第52回 企業は人なり、人は心なり ~人に寄り添う真のリーダーシップ~

マネジメント

「こんにちは、かんれき財務経営研究所の雄蕊覚蔵です!」自宅のネット環境の不具合もあり、久しぶりの投稿になってしまいました。ネットが繋がらなくなることで生活がこんなに不便になるものだとつくづく実感しました。

さて、第52回は「企業は人なり、人は心なり~人に寄り添う真のリーダーシップ~」と題して組織をしっかりグリップできる真のリーダーについて考えてみようと思います。

 

《企業は人なり》
かつて経営の神様と称えられた松下幸之助氏の名言のなかに「企業は人なり」という言葉があります。
企業の継続的な成長のためには、優秀な人材の採用・育成が必要不可欠だといえます。企業は、結局のところ人で成り立つものだからです。だから、企業にとっての最大の資産は「人」なのです。
自発的に行動できる自立し自律した優秀なスタッフで構成される企業組織と、そうでないスタッフで構成される企業組織では、仕事における作業効率も生産性も異なってきます。企業は、働くスタッフの人格や姿勢によって良くも悪くもなるということです。
中小企業の現場で、経営者は、
・採用した人がすぐに辞めてしまう
・そもそも人が採用できない
・職場の人間関係が悪い
・ミスが多い
・社員のモチベーションを上げるのに四苦八苦している
・なかなか一人前に育たない
等々といった人の問題に常に悩まされ、かえって「人」が問題の発生源になってしまっているのが現実です。本来、経営者は、視点を社外、つまり顧客に向けるべきですが、人の問題が絶えないために社内のスタッフに目が行ってしまいがちになっていル面も否めません。

 

《人に寄り添う真のリーダーシップ》
雄蕊は、円滑な組織運営に不可欠なものは、経営者の強い人間力だと思っています。言い換えると、経営者の強い=真のリーダーシップです。
では、真のリーダーシップとはどういうものなのでしょうか?
リーダーシップは、肩書によって与えられるものだったり、チームや部下を率いることで得られたりするものだと思っている人が多いかもしれませんが、真のリーダーシップとは、人を成長させたり、なにかができるようにしたりすることであり、権威や権力によって得られるものではありません。権威や権力の有無に拘わらないその人自身が持つ「人に対する影響力」「人を惹き付ける人間力」のことだと思っています。
例えば、人ができないと思っていたことをできるようにしたり、不可能を可能にする方法を示したり、自分を信じられなかった人に信じる力を与えたりできる人こそ真のリーダーであるといえます。

真のリーダーの行動や考え方、必要な資質について雄蕊なりの考えを整理してみます。

1 誠実で高潔な行動をしている
ノブレス・オブリージュというフランス語をご存じですか。
人の上に立つ者は、偽りがあってはいけない、私心があってはいけない、わがままであってはいけない、奢りの心があってはいけない。そうした高潔な生き方をおのれに課すこと。これが人の上に立つ者の義務であり、ノブレス・オブリュージュというものです。
誰かに見られているとかいないとかに関係なく、自らの行動や価値観、やり方に一貫性があり、それを高いレベルで実行できるのがリーダーなのです。雄蕊は、それを「リーダーの品格」と考えています。

2 人間関係を大切にしている
真のリーダーシップの土台となるのは、人間関係の質です。
相手と個人的に深くつながり、上っ面の関係を突破した密な人間関係を築く力がリーダーには備わっています。
プライベートな面に関してあまり口にしたがらないリーダーもいますが、やはりこういうリーダーには偏りがあり、部下とも円滑な意思疎通ができていないため、部下からの信頼も十分に得られていないように思います。

雄蕊は、円滑な人間関係を築き、その質を高めるには、相手の承認欲求を満たすことが重要だと考えています。
人は誰しも、その強弱はあるにしても「他人よりも自分の方が特別な存在である」「注目されたい」「関心を持ってほしい」という承認欲求を持っています。
相手に対して「挨拶を無視しない」「施してもらったことに対して素直にありがとうといえる」等、誰もがお互いに承認欲求を認め合い、満たされている関係性ができて初めて、心地良い人間関係を築くことができるのです。
非常に簡単なことだと思われますが、相手の存在をきちんと認めて、価値ある人間であるということを相手に与え続けることは意外に難しいことですが、円滑な人間関係は、相手に対する深い理解と感謝によって築かれるのです。

3 コミュニケーション力に長けている
偉大なリーダーはコミュニケーション力に長けています。
リーダーは「これがやりたい」と旗に掲げ、部下に対して明確に示すことが必要です。「やりたいこと」は通常ひとりではできません。部下や組織内のスタッフとの協働が必須条件なのです。
リーダーは、ただ旗を立てるだけではなく、その旗に明確なビジョンを描き、それを実現することがどれほど社会にとって有益かつ魅力的であるかを広く伝え、さらにはその旗を見たスタッフ達に「自分もやってみたい」という気持ちを起こさせなければなりません。
旗のもとに集まったスタッフ達に思う存分力を発揮させ、ゴールに向かわせる、いわば統率力です。どんなに素晴らしい夢であっても、リーダーがその夢を実現するための具体的な道筋を示すことができなければ、せっかく集まったスタッフ達もやる気を失い、離れていってしまいます。

また、協働を機能させるためには、情報の共有化を図ることが重要です。情報を共有化することで課題認識も共有化できるので、課題解決のための対策も早くなり、トラブルの未然防止に繋がる等、仕事を円滑に進めることができるようになります。
意識決定を行う際も、経営幹部が同じ情報をもとに議論すれば、結論への到達は早くなり、さらに自由な雰囲気で議論すると隠れていたインフォーマル(非公式)情報も表に出てきます。こうしたことが更に情報の共有を進め、コミュニケーションギャップを埋めることができるのです。
こうした意識決定の場やスタッフとの会議において重要なことは、オープンな議論ができる雰囲気にあるかどうかです。議論の場で責任追及が始まってしまうと、スタッフは口を閉ざし、重要なこと等を隠してしまい、真実の情報は誰もいい出せなくなります。混乱や対立は不正確な情報に基づいて起こるものなので、オープンな議論の場での責任追及は避けなければなりません。

4 自信にあふれている
自信があるリーダーは、威風堂堂としています。威風堂堂とは「態度や雰囲気に威厳が満ちあふれて立派なさま。周囲を圧するような威厳があって、おかしがたいさま」という意味です。「威風」は「威厳があって、おかしがたいさま」。「堂堂」は「立派で力強いさま」です。人は誰しも常に自信を持ち続けることは、非常に難しいことですが、リーダーが部下に対して、自信に満ちあふれた威風堂堂とした態度で、困難なことにも積極的に取り組む姿勢を見せることで、部下は安心とリーダーに対する信頼を持つのです。
部下を勇気づけたり励ましたりといった人を鼓舞する能力や、手助けによってその人が不可能だと思っていたことを可能にする力がリーダーには備わっています。

5 有言実行である
いくら偉そうなことや調子のいいことを言っても、結局何もやらない口だけリーダーでは部下はついてきません。真のリーダーには「(数学的)思考力」と「実行力」の2つの能力が備わっています。思考力は、本来複雑な世の中を複雑なまま理解し、深く考えられる能力のこと。実行力は、考えたこと、決めたことを実行する力です。口だけリーダーには、この実行力がありません。

リーダーと部下間の信頼を醸成するうえで、リーダーが「言ったことを守ること」ことは非常に大切なことなのです。信頼の「信」は人の言葉と書くように、言ったことを守るリーダーは信頼されますが、口先だけでは信頼されません。小さなことでも、大きなことでも言ったことは守るのがリーダーの鉄則です。

6 決断力がある
リーダーの重要な役割のひとつに決断することがあります。
部下はリーダーに対して「大事な場面で決断してほしい」「最後に決めてもらわないと困る」「早く決断しないとチャンスを逃す」「冷静で判断力がある人は、いざという局面に遭遇した時、頼りになる」「トラブルが起きた時に対応できる「とっさの判断力」が必要」等といった思いを持っているのです。
真のリーダーは、やむを得ない状況で難しい決断をすることを恐れません。躊躇したり考え直したりせず、すばやく情報に基づいた決断を下すことができるのです。

7 勇気ある行動をしている
真のリーダーはリスクを取ることを恐れません。リスクが大きければ大きいほど、見返りも大きくなる可能性があるので、チャンスを見極めて、リスクテイクできる勇気を持っています。

部下は「ただ優しいだけでなく、褒めると叱るのバランス感覚をもって欲しい」、「部下に任せ、ミスした時には自分が責任を取るという勇気と覚悟をもって欲しい」、「何かあったときには部下を守れる存在であって欲しい」等、リーダーに「躊躇のない勇気ある行動」を望んでいます。

8 問題解決力がある
仕事に拘わらず、私生活も含めて、人生には解決するのが難しい問題や課題が常に存在しています。ほとんどの人は問題が起こると不平不満を言うだけですが、リーダーの資質を持つ人は決して煩わしいことだと思わず、成長の機会だと捉えています。その上で問題を解決することができる人が、まさに真のリーダーです。

組織運営を進める場では、大きな問題や課題だけでなく細かな問題や課題が数多く起こっています。
こうした問題や課題の原因は、表面化せず背後に潜んでおり、曖昧であり特定が難しいため、既存の解決策では太刀打ちできない「解決策の決め手がない問題や課題」であり、繰り返し起こっていますが、その正体がよくわかりません。そのため、ゆっくりと悪化し続け、根治が難しい状態へと進行します。まさに人体で言う慢性疾患です。
現場のスタッフ達は、このような問題や課題に日々直面し、苦労をしているのですが、どこから手をつけたらよいのか分からず、手をこまねいて見ているのが実情だと思います。結局、手立てが見えないので、リーダーに「なんとかして欲しい」と相談に来るのです。
組織の慢性疾患は、継続的かつ繰り返し起こるものであり、現場のスタッフ達は「辛い状態」にあることは確かですが、たとえリーダーであったとしても、こうした問題や課題の解決はそう簡単にできるものではありません。
困っていることは何か、どうすれば解決するかをスタッフに寄り添い、一緒になって問題や課題解決の原因を解きほぐしていくことはリーダーにもできます。たとえすべての問題や課題が解決に結びつかなくても、リーダーが「辛い状態」にあるスタッフとともに解決策を探すことが大切なのです。

 

《人は感情の生き物》
人には感情があります。よくいわれる感情として「喜・怒・哀・楽」があげられます。この他、驚き・恐怖・嫌悪・諦め・快・不快・幸福感・愛情・嫉妬等、さまざまな感情があり、複雑に交錯しています。
ネガティブな感情が現れるのは、身の危険を知らせるサインだと言われています。例えば、近くに大きな犬がいれば、恐いという感情が現れ、必要以上に近づくことを避けます。ストレスが溜まった時に感じるイライラは、リラックスが必要だということを知らせるサインといえます。
こうした感情をうまくコントロールすることができれば、良い人間関係を築くことにつながります。反対に、自分で感情をコントロールできず、イライラや不安が周りに伝われば、他人にネガティブな影響を与えてしまうことがあります。
他人から言われたことで気分が落ち込み、自分が否定されたと解釈してしまい、人間関係が悪化してしまうこともあります。
怒り・不安などのネガティブな感情は、本能から生み出されています。ネガティブな感情を否定せず、自分本来の思いであることを受け入れた上で、ポジティブな感情へと変化させるための行動に移ることが必要となります。

また、論理的になることや感情に囚われないことが社会人の常識とされていますが、物事を考え、判断する際、正しい判断を下し、最善の行動をとり、変化を乗り越え、成功するためには感情は絶対不可欠なもののようです。

 

《人は心なり~人間の本質を探る~》
人には、強さと弱さ、楽しさと悲しさ、信頼と裏切り、仲間と孤独、出会いと別離といった表と裏の関係が常にあります。多くの人はこうした二極の振幅の中で、揺れ動きながら人生を送っているのですが、なかなか人は自分の弱みや負の面を他人に見せたくないものです。なので、見えている表の面だけでなく、隠れている裏の面も同時に見てあげなければ、その人の本質は分からないものです。
挫折を知らない人に、人の弱さや悲しさ、裏切りの痛みや孤独の深さを知れといっても、経験がない以上、本当に理解することはできません。多くの失敗や挫折を経験しているリーダーなら、そうした人の持つ裏の感情にも思いを致し、完全には理解できなくても、より深く人の心を理解することができると思います。
大きな失敗や挫折を経験しないままリーダーとなった人は、どうすれば人間の感情や心理を知ることができるのでしょうか。それは、日々の人間観察を深め、疑似体験することで可能になると思います。どんなに強い人にも必ず弱点はありますし、周りからダメな人間と烙印を押されている人にも必ず秘めた能力や隠れた才能があるものです。他人の噂や評価に惑わされずに、いつも自分の目で周囲の人たちを観察し、表面には見えてこないその人の本質を探る努力を積み重ねることで、より人の気持ちに対する感度を上げることができると思います。

一方、上昇志向の強い人は、組織内で力のある人、権力を持っている人ばかりを見たり、そういう人に近づこうとしたりする傾向があります。しかし、そういう上だけに注目していても人の本質を見極めることはできません。リーダーは、立場の弱い人、今は環境に恵まれていない人、あまりやる気のない人、組織にはマイナスと思える人達とも積極的に接して、彼らの本音を知ることが大切です。それは自分自身を磨くことにもつながり、彼らのやる気を引き出すことにもつながります。人は人によって磨かれる存在だからです。

投稿者プロフィール

矢野 覚
矢野 覚
LINK財務経営研究所 代表 
1982年 4月 国民金融公庫入庫
1993年 4月 公益法人日本生産性本部経営コンサルタント養成講座派遣
2015年 3月 株式会社日本政策金融公庫退職
2015年10月 株式会社山口経営サポート(認定支援機関)入社
2019年12月 同社 退社
2020年 2月 LINK財務経営研究所 設立
2022年 7月 ドリームゲートアドバイザー
中小企業金融の現場で、33年間、政府系金融機関の担当者~支店長として事業資金融資の審査(与信判断)や企業再生支援、債権回収業務に従事するとともにそれに関する稟議書の起案・決裁に携わっていました。
その後、中小企業の財務責任者として資金調達、経営改善業務をお手伝いさせていただき、短期間で赤字体質の中小企業を黒字体質に改善するコトができました。
こうした経験を活かして、「財務の力でヒトとカイシャを元気にする」ために、小規模事業者・中小企業の皆さまのお役に立ちたいと考えています。

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