第79回 「ほうれんそう」に「おひたし」~ビジネスマナー語呂合わせ~

スキルアップ

「こんにちは、かんれき財務経営研究所の雄蕊覚蔵です!」第79回は「「ほうれんそう」に「おひたし」~ビジネスマナー語呂合わせ~」と題して、組織運営や人を管理するうえで重要な情報共有・コミュニケーションについて、改めて考えてみたいと思います。

 

これまでこのブログでも組織内における情報共有が大切と解いてきました。情報共有がしっかりできる組織にするためには、組織に属している人にその重要性をしっかり理解し、納得して動いて貰うことが最優先事項であり、そのためには人を教育しなければならないと気付きました。
情報共有のための普遍的なツールは、「ほうれんそう」だと中小企業金融の現場で40年間仕事を続けている雄蕊は確信しています。

ネット上では、「ほうれんそうはもう古い」といった投稿も見かけますが、基本は「ほうれんそう」だと思います。改めて報連相の意味から始めます。

 

報連相(ほうれんそう)とは
報連相は、「報告」「連絡」「相談」の3文字からくる略称で、業務を円滑に進めるための情報共有ツールです。しかし、この3つの言葉の意味、目的はそれぞれ異なります。この違いをきちんと理解することが大切なので、以下に説明します。

「報告」は業務状況を知らせること
「報告」は業務を指示された部下が、上司に向けて行うものです。

「連絡」は決定事項を関係各所に通達すること
「連絡」は決定事項を関係各所に通達するために行うものです。直接対応している当事者同士だけでなく、周囲の関係者にも通達します。

「相談」は困っていること・迷っていることについて判断を仰ぐこと
「相談」は自分一人では判断に迷った場合に、詳しい先輩や上司に判断を仰ぐことです。
「報連相」の中でも、特に「報告は義務」です。報告というのは時代に関係なく、組織で働くうえでの義務なのです。

 

報連相の重要性の理解
組織が肥大化すればするほど、経営者の目が隅々まで届かなくなり、経営実態や無駄が分りにくくなり、タイムリーに必要な経営改善の手が打てず、また誤った経営の舵取りを行ってしまうことで、せっかく成長させた企業を衰退させてしまうといった例が、後を絶ちません。企業が発展を遂げ、その繁栄を長く持続するには、それぞれの部門ごとに経営実態をリアルタイムで把握し、必要な手を迅速に打つことが絶対に必要なのです。
組織においては、リスク管理に繋がります。万一トラブル等が起きた場合に、早く報告することでリスクを最小限に抑えることができるのです。
また、「報連相」をしっかりとやっていれば、最終的には自分の身を守ることにつながります。報告をせずに大きなトラブルになってしまうと、誰も手助けしてくれない可能性があります。もし早い段階で報告をしていたら、周囲がカバーするなどの手を打つこともできるのです。
だから情報共有が欠かせないのです。

 

報連相が徹底できない理由
①報連相の重要性を理解していない
報連相が出来ない理由は、報連相の重要性が理解できていないことだと思います。何故、報連相しないのかと尋ねると「わざわざ情報共有する必要が無いと思っていました」とか、「報連相しなくても自分一人で解決できると思っていました」という返事が返ってくることが往々にしてあります。平時は支障が無かったとしても、有事には大きなトラブルに発展する可能性があります。その前にその重要性をしっかり理解させることが大切です。

②どういう時に報連相するべきかの判断基準を理解していない
「どんな情報を報連相する必要があるのかがよく分らないです」といった応えや「後で報連相すればいいと思っていました」といった報連相の対象となる内容やタイミングを理解していないことも現場ではよく起こることです。判断基準を明確に理解させることも必要です。

③どう伝えればいいのか分からない
報連相をしなければならないことは理解していても、どういう伝え方をすればいいのか分からなければ適切な対応が出来ません。
間違った報連相をしたくないというプライドや間違った結果上司に怒られたくないという萎縮で、報連相が出来ないこともあります。

④上司に怒られたくない
報連相をした結果、上司に怒られてしまうことを部下が恐れていることもあります。
悪いことを報告しなければならない時ほど報連相を避けてしまいます。

⑤報連相する先が分らない
由々しきことですが、誰に報連相してらいいのかが分らないという声も聞こえてきます。組織図に基づく指揮・命令系統を理解させて、報連相する先を明確にすることが必要です。

 

適切な情報共有「報連相」実行のためにできること
部下に適切な報連相をしてもらうために、上司が心掛けるべき3つのポイントを紹介します。
①報連相が行いやすい関係性を構築する
部下が報連相を行えるようにするには、行いやすい環境・関係性を構築する必要があります。
ポイントは、指示する際や注意や指摘が必要な場合には具体的な内容を伝えることです。

②報連相の具体的な方法・ルールを決める
どういった場合に報連相が必要なのかを誰もが理解できる普遍的な方法・ルールを設定することが必要です。
・報連相の対象になる情報
・報連相のタイミング
・情報の伝え方

③重要性を伝える
報連相が漏れた場合に起こりうるリスクをきちんと伝えて「最優先事項であること」を認識させることが必要です。

 

適切な報連相の具体例
報連相はいずれも、上司と部下など業務を共にする関係者たちが円滑に情報共有するための手法です。
①報告・連絡は「事実に基づいた情報」を「結論」から伝える
基本的に、事実のみを「結論」⇒「経緯」の順番で伝える。
報告や連絡ならば、報告すべき具体的な事実を先に伝えたうえで、「なぜそうなったのか」の経緯はそのあとに補足していきます。

②相談は、上司や先輩に「選択してもらう」ものとして使う
「どうしましょうか?」「どうしたらいいですか?」と言った投げかけの相談を受けることが多々あります。雄蕊が前職に勤務していた若い頃に上司や先輩から口酸っぱく言われたことは「自分なりの意見を持って相談しろ」です。上司や先輩が「選択」できるよう自分なりのいくつかの意見、結論を用意したうえで相談することが大切です。そうすることにより自分で解決策を考えられるようにもなります。

③報告や相談のタイミングは、悪いものほど早くする
悪い情報ほど言うのをためらうものですが、そういった情報こそ早いタイミングでの報告が大切です。部下が素早いタイミングで対応してくれるよう「怒らない」「否定しない」ことを日ごろから実践しておく必要があります。

 

報連相に変わる情報共有手法
現在では、報連相だけでは古いとされ、ビジネスにおける重要な語呂合わせがネット上で紹介されています。いくつか紹介してみます。

もらったホウレンソウは「おひたし」で返す!
「お」 怒らない
「ひ」 否定しない
「た」 助ける
「し」 指示する(必要であれば)

仕事における「おひたし」の意味
「おひたし」を使うことで、上司の評価が高くなり、仕事の効率も良くなります。

大切なのは頭ごなしに怒らずに、次につなげられる対策を考えながら指示を出すという手法です。ミスは誰にでもあるものなので、むやみやたらに叱るのでは余計にミスが増えるというのは、何の問題解決にもなりませんし、ただ人間関係が悪くなります。

ただし、本人の態度に問題がある場合は、言い方を考えて叱ることも大切です。何がいけないのかを把握せずにいると、いつまでも同じミスを繰り返してしまいます。常にやさしい態度で接するばかりでは、いけないということです。

部下に「報連相」を要求するなら、上司もきちんと「おひたし」で返さなくてはなりません。
「報連相」も義務付けるのではなく、なぜしてもらうことが重要なのか、それさえきちんと把握している上司であれば、「おひたし」の重要性が理解できます。
部下のSOSにいち早く気付き、素早く対処するため、「ほうれんそうにおひたし」が必要なのです。

「報連相(報告・連絡・相談)」を部下にしてもらうだけではなく、上司が「お(怒らない)・ひ(否定しない)・た(助ける)・し(指示する)」を徹底するだけで、いろいろな問題が解決し、業務改善が飛躍的に上がります。

こまつなとは
仕事は効率よく「こまつな」で進める
「こま」 困ったら
「つ」  使える人(できる人)に
「な」  投げる(協力を要請する)

困ったときは専門家や得意な人に助けてもらおうという意味合いです。
誰にでも得意分野はありますし、それ専門で業務をしている人には誰もかないません。仕事は1人ではできないというのは、こういうところも含まれます。

ただ単に助けてもらうだけというのではなく、お互いに得意分野は違うものなので、困ったときは得意な人か専門家にお願いし、自分もまた得意なことは請け負って、双方助け合うことにより仕事を効率的に進めようということです。
部下が「報連相」で、ある仕事の作業が苦手で進まなくて困っている場合、上司は誰が得意なのか、専門家がいるかどうかというのは、すぐにわかります。その場合「こまつな」を遂行するべく、誰に仕事を振るべきか、頼むべきか、的確な指示が出せるはずです。

きくなとは
「き」(気にせず休む)
「く」(苦しいときは言う)
「な」(なるべく無理しない)
日本社会全体がメンタルヘルスの視点から「無理せずに休もう。苦しかったら言おう」という時代になっています。ひとりで抱え込まないこと、決して無理をしないことが大切です。
「きくな」は一見、否定的な言葉に感じますが、実は「き(気にせず休む)、く(苦しいときは言う)、な(なるべく無理しない)」という救済の意味を持ったビジネスマナー用語です。
苦しんでいても誰にも相談できず、そのストレスがたまっていくというのがあります。
我慢せずに何でも言いたい放題言える新入社員はほとんどおらず、大体が誰にも何も言えずに、1人で我慢しているのが現状です。
そのために生まれたのが「きくな」で、新入社員やストレスが多い部下への救済メッセージとなっています。
上司から部下・新入社員に「きくな」という言葉を意味も込めて伝授しておけば、我慢し過ぎて退職、というところまでは追い込まれません。
貴重な人材を失いたくない上司や企業は、「きくな」という言葉も取り入れましょう。

ちんげんさいとは
部下が「ちんげんさい」にならないように常に気を配る
「ちん」 沈黙する
「げん」 限界まで言わない
「さい」 最後まで我慢

これを続けていると、やはり心身の不調が心配です。実際は、何かを発言するとすべて否定される環境にあり、沈黙するしかない状況もあり得ます。
「言わない」ならまだよいですが「誰にも言えない」という状況は心配ですし、これをやっていると、「ほうれんそう」にも影響が出ると思います。

「おひたし」や「こまつな」などは、実戦することでコミュニケーションがとれるようになったり、業務が効率よく進められたり良いイメージでしたが、「ちんげんさい」は逆で、してはいけないというメッセージが込められています。上司からすれば部下等に絶対にしてほしくないことが含まれた言葉です。

普段を変わらずに普通に仕事をしていたのに、突然、辞表が提出されたり、来なくなったりして非常に驚いたケースもあります。こうしたケースは「ちんげんさい」が当てはまるのではないでしょうか。誰にも何も言わず、限界まで我慢した結果、もう職場に顔を出すのも嫌になり辞めていくパターンです。
上司は部下が「ちんげんさい」にならないように、普段から注意しておくことが大切です。

かくれんぼうとは
「かくれんぼう(確連報)」は、「報連相」が進化したビジネスマナー用語です。報連相の「相談」が無くなり、「確認」が入っています。
「かく」 「確認」
「れん」 「連絡」
「ぼう」 「報告」

問題解決のための報連相ができないのであれば、報連相のスキルを上げさせるか、そうでなければ報連相に変わるコミュニケーション手段を考える必要があります。報連相に変わる手段の一つとして「かくれんぼう」を紹介します。
かくれんぼうが注目されるようになった背景には、報連相の「相談」の部分に問題点があるとされたことがあります。

それは「相談して解決できれば仕事が進む」から転じて「相談して自分は考えない」でも済んでしまうという危険性があり、自律的人材が育成できないという結果に至ることが弊害として懸念されたからです。そのため、相談ではなく「確認」を推奨しようという理由から、報連相ではなく「かくれんぼう」にコミュニケーションの基本を修正した考え方に基づきます。

「ソラ・アメ・カサ」
「ソラ・アメ・カサ」という言葉をご存じでしょうか。これは、マッキンゼー日本支社で開発された問題解決の型の一つで、非常にシンプルなフレームです。
ソラ「空を見ると曇ってきた(事実)」
アメ「雨が降りそうだ(解釈・判断)」
カサ「傘を持っていこう(打ち手)」

この3つをセットにして伝えれば認識のズレもなく、正しく相手に判断してもらえるというものです。
ソフトバンクグループの孫正義社長が経営判断で重視しているのもこの「事実」「解釈・判断」「打ち手」の3セットだそうです。
ソラ・アメ・カサについてもポイントはアメの部分(洞察・予測)になります。
現状の状態を確認して、そこから今後の状態を考えることが、解決策の精度を上げます。

雑相(ザッソウ)の奨め
雑相(ザッソウ)とは、雑談+相談のことで、雑談のなかで報告や連絡をおこない、部下や後輩が相談しやすい環境をつくっていくことで、報連相を円滑に行っていく方法です。

報連相はビジネスの基本ですが、報連相が主流だった時代のビジネスが大きく変化し、ビジネスの多様化によって変化のスピードも早くなったため、なかなかマニュアル化が難しくなりました。そのため、自分だけで解決するのではなくチームで解決する動きに変化し、報連相ではなくザッソウを取り入れる企業が増えているようです。

報連相ができない人の特徴
・スケジュール通り業務が進んでおり、わざわざ報告する必要がないと自身で考えている。
・報告する相手が離席や忙しそうにしており、報告は後回しでいいと考えている。
・人に聞くことは自分ができないと言っているみたいで嫌だと考えている。

報告できない人は、組織のことを考えているのではなく、自分のことを中心に考えているのです。しかしながら、上司から報連相の義務化を命じることで、どんな状況でも報告するように強制することで、自然に報連相が身に付き習慣化され、報連相ができる人になることができます。

報連相の習慣化
・朝礼後のミーティングで当日の業務スケジュールの報告と相談
・昼礼後に進捗の中間報告と相談
・終礼後に当日の最終報告と翌日のスケジュールの相談
・トラブルが発生した場合は、直ちに上司に報告し包み隠さず報告(連絡)

最近は情報共有ツールが注目を浴びていますが、何を、どのように情報共有をするべきかを組織内で統一することが重要です。

投稿者プロフィール

矢野 覚
矢野 覚
LINK財務経営研究所 代表 
1982年 4月 国民金融公庫入庫
1993年 4月 公益法人日本生産性本部経営コンサルタント養成講座派遣
2015年 3月 株式会社日本政策金融公庫退職
2015年10月 株式会社山口経営サポート(認定支援機関)入社
2019年12月 同社 退社
2020年 2月 LINK財務経営研究所 設立
2022年 5月 健康経営アドバイザー
2022年 7月 ドリームゲートアドバイザー
中小企業金融の現場で、33年間、政府系金融機関の担当者~支店長として事業資金融資の審査(与信判断)や企業再生支援、債権回収業務に従事するとともにそれに関する稟議書の起案・決裁に携わっていました。
その後、中小企業の財務責任者として資金調達、経営改善業務をお手伝いさせていただき、短期間で赤字体質の中小企業を黒字体質に改善するコトができました。
こうした経験を活かして、「財務の力でヒトとカイシャを元気にする」ために、小規模事業者・中小企業の皆さまのお役に立ちたいと考えています。

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