第53回 ホンキのヤル気

スキルアップ

「こんにちは、かんれき財務経営研究所の雄蕊覚蔵です!」第53回は、ホンキのやる気と題して、困難な状況を突破するための思考や行動について考えてみます。

 

《かんれき財務経営研究所にスタッフ誕生》
以前からこのブログの記事にも登場していた地域金融機関に所属する女性スタッフが、現時点では期間限定ですが、2021年8月からかんれき財務経営研究所のスタッフとして雄蕊の仕事を手伝ってくれることになりました。今年2月に雄蕊が講師を務めた地域銀行の行員(初心者)向け財務研修で画面越しに初めてお目にかかり、3月以降、雄蕊のもとでバックヤード業務について学んでいただいていた方です。
こんなことを言うと、女性蔑視であると指摘されるかもしれませんが、雄蕊は、金融機関勤務時代から数多くの女性スタッフと一緒に仕事をしてきました。現在、バックヤード業務を学んでいるこの方は、これまで共に仕事をしてきた女性スタッフの中でも優秀なスタッフのひとりだと感じています。
その彼女(誤解?を招かないために一言:「彼女」は、件の女性スタッフを指す代名詞として表記、以下同じ)、2021年7月18日(日)に開催された第1回 やまぐち萩往還マラニック&ウォークの33.7キロウォークに参加、およそ9時間かけて見事に完歩したとのこと

彼女曰く、「銀行からバックヤード業務を身につけるため、コンサルティングファームに出向を命じられたものの、想定とは異なる展開になっており、自分の将来についても不安を感じていた。自身の迷いを吹っ切るため、自身に自信をつけるため、今回限界にチャレンジしてみた。悪天候で足下の悪い中、予定以上に時間は掛かったけれど、無事完歩。この成功体験は、自分にとって大きな糧になったと思う。」

     

 

《修羅場・土壇場・正念場を経験》
人生いろいろ、山あり谷ありです。人は、強さと弱さ、楽しさと悲しさ、信頼と裏切り、仲間と孤独、出会いと別離といった真逆な関係が表裏一体となった悲喜交々の振幅の中で、揺れ動きながら生きています。
優秀といわれていたプレイヤーが、リーダーに抜擢されて人を管理する立場になったとき、最も頭を悩ませることのひとつが、チーム内の感情のしがらみによるトラブルです。「名選手、名監督に非ず」人のマネジメントは思った以上に難しいものです。

論理的になることや感情に囚われないことが社会人の常識とされていますが、物事を考え、判断する際、感情を司る脳の中枢は常に反応し続けていると神経科学者たちは指摘しているそうです。つまり、正しい判断を下し、最善の行動をとり、変化を乗り越え、成功するためには感情は絶対不可欠なのです。
しかしながら、学校教育等では感情の処理の仕方についてほぼ学ばないため、社会に出てからとまどい、心身に影響を及ぼす人があとを絶たないのが現実社会です。対立や変化に正面から向き合い、うまく対処するためには、感情について正しく把握する必要があるということです。

金融機関勤務時代に管理職であった雄蕊を助けてくれた優秀な部下たちは、一様に修羅場・土壇場・正念場という「3つの場」を経験し、乗り越えていました。
修羅場(しゅらじょう、しゅらば)とは、激しい闘争の行われている場所、あるいはそのような場所を連想させる戦場または事件・事故現場といった状況のこと、土壇場(どたんば)とは、決断をせまられる、最後の場面。進退きわまった状態のこと、正念場(しょうねんば)とは、 その人の性根(しょうね)が問われるような大事な局面のことです。
修羅場は覚悟を決めてくぐるものであり、土壇場は注意を払って避けるもの。そして正念場は、性根を据えて迎えるものです。
人は誰でも2つの「トウソウホンノウ」を有していると思っています。それは「闘争本能」と「逃走本能」です。困難な場面や状況に追い込まれたときにどちらの本能が働くかによって、そのヒトの真価が問われるのではないでしょうか。
修羅場、土壇場、正念場は、自ら進んで向き合う場面ではないと思いますが、人生において、ビジネスにしてもプライベートにしても少なくとも1度や2度は経験しなければならない「場」だと思います。そのときに「闘争本能」が働くのか、それとも「逃走本能」が働くのか、この違いはヒトが成長するうえで大きく左右される選択だと思います。
自らの成長を求めるのであれば「闘争本能」を前面に出して、苦しい場面に向き合い、自ら経験することで、この「3つの場」の乗り越え方を身に付けることができると思います。こうした場を何回か乗り越えるとその越え方を学んで、動じない強い精神力が育まれるのです。
スポーツでもビジネスでも私生活でも、この3つの場は必ず出てきます。修羅場では問題解決能力を研き、土壇場では諦めない心を鍛え、正念場では踏ん張る心を鍛えることができます。
このような場に突然直面した場合、ヒトは、戸惑い、できれば避けようと「逃走本能」が働くことが往々にしてあると思います。しかし、そこで誰かに任せて逃げてしまうと自身の成長に結びつかないだけでなく、そうした場が、次々に追い掛けてきて、また新たな場に直面することになります。つまり、逃げ続けることはできないのです。
雄蕊を助けてくれた部下たちは、「逃走本能」ではなく、「闘争本能」を働かせて自ら乗り切る能力を身につけていました。
様々な場面を経験することでヒトは成長するものです。「量が質を作る」、「流した汗は嘘をつかない」、自ら進んで、何事にも労を惜しまず、挑んできた部下たちは、精神的にも肉体的にもタフで皆頼もしく見え、期待を上回る活躍をしてくれました。彼等には今でも感謝しています。

 

《「陽転思考」で人生が好転する》
株式会社HIROWA 代表取締役 ビジネスコンサルタント、京都光華女子大学キャリア形成学科客員教授である和田裕美氏の『和田裕美の営業手帳』の巻末に、「陽転思考十ヶ条」があります。

第一条  すばらしいライバルを作ろう
第二条  わからないことがあったら、その場で聞こう
第三条  お互いに長所をほめ合おう
第四条  ネガトークする人を陽転させよう
第五条  お互いに元気よく挨拶をしよう
第六条  明るい笑顔を忘れないようにしよう
第七条  新しい仲間を大切にしよう
第八条  仕事に対してポジティブな話をしよう
第九条  成功の実例を多くの人に知らせよう
第十条  一期一会の大切さをもう一度語り合おう

この「陽転思考十ヶ条」は、和田氏がフルコミッションの営業職だったころ、毎朝みんなで唱和していた言葉だそうです。
ポジティブ・シンキングとは、簡単に言えば、ネガティブなことを考えると実際にネガティブなことが起こってしまうので考えてはいけない、常にポジティブな考えを口に出して言ってネガティブな考えを打ち消しなさい、というものです。
和田氏のコメントには、
「ポジティブなことを考えなきゃ」と思えば思うほど、ネガティブなイメージが湧いてきてしまい、どうしても打ち消すことができなくて自己嫌悪になり、ますますネガティブになるという悪循環に陥ってしまいました。自分は弱い人間だからネガティブな考えをもつことを許そう、いったんネガティブを受け入れたうえで、その中から「よいこと」を探して切り替えようと考え方を変えたのです。
すると、いろいろなことがうまく回りはじめました。例えば、契約を断られて落ち込んでも「自分の説明の足りないところがわかってよかった」などと陽転して切り替え、次には成約するといった結果が出たのです。
とあります。

陽転思考と混同される言葉にポジティブ・シンキングがありますが、この2つは基本的に違う思考だそうです。
ポジティブ・シンキングでは、①プラスのことだけを考える、②すべてを肯定する、③よいことだけを考えます。
なるほどって思っても、人間弱音を吐きたくなる状況にも遭遇します。ヘコんでしまうこともあります。ポジティブ・シンキングはできる人と、そうでない人がいます。
ポジティブ・シンキングに挫折した人は、「ポジティブに考えなきゃいけないんだ」と流れに逆らう考え方をしているからだそうです。
一方、陽転思考とは、事実はひとつ。考え方は二つ。考え方にはプラスとマイナスがあります。常にその両方を選択しとしてあげてから、自分で選ぼうという姿勢が陽転思考です。
陽転思考は、①事実を受け入れる、②いやな感情も受け止める、③「よかった」を探す、④2と3を比較して自分にあったものを選択する、④ワクワクする
これが陽転思考のステップです。ポジティブ・シンキングと異なるのは2です。すべてを受け入れて、徐々に考え方の方向を「よかった」の方向に変えていくやり方です。これはまさに「流れに乗る」考え方。ここには頑張るとか、力むという概念はありません。川を下っていくと、きっと「よかった」が見つかるのだと思います。

 

《ホンキのヤル気》
2020年に起こったコロナ禍で多くの経営者が痛感したことの1つが、お金の重要さだと思います。現金、決算書上の言葉でいえば「内部留保」になるのですが、なぜか日本では、内部留保は批判されがちです。会社にお金を貯めておくのではなく、どんどん投資をして経済を回せということなのかもしれません。しかし、今回のコロナ禍では、内部留保が潤沢な会社ほど生き残ることができたのは間違いないことです。特に飲食、宿泊業等、実質営業が制限されている業界では「しばらく売上が立たなくても会社を維持しているだけの蓄え」があるかどうかが生命線なのです。
このことは、このブログでも何度も繰り返して説明させていただきました。ポストコロナの経営では手元流動性を高めておくことが必須だと思います。

さて、以前にもこのブログで取り上げたのですが、何度も不況を乗り越えた松下幸之助氏は、ダムの水のように現金を蓄えておくことの重要性を認識し、ダム(式)経営と名付けて提唱しました。ただ、ダム(式)経営は単に現金を貯めておけ、という教えではありません。ダム(式)経営にはもっと深い松下幸之助氏の経営哲学が反映されています。今回は、ダム(式)経営がテーマではありませんので、その詳細についての解説はまたの機会にします。

関西経済同友会セミナー(1965年)で、松下幸之助氏がダム(式)経営について講演をした際、その会場には稲盛和夫氏がいました。京セラ創業者の稲盛氏は、松下幸之助氏と並び称される稀代の経営者です。
講演が終わり、質疑応答の時間、一人の参加者が「ダム経営ができれば確かに理想です。しかし、現実にはできない。どうしたらそれができるのか、その方法を教えていただきたい」と質問したそうです。これに対する松下氏の答えは「ダムをつくろうと強く思わんといかんですなあ」。というものでした。
会場にいた中小企業の社長たちは、冗談だと思い、笑いが起こったそうです。しかし、会場の後ろのほうでその言葉を聞いていた稲盛氏は、衝撃を受けました。松下氏の回答から、経営とは祈り念ずることから始まるんだ、と強烈に思ったそうです。稲盛氏は、この体験から何事も強く念ずることから始めることの大切さを念頭に置き、京セラを成長させていくことになります。
つまり、経営の出発点は、祈り念ずるほどの強烈な思い、強い熱意です。経営者の念じ祈るほどの思いや魂を込めるほどの思いが、組織のスタッフや外部のステークホルダーの心を揺さぶり、経営者の描いた夢の実現に繋がるのです。経営者に「ホンキのヤル気」がなければ経営は成功しないということです。

かんれき財務経営研究所の女性スタッフも、かつて雄蕊を助けてくれた部下達も、そして経営者も「ホンキのヤル気」を持つことができるか否かで歩むべき道が大きく違ってくると思います。いつか自分の歩んできた道を振り返ったとき、各自が「よかった」と後悔しない選択ができるよう、感情をうまくコントロールし、陽転思考力を活かして、モチベーションを常に高い状態で持続できる。そんな強い心を持ちたいものです。

投稿者プロフィール

矢野 覚
矢野 覚
LINK財務経営研究所 代表 
1982年 4月 国民金融公庫入庫
1993年 4月 公益法人日本生産性本部経営コンサルタント養成講座派遣
2015年 3月 株式会社日本政策金融公庫退職
2015年10月 株式会社山口経営サポート(認定支援機関)入社
2019年12月 同社 退社
2020年 2月 LINK財務経営研究所 設立
2022年 5月 健康経営アドバイザー
2022年 7月 ドリームゲートアドバイザー
中小企業金融の現場で、33年間、政府系金融機関の担当者~支店長として事業資金融資の審査(与信判断)や企業再生支援、債権回収業務に従事するとともにそれに関する稟議書の起案・決裁に携わっていました。
その後、中小企業の財務責任者として資金調達、経営改善業務をお手伝いさせていただき、短期間で赤字体質の中小企業を黒字体質に改善するコトができました。
こうした経験を活かして、「財務の力でヒトとカイシャを元気にする」ために、小規模事業者・中小企業の皆さまのお役に立ちたいと考えています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました