必要があります。いくら「やる気」があっても一人ができることには『限界』がありますので、納期限内に依頼者等の満足度を高める質の高い仕事をするためには、適正な仕事量が重要であると雄蕊は考えます。

経験を積むことも仕事の品質を高めるために重要なことです。「量が質をつくる」ということです。
かつて「バカの壁」という東京大学名誉教授・養老孟司の著書が400万部を超えるベストセラーになりました。金融機関に勤務していた時代に周囲を見回していると、どうも自分に与えられた仕事しかせず、それ以上のことには首を突っ込まない社員が増えているような気がしていました。つまり、自分勝手に「限界の壁」を作り、その中でしか仕事をしない。そんな社員が増えていると強く感じていました。
雄蕊は、業務量が膨大な大規模支店で職員、課長、次長職として勤務させてもらいました。業務量は半端ではありませんでしたが、量をこなすうちに仕事の進め方、段取りの仕方が身に付き、業務量が増えても大変だという思いを持つことはありませんでした。

また、「困った時は基本に帰れ(Back To The Basics)」つまり、基本を身につけることも品質向上には欠かせません。

雄蕊が金融機関勤務時代に、職場の先輩から「1つ上のランクの仕事をしろ」ともよく言われました。それぞれ1つ上のランクの職責を担っている先輩の仕事振りを見習って、仕事をしろということです。特に金融機関の実際の現場では、それぞれの職責に応じて権限と責任が与えられており、課長が次長や支店長を飛び越えて次長や支店長の決裁事項を決裁することはできませんが、1つ上の立場に立って次長や支店長の目で事象を捉えたり、考えたり、行動したりすることはできます。昇進・昇格を繰り返すと、それぞれの職責を果たすために求められる役割や成果が高度なものになってきますが、そういった知識やスキルは、そのポストに就いたからといって一朝一夕に身に付くものではありません。それまで積み重ねてきた経験があってこそ身につくものなのだと思います。逃げる姿勢では成長しないのです。

「楽をしたい」それは誰でも思うことです。自分の守備範囲でない分野まで首を突っ込むということは、抱えなくてもよい問題まで抱えてしまう可能性がありますし、まず仕事の量が増えます。しかし、逃げていたのでは、いつまで経っても成長はありません。いかにしてキャリアアップを図るか。「量をこなして質を高める。」汗を流すこと、努力を重ねること、繰り返し練習に励むことは決して嘘をつかない。必ず成果として現れます。
自分なりに目標を持ち、守備範囲以外の仕事が来た時には千載一遇のチャンスと捉え、果敢に挑戦し、その経験を自分の財産として蓄積し続けて欲しいものだと思います。

《適正な仕事量》
適正な仕事がどのくらいかというと、これはその仕事を担当する人の器の大きさによって異なります。能力の高い人は「一升瓶」くらいの度量があるかもしれませんし、能力の劣る人は「牛乳瓶」くらいの許容量しかないかもしれません。
雄蕊が課長時代、部下に仕事を割り振る際には、「一人ひとりの部下を先発完投型か、救援型か、中継ぎ型か、敗戦処理型か、出来る限り各自の能力を見極めようとする意識だけは持っていました。適材適所の人員配置だと以外に結果(成果)に結び付くものなのです。
「組織崩壊の予兆」で述べた通り、やる気満々で底なしに仕事を請けるスーパースターが登場すると、その周囲のスタッフは、「本来、自分がやらなければならないことかもしれないけれど、代わりにやってくれるなら任せてしまおう」とか「あの人に仕事を奪われてしまい、私の活躍の場(評価される場)が無くなってしまった」と快く思わないとは限りません。また、スーパースター自身の仕事の品質が「広く浅く」になってしまい、品質の劣化(期待値以上の成果が出ていない)が進む可能性が高まってしまう危険性も孕んでいます。
企業が肥大化すればするほど、組織図等により役割分担を明確にして、一定の人に仕事が集中しないように適正な人員配置と役割分担を定める必要があるのです。

《時間管理》
「仕事の品質」を考えた場合、完成度と納期限の二つが重要になります。いくら中身のある完成度の高い仕事をしても依頼者側の指定する期限までに完了できなければ意味がありません。そう考えると時間管理も重要なファクターになるのです。
「働き方改革」や「ワークライフバランス」が浸透し、法規制や労働時間に対する考え方等も以前と比べて変化し随分厳密になりました。罰則規定等もあり、時間管理を適正に行うことが不可欠な時代です。そういった時代背景もあり、物理的に限られた時間内に仕事を仕上げるには、仕事の効率化と品質維持のバランスを真剣に考えることが不可欠です。
仕事を効率化するために欠かせない能力等は、「優先順位思考」と「段取り力」だと思います。
優先順位思考とは、緊急度・重要度という2つのカテゴリーをマトリックスにして仕事を分類し、緊急度・重要度の高い仕事から進めるとい考え方です。また、段取り力とは、学生時代に経験した時間割表の考え方で、仕事毎に時間を割り振って仕事を進める能力のことです。

《雄蕊を助けてくれた部下の共通点》
雄蕊は、金融機関勤務時代に10年間課長職を務めました。特にその期間、数多くの部下とともに仕事をしてきましたが、「仕事の速い部下」、「仕事の遅い部下」、部下一人ひとり個性豊かであり、上司の雄蕊を助けてくれた部下もいれば、手の掛かった部下もいました。課長職に昇格したときに先輩の管理職から「ヒトは信頼しなければならないが、いくら信頼のおける部下でもその仕事は信用するな。」と指導されたことを覚えています。「信頼」とは、その人の今後の行動を期待する行為や感情のこと、「信用」とは、何らかの実績や成果物を作成して、その出来栄えに対しての評価のことです。
先輩管理職からの言葉は、「管理職は、任された部署に対する責任を負っているのだから、誰がやった仕事でもその品質だけはしっかり管理しろ!」ということだと理解しています。
部下を「信頼する」ためには、部下の実績や過去の立居振舞を見たうえで、人間性や習慣、クセ、感覚といった目に見えないものを捉え、上司が期待することに応えてくれるだろうという気持ちを持つことが必要です。

雄蕊が信頼した、言い換えれば、雄蕊を助けてくれた「仕事の品質」が高い部下達には、いくつかの共通点がありました。雄蕊が感じた共通点を紹介します。
①「修羅場」「土壇場」「正念場」を経験しており、性根が座っている。
②「問題意識」、「危機意識」、「当事者意識」があり、メンタル・フィジカル共に「使い減り」しないタフさがある。
③「虫の目」「鳥の目」「魚の目」「人の目」で物事を視ることができる。
④コミュニケーション力(特に聴く力)に長けている。
⑤「受容力」があり、上司や同僚等からの助言や指導を素直に受け入れるコトができる。
⑥「忙しい」と決して言うことはなく、「忙しい」を言い訳にしない。
⑦段取りを組む時間を十分にとり、段取りを考えてから仕事にとりかかる。
⑧優先順位を考えた段取りがうまく、仕事を前倒しに進める(納期に余裕を持ち、複数の仕事を同時並行処理する等、効率良く仕事を進める)。
⑨緊急事態・トラブル等不測事態対応が可能なスケジューリングがされている。
⑩仕事の始めに「仕事の目的と最終完成物」を明確にして仕事にとりかかる。
⑪期待以上の仕事を行い、成果を残すため、投げ返しが少なく、補正等、後ろ向きの仕事に無駄な時間を取られることがない。
⑫根回しが上手く、仕事を始める前の事前相談等をうまく活用している。
⑬集中できる環境を作る事ができる(メリハリのある仕事振り)。
⑭他人に事を頼むのが上手。相手に対して詳細に内容を伝えて頼むので、完成品に手直し等がほとんど発生しない。
⑮経験した仕事は、その捌き方を自分なりに標準化しているので2度目以降の対応が早い。
⑯自分なりの抜き方(リラックスの仕方)を心得ている。

如何でしょうか?ここに列挙した共通点は、職種・役職の有無等に関わらず、すべての職業人に対して言えることだと雄蕊は信じています。「仕事の品質」を高めるうえで、参考にしていただければ幸甚です。

投稿者プロフィール

矢野 覚
矢野 覚
LINK財務経営研究所 代表 
1982年 4月 国民金融公庫入庫
1993年 4月 公益法人日本生産性本部経営コンサルタント養成講座派遣
2015年 3月 株式会社日本政策金融公庫退職
2015年10月 株式会社山口経営サポート(認定支援機関)入社
2019年12月 同社 退社
2020年 2月 LINK財務経営研究所 設立
2022年 5月 健康経営アドバイザー
2022年 7月 ドリームゲートアドバイザー
中小企業金融の現場で、33年間、政府系金融機関の担当者~支店長として事業資金融資の審査(与信判断)や企業再生支援、債権回収業務に従事するとともにそれに関する稟議書の起案・決裁に携わっていました。
その後、中小企業の財務責任者として資金調達、経営改善業務をお手伝いさせていただき、短期間で赤字体質の中小企業を黒字体質に改善するコトができました。
こうした経験を活かして、「財務の力でヒトとカイシャを元気にする」ために、小規模事業者・中小企業の皆さまのお役に立ちたいと考えています。

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