第84回 【2000字commentary】経営上求められる「集中」とは

スキルアップ

「こんにちは、かんれき財務経営研究所の雄蕊覚蔵です!」第84回は「経営上求められる「集中」とは」と題して、経営や業務を進めていく上で、いかに集中することが大切なのかについて考えてみたいと思います。

 

2009年12月発行の「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」で、一般の方にも有名になった?「マネジメントの父」と呼ばれるドラッカーの教えの中から「選択と集中」に関するものをいくつかピックアップしてみます。

経営の目的を明確にするために経営者、経営陣に求められる「集中」

集中の決定とは戦場の決定である。
この決定なくしては、戦闘はあっても戦争にはならない。
集中の目標は、基本中の基本というべき重大な意思決定である。
資源は限られている。集中することなくして成果をあげることはできない。
ピーター・ドラッカー

経営者や経営陣が、経営の目的・目標を立てる際には事前に決めなければならないことが2つあります。それは「集中の決定」と「市場地位の決定」です。
集中とは選択と集中のことであり、選択と集中とは、何で勝つかを明らかにする、ということです。
特に中小企業は、経営資源も脆弱であり、お金も、従業員の数も、時間も限られています。
「何に力を合せればいいのか」をはっきりさせなければ、成果をあげることはできません。つまり、選択と集中とは、「力を入れる製品・サービスを一つに絞ること」ではなく、「何を軸に事業を運営するかをはっきりさせる」ということなのです。

 

成果をあげるために最初に行う「集中」
成果をあげる人に求められるのは「成果をあげる力」ではなく、「生産性」です。より少ないインプットで、より多いアウトプットが得られるほど生産性が高く、より多くのインプットでより少ないアウトプットしか得られないと生産性が低いと言えるのです。
では、成果を上げるためには、最初に行えばいいのでしょうか。

知識労働の生産性向上のために最初に行うことは、行うべき仕事の内容を明らかにし、その仕事に集中し、他のことはすべて、あるいは少なくとも可能な限り無くすことである。
そのためには知識労働者自身が、仕事が何であり、何でなければならないかを知らなければならない。
ピーター・ドラッカー

知識労働とは、知識や情報を使って価値を創造する仕事です。1800年代のころは、仕事のほとんどが力仕事だったので、仕事の進捗状況を目で見て確認することができました。予定より遅れていれば「もっと急げ!」と指示することができたのです。
しかし、今日の仕事のほとんどがそうはいきません。なぜなら、知識や情報を使う仕事は、肉眼で進捗を確認することができないからです。ましては、部下は上司が何を考えているか。上司は部下が何を考えているか。お互いに確認しなければわからないのです。
大事なことは、仕事をする本人が「自分の仕事は何か」を理解しなければならない、ということです。言われた通りに体を動かせばいいという時代は既に終わったのです。
部下は、上司の指示に対して、その真意を問わなければならない。同時に、上司は、部下にその真意を問うことをさせなければならないのです。
要は、自立し自律した人財が求められているということだと思います。

 

役割発揮に向けて一人ひとりが認識するべき「集中」
企業の業績をあげるために生産性の向上を目指す。その実行性を高めるために必要な「集中」について考えてみます。

最も重要なことに集中せよ

一つのことに集中せよ
成果をあげるための秘訣を一つだけ挙げるならば、それは集中である。
集中とは、「真に意味あることは何か」、「最も重要なことは何か」という観点から時間と仕事について自ら意思決定をする勇気のことである。
成果をあげる人は最も重要なことから始め、しかも一度に一つのことしかしない。

自らの強みを生かそうとすれば、その強みを重要な機会に集中する必要を認識する。

事実、それ以外に成果をあげる方法はない。
二つはおろか、一つでさえ、よい仕事をすることは難しいという現実が集中を要求する。

人には驚くほど多様な能力がある。
だがその多様性を生産的に使うには、それらの多様な能力を一つの仕事に集中することが不可欠である。
あらゆる能力を一つの成果に向けるには集中するしかない。

集中は、あまりに多くの仕事に囲まれているからこそ必要となる。
なぜなら一度に一つのことを行うことによってのみ早く仕事ができるからである。

時間と労力と資源を集中するほど、実際にやれる仕事の数と種類は多くなる。
成果をあげる人は、多くのことをなさなければならないこと、しかも成果をあげなければならないことを知っている。
したがって、自らの時間とエネルギー、そして組織全体の時間とエネルギーを一つのことに集中する。
最も重要なことを最初に行うべく集中する。

集中のための第一の原則は、生産的でなくなった過去のものを捨てることである。
そのためには自らの仕事と部下の仕事を定期的に見直し、「まだ行っていなかったとして、いまこれに手をつけるか」を問うことである。
答えが無条件のイエスでないかぎり、やめるか大幅に縮小すべきである。
もはや生産的でなくなった過去のもののために資源を投じてはならない。 

第一級の資源、特に人の強みという稀少な資源を昨日の活動から引き揚げ、明日の機会に充てなければならない。

優先順位の決定には、いくつか重要な原則がある。第一に、過去ではなく未来を選ぶ。第二に問題ではなく機会に焦点を合わせる。第三に、横並びではなく独自性をもつ。第四に、無難で容易なものではなく変革をもたらすものを選ぶ。

集中とは、「真に意味あることは何か」「最も重要なことは何か」という観点から時間と仕事について自ら意思決定をする勇気のことである。この集中こそ、時間や仕事の従者となることなくそれらの主人となるための唯一の方法である。

ピーター・ドラッカー

如何に能力の高い人財でも一人ひとりには限界があります。時間も有限です。一度に多くのことに手を出そうとしても、成果があがらないのは当然のことです。一度に、2つも、3つも異なる仕事を同時に進めることはできません。一度に一つのことをうまくできればいい方です。

ただこなすのではなく、自ら進んで一番重要な仕事は何かを決めなければなりません。上司は、部下に成果をあげてもらうためも、部下に自ら意思決定をする余地を与えなければならないのです。

 

「集中」することの大切さ
私は、1つの業務に集中できる体制を組んで欲しいと熱望し、言い続けています。
現場の経営者からは「何故、百かゼロにこだわるのか。もう少し柔軟に考えることができないのか」と言われますが、それは、このドラッカーの名語録=「教え」に共感できるからです。

投稿者プロフィール

矢野 覚
矢野 覚
中小企業金融の現場で、33年間、政府系金融機関の担当者~支店長として事業資金融資の審査(与信判断)や企業再生支援、債権回収業務に従事するとともにそれに関する稟議書の起案・決裁に携わっていました。
その後、中小企業の財務責任者として資金調達、経営改善業務をお手伝いさせていただき、短期間で赤字体質の中小企業を黒字体質に改善するコトができました。
こうした経験を活かして、「財務の力でヒトとカイシャを元気にする」ために、小規模事業者・中小企業の皆さまのお役に立ちたいと考えています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました