第99回 四次元的思考~時間軸でも考える~

スキルアップ

「こんにちは、かんれき財務経営研究所の雄蕊覚蔵です!」第99回は「四次元的思考~時間軸でも考える~」と題して、経営者や経営幹部、管理職層に求められる「より高次元の思考法」について考えてみます。

 

経営者や経営幹部あるいはスタッフ等と話をしているときに、どうも話が噛み合わないなと感じたり、頭の回転が速いと言われる人や仕事ができる人の話にはどうしてもついていけないなと思ったりすることがあります。また、なかなか「問題意識」「危機意識」「当事者意識」にズレが生じてベクトル合わせができていないなと感じるときもあります。こうした原因は、意識の及ぶ領域や深度が異なるからだと気付きました。思考の次元は、人それぞれの能力やキャリアによって差が出てくるものです。
どう差が出てくるのかといえば、縦と横だけの平面的に考えるのか、それに高さも加えて立体的に考えるのか、さらに時間軸も付け足して時系列の視点も併せて考えるのかということだと思います。仕事の遅い人やキャリアの浅い人の思考法は平面的な「二次元的思考」、そこからひとつレベルが上がった一般的なレベルの思考法は立体的な「三次元的思考」、そして、能力があってキャリアを積んだ人の高次元の思考法が時間軸も加えた「四次元的思考」というランク付けになります。
大きく捉えれば、意識が及ぶ領域の広さや深度に違いがあります。高次元になるほど、その領域が広くなり、より深掘りして物事を捉えることができるようになるのです。

仕事の遅い人やキャリアの浅い人は意識の届く領域が狭いのです。一方で、仕事ができる人やキャリアを積んだ人は、そこまで深く考えているのかと思うくらい広範囲に意識を張り巡らせています。そういった人は、将来どうなるかといったことまで推測することができ、ほぼ想定どおりに物事が進みます。一般的には、この意識の領域は、その人の能力やキャリアに比例して拡がっていくものです。

経営者や経営幹部、管理職層に求められる思考法は、高次元の「四次元的思考」です。
「四次元的思考」とは、前述したとおり、物事を俯瞰的に捉え、さらに時間軸も加えた思考法のことです。
この思考法が身につくと、断片的に物事の一部だけを捉えるのではなく、物事全体を把握して、本当に求められている真意は何か、本質は何なのかといったところまで考えることができるようになります。さらに、なぜそうなったのか、この先どうなっていくのか、先行きを考えると今何をしなければならないのかといった過去・現在・未来という時間軸にも思考の幅を拡げて考えることができるのです。
たとえば、「売上減少」という事象を捉えると、思考の次元の違いによって次のようにコメントが違ってくると思います。
二次元的思考:「売上が減少したので売上を増やさなければならない」
三次元的思考:「こうした理由により売上が減少したので、具体的にこういう対策を打たなければいけない」
四次元的思考:「具体的な対策を打たなければ、近い将来、こういう結果になってしまう。だからすぐさま打ち手を考えて、いつまでにこういう行動する必要がある」

「二次元的思考」の範疇に属する人は、目の前にあるものしか見えないので、物事を見たまま、聞いたままでしか考えることができません。物事を平面で捉えて考えるのです。
仕事の達成度でいえば、言われたことをそのまま言われたとおりにやります。しかし、ただ言われたことをこなすだけなので、最終的な成果を考えてどのようにすれば期待されている結果をだせばよいのかまで考えが及びません。その結果、期待以上の成果を出すことは難しく、物足りない結果になることのほうが多いのが二次元的思考の人の特徴です。
物事には目に見える表だけでなく、必ず見えない裏があるものです。しかし、二次元的思考の人は、目の前の対象にしか目が届かないので、奥行きや裏に隠れている本質は何なのかと言ったことを理解することはできません。決して悪気があるわけではなく、人としては、素直で正直な人が多いのです。言われたことをそのまま信じてしまいがちなので、人にだまされやすい面も持っています。
また、あまり自分の意見を持たないので、人の言ったことに迎合する傾向があり、八方美人や風見鶏といった評価を受けやすいともいえます。

能力が上達し、経験を積むと、平面だけではなく、奥行きも見えるようになり、立体的な思考ができるようになります。これが「三次元的思考」です。つまり、言われたことを鵜呑みにするのではなく、縦や横や前から後ろから、多面的な角度から物事を三次元的に捉えて考えることができるようになるのです。物事の表裏を把握して「本当にそうか」「なんでこうなるのか」と考えることができるのです。
だから、仕事を任されても「なぜそう言われたのか」「何を求め、期待しているのか」等、任された仕事の完成度を考えるようになり、目的をもって、工夫しながら行動ができるようになります。

ただ、奥行きがあることに気付いても、物事を全体ではなく、一部でしか考えられないところもあります。全体が把握できないと本質を見極められない場合も数多くあるので、三次元で物事をとらえられるようになれたら、さらにその領域や深度を拡げる意識を持って、全体が把握できるように努めなければなりません。

経営者や経営幹部、管理職といったレベルのいわゆる仕事ができる人達は、「四次元的思考」で物事を考える習慣を身につけていなければなりません。
四次元的思考では時間軸まで考えることがポイントになります。将来を予測して良い方向に進むために、いま何をやるべきかを考えるのです。

このように思考の次元に大きく差が出る要因は、物事を見る目の活用の仕方が異なっているからだと思います。
同じ場所、同じ状況で起きている現象を同時にみているにもかかわらず、現場(ローマネジメント)とミドルマネジメント、トップマネジメントとでは見え方、感じ方に違いがあるのです。
それは、鳥の目・虫の目・魚の目・コウモリの目という四つの目の活用の仕方が身についていないからです。
鳥の目とは
全体を高い場所から見下ろす視点です。つまり「俯瞰」する視点のことです。鳥は上空から地上全体を見渡すことができ、どこに何がありどう進めばいいのかを一瞬で把握することができます。
経営者、経営幹部、管理職は、部分最適ではなく全体最適の視点で、全体像を捉えることが必要です。組織や自分の部署を鳥の目で俯瞰して見ることで、そこにある課題等の事実を大きく捉えることが大切なのです。

虫の目とは
物事を細かく分けより詳しくより深く掘り下げる視点です。鳥の目が全体を俯瞰して捉える視点であれば、虫の目は一部を深く知るという視点です。
経営者、経営幹部、管理職は、鳥の目で大まかに全体像を捉え、そのなかで気になることがあれば虫の目でしっかり細かい中身を確認し、課題の本質を捉えることが必要なのです。

魚の目とは
物事の流れを見る視点です。過去 → 現在 → 未来へと流れる時間の経過を捉えることが、魚の目です。
いま目の前で起こっていることは、数年後、数十年後にはどう変化しているか。過去の歴史から現在があり、いまの傾向からこれらから先、どう変わるのかを時間軸で捉えることが必要です。
身近な例だと、今ある課題を解決しないまま放置しておくとこれから先にどんなリスクが考えられるのか。将来予測をする視点で経営者、経営幹部、管理職が解決策を考えるのです。

コウモリの目とは
コウモリは逆さまにぶら下がり通常とは逆の視点で物事を見ています。つまり、相手側の視点で物事を見たり、視点を変えたりすることをさします。
「常に自分は正しい。これが常識だ。誰もそんなこと言わない」等の凝り固まった視点や考え方を柔軟にすることが目的です。コウモリの視点を持ち合わせることで、イノベーションを起こしたり、的確な課題解決を実現したりすることができるのです。

人の目とは
こうして4つの目で得た情報を総合的に判断するのが人の目です。
人は考えることができる生き物です。多角的な視点から知り得た情報を基に状況判断して、課題解決に向けた対策を意思決定することが人の目です。
思考の次元を高めるためにやるべきことは、紹介した5つの目を自在に操れるようになることだと思います。

VUCA時代の経営においては、①限られた時間で成果を上げること、②少ない情報で判断すること、③高次元思考ができるリーダー人材が求められること、④めまぐるしい変化に適合することが重要になります。
そうした時代に求められる思考ツールとして仮説思考があります。
仮説思考とは、限られた情報から最も可能性の高い結論を「仮の結論=仮説」として設定し、その仮説に基づいて仮説の実行・検証・修正を行っていく思考法のことです。
仮説を設定することで、考慮・調査すべきことを大幅に絞り込めるので、効率よく問題解決を進めていくことができます。
また、仮説が間違っていたとしても、検証して、すぐに修正できるので、少ない情報を利用して限られた時間のなかでスピード感を持って仮説を出すことが重要になります。
仮説思考が身についていれば、課題の本質を即座に見きわめ、課題や問題を分析してすみやかに整理でき、限られた情報で論理的な思考が可能となり、最適な意思決定ができるようになります。
業務マネジメント、時間マネジメントの観点からも仮説思考を実践できるリーダーが求められています。
限られた情報と時間のなかで、出来る限り事実に近い最適な仮説を導き出す仮説思考という枠組みを活用するには、「四次元的思考力」が身についていなければ難しいといえます。

このブログでも「第43回 コンセプチュアル思考力を身につける」や「第95回 稼ぐ経営者の「経営センス」」で経営センスを磨くためには「思考のスピードを上げる訓練を積むこと」等、思考に関しての投稿記事を書かせていただいています。
より高次元な思考法を身につけて、迅速かつ的確に状況判断をする必要性を時代が求めているのです。

投稿者プロフィール

矢野 覚
矢野 覚
LINK財務経営研究所 代表 
1982年 4月 国民金融公庫入庫
1993年 4月 公益法人日本生産性本部経営コンサルタント養成講座派遣
2015年 3月 株式会社日本政策金融公庫退職
2015年10月 株式会社山口経営サポート(認定支援機関)入社
2019年12月 同社 退社
2020年 2月 LINK財務経営研究所 設立
2022年 5月 健康経営アドバイザー
2022年 7月 ドリームゲートアドバイザー
中小企業金融の現場で、33年間、政府系金融機関の担当者~支店長として事業資金融資の審査(与信判断)や企業再生支援、債権回収業務に従事するとともにそれに関する稟議書の起案・決裁に携わっていました。
その後、中小企業の財務責任者として資金調達、経営改善業務をお手伝いさせていただき、短期間で赤字体質の中小企業を黒字体質に改善するコトができました。
こうした経験を活かして、「財務の力でヒトとカイシャを元気にする」ために、小規模事業者・中小企業の皆さまのお役に立ちたいと考えています。

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