第25回 組織崩壊の予兆とその防ぎ方

マネジメント

「こんにちは、かんれき財務経営研究所の雄蕊覚蔵です!」第25回は、「組織崩壊の予兆とその防ぎ方」について、考えてみたいと思います。前回、今回と少しネガティブなタイトルですが、組織運営上、考えておかなければならないことだと感じましたので、取り上げることにしました。

雄蕊が関わっているある中小企業で、ここ半年くらいの間にスタッフの退職が相次ぎました。それも中途採用で入職し、わずか3か月程度で辞めてしまうのです。雄蕊自身、これは徒事ではないと感じていましたが、はっきりした原因が掴めず、手を拱いていました。

そんな折、退職が決まっているあるスタッフから「あまりにも腹に据えかねる」と雄蕊のところに話がしたいと申し出がありました。
話を聴いてみると、そのスタッフから開口一番「この組織はぐちゃぐちゃだと感じている。今のままだといくらスタッフを補充しても優秀な人財から辞めてしまうと思う。経営トップの資質等、組織が抱えている構造上の問題について外部の目から見てどう感じているのか」と質問されました。雄蕊自身もこの組織について、話を聴いたスタッフと同様に感じる部分もあり、組織の立て直しをするためにはどうすればよいか悩んでいたので、今回のテーマについて改めて深堀りすることにしました。

《組織崩壊の予兆》
「スタッフの相次ぐ退職(特に優秀なスタッフの退職)」
「社内における情報共有が不十分となり、食い違いや誤解が増えてうまく伝わっていない」
「部門内や部門間のチームワークの乱れ、なぜか対立が増えて雰囲気が悪化」
等々、チョットヤバイな、組織がうまく回っていないなと感じたら、それは、組織が崩壊し始めている予兆かもしれません。そう感じたら、早めに状況を改善するための手を打ち、崩壊を食い止めなくてはなりません。

崩壊しやすい組織に見られる予兆について考えてみます。

1 経営トップの品格の欠如
経営トップには、部下の忠誠心を醸成する品格が求められますが、それが欠如していると、組織に対する統制が効かなくなります。
経営トップからみれば、スタッフ一人ひとりは、大勢のスタッフの中の一人なのかもしれませんが、スタッフ一人ひとりからみれば、経営トップは基本的に一人なので、スタッフ全員の注目の的です。各スタッフは、経営トップの一挙手一投足を注視し、経営者の本質を見抜き、経営者の品定めをしています。自社の経営トップは、「信頼できる人物か?」「経営者本位(自己中心)ではなく、自分達スタッフのことを気遣い、スタッフ本意で物事を考えてくれているのだろうか?」…経営者に品格がないとスタッフの自社企業に対するロイヤルティが著しく低下し、そうした思いが社内に蔓延してしまうと企業崩壊に繋がってしまいます。

2 異端児(スーパースターや問題スタッフ(トラブルメーカー))の出現
社内に目立って異質なスタッフが登場することも危険信号です。異質なスタッフとは、何でもこなす優秀なスーパースターかもしれませんし、前代未聞の問題スタッフ(トラブルメーカー)かもしれません。こうした異質な人物の登場は、その者たちが必ず組織を崩壊させるとは限りませんが、要注意です。
例えば、スーパースター級のスタッフと他のスタッフが、お互いにライバルとして切磋琢磨したり、あるいはお手本として自身の成長に繋げたりするのであればよいのですが、スーパースター級のスタッフに仕事を丸投げにしたり、頼り切ってしまったりして他のスタッフがやる気を無くしてしまうことも充分に考えられることなのです。
実際の現場で、こうしたスーパースターが登場するまで、緊張感を持って役割を果たしていた部門管理者の緊張の糸が切れたなと感じる場面に遭遇しています。
また、こうしたスタッフの意識低下は、徐々に職場に広がっていき、他のスタッフもスーパースターに任せてしまおうと熱意を失ってしまう可能性が高まります。一方で、スーパースターに仕事や責任が集中しすぎてしまい、スーパースターがいなくなると組織が機能不全に陥ってしまう危険性が増してしまいます。
問題スタッフについては、そのスタッフが様々なトラブルを引き起こすと、組織としてはその解決や対応のために費やす時間が増え、徐々に疲弊していきます。最悪の場合、問題スタッフに感化されて、まともだったメンバーまでが問題を起こすようになるケースも考えられます。
いずれにしても、こうした異質なスタッフの存在は、周りのスタッフや組織全体の雰囲気を悪くする可能性を秘めているのです。

3 情報伝達や指揮系統の乱れ
組織が肥大化していくと、新しい部署や業務が加わってきます。場合によっては、スタッフの数も増えます。中小企業においては、人員を増加させることが難しいので、限られた人材で賄うために兼務がどうしても増えることになるケースのほうが多いかもしれません。
その過程において、以下のような現象が起こることがあります。
・情報や指示が伝わりづらくなる
・「誰が誰に指示を出すのか」という指揮系統が乱れる
・「この仕事は誰の担当か」という職域があいまいになる
こうした事象もまた、組織崩壊につながる大きな要因です。
「生産部門のリーダーはAの仕事をしろと言ったが、管理部門のリーダーはBの仕事を優先しろと言う」、「新しい業務を誰が担当するのかきちんと決めないまま、何となくスタッフCがやっているがCの業務がオーバーフローしている」等の混乱が組織内に生じるからです。こうなると、組織秩序は失われ、メンバーの一体感や帰属意識も薄まっていき、組織が脆弱化していきます。

4 離職率が上昇(特に優秀なスタッフが離職)
スタッフが次々と退職し、離職率が上がってきたらそれも要注意です。
離職率が高い組織において、退職するのは優秀な人が多いと言われています。優秀な人は、問題意識も高いので、経営トップの品格や組織の将来性等々に関して他のスタッフより感度の高いアンテナを張り巡らせています。一方で、優秀な人には、業務が集中して負担が大きくなりがちなため、不公平感や「この組織ではこれ以上成長できない」という閉塞感が生まれ、「ここを離れたい」と感じさせてしまう面もあります。
優秀であれば、転職先も見つかりやすいので、この組織にしがみつく理由はありません。
そうなると、優秀な人が去ってやる気のないメンバーが残されます。
新しい人材を採用しても、優秀な人が組織を見放した原因も解決されていなければ同じ事象が繰り返されます。また、現場で正しく教育・指導してくれる人がいなくなってしまったので人材育成もうまくいかず、組織はますます停滞してことになります。

5 社内で対立や不信感が蔓延
組織の中にスタッフ同士の対立構造や不信感が蔓延するようになったら、もう末期症状です。さまざまな兆候が水面下で進行し、ネガティブな雰囲気として表面化しているからです。
スタッフは業務よりもそうしたネガティブな面ばかりに気を取られ、成果は上がらなくなります。組織にはもう一体感や連帯感はなく、崩壊目前といえます。

6 経営トップに意見する側近等が不在
組織崩壊の予兆の第1項目で「経営トップの品格の欠如」を挙げました。中小企業では、経営者一人で意思決定をするケースが大半です。しかし、経営者に「真っ当な経営判断」ができる能力が備わっていなければ、誤った意思決定をしてしまう可能性が高まります。雄蕊が、中小企業金融の現場でお会いしてきた経営者のなかには経営管理やマネジメントについてしっかり身につけておられる方は少ないと実感しています。
そう考えると、ある程度、経営の知識やスキルを持った「ナンバー2」の存在が重要になります。それもしっかりと経営者に対して意見の言える「ナンバー2」が!
経営者の行う意思決定には「重み」があります。なかなか一般のスタッフや管理者ではその決定に対して意見しづらいものです。経営者の取り巻きが皆、経営者に意見できず、イエスマンばかりだったら、それは危険な兆候です。
一般的に、イエスマンには、自分の意見を言えず強い者に従い、責任は追わずにいい目だけは見たいという人が多いと感じています。組織のなかにそういうある意味保身ばかりを考える人が増えるのは、次のような根本的な問題が組織に潜んでいるからだと思います。
・スタッフのモチベーション・やる気が失われている
・自分の意見を主張するとまわりから叩かれる、或いは主張しても取り上げてもらえない
・仕事の成果が正しく評価されず、経営者や管理者、リーダーの感情や意向に左右される
・評価はされないのに、ミスがあれば責任は追及される
等の可能性が考えられます。
経営者等がこれらの問題に気づかず、イエスマンとして経営者に傾倒した言動を続ければ、やがて組織は崩壊すると思われます。

《組織崩壊の防ぎ方》
雄蕊は、組織崩壊を防ぐ即効性のある対応策はないと思っています。それは、「組織崩壊の予兆」で紹介した項目のほとんどが「人」に関わる問題だからです。
雄蕊は、経営とは「数字とお金と人のコントロール(マネジメント)」と定義づけていますが、「数字」と「お金」は意思を持っていないので、自在にコントロールできますが、「人」は感情の動物であり、一人ひとりに個性がありますので、十把一絡げにコントロールしようとしてもうまくいくはずがないからです。
だからと言って指をくわえてみている訳にはいきませんので、その対応策について考えてみます。
対応策で最も重要なことは、「経営者の品格」だと思います。
ここでいう「品格」は「モラル=善悪や正邪を見極めるための普遍的な基準」と言い換えることもできます。
「経営者の品格=モラル」は、企業経営の成功に不可欠な要素です。
まず、何より従業員(スタッフ)は、経営者や管理者の言動を注意深く見ているからです。「経営者が従業員のことを把握するのに3年かかるが、従業員は経営者のことを3日もあれば評価する」と言われています。そのくらい従業員(スタッフ)は、経営者のことを注視しているのです。このことを忘れてはいけません。
また、経営者が高貴な品格(モラル)を持って企業経営を続けていくことで、社会や地域、そして取引先等のステークホルダーからの信頼も厚くなります。「経営者の高貴なモラルが信頼を生み出し、信頼が新しい仕事を生み出す」という成長発展のスパイラルが創り出されるのです。つまり、経営者の品格(モラル)が、企業の盛衰を決定付けるといっても過言ではありません。
経営者は、いつ何時、何処の誰に見られているか分かりません。実際、この雄蕊も組織の長を務めていた時代には、休日等OFFタイムを含めて、常にこのことは意識していました。

経営者の威厳や風格も、品格(モラル)の有無で随分と変わってくるものです。経営者は、自身の正当性を主張する前に、自身の品格(モラル)が下品であるか否か、常に自分の足元を客観視し、自分を正す努力を忘れないことが大切なのです。
特に組織の内部においては、経営者自身のことより、従業員(スタッフ)に寄り添う気持ちを明確に示してあげることが従業員(スタッフ)の組織に対するロイヤルティの向上に繋がると考えています。

雄蕊は、スタッフが自社企業に対してのロイヤルティを高めるうえで不可欠なことは、マズローの5段階欲求説の第4段階に位置する承認欲求(尊重欲求)を充たしてあげることだと考えています。承認欲求とは、「他者から尊敬されたい、認められたいと願う欲求」のことです。この欲求が妨害されると、劣等感や無力感などの感情が生じてしまいます。
スタッフ一人ひとりのこの欲求を満たすために経営者が行わなければならないことは、難しいことではないと雄蕊は考えます。最も大切なことは、スタッフ一人ひとりとコミュニケーションをしっかりとること、気にかけてあげることだと思います。フェイス・トウ・フェイスで会話をすること、スタッフからの電子メールやLINE等に対して、「既読スルー」しないで必ず返信すること等を実行することが「いの一番」だと思うのです。

「人」に関すること以外では、次のような対応策が考えられます。
1「事務手続き」等の簡略化
・決裁や事務手続きはできるだけ簡略にする
・必要書類の数を減らし、事務作業を最少化する

2 会議やミーティングの効率化
・会議ごとに議題と「今日は何を決めるか」というゴールを定める
・議題については、あらかじめ出席者に周知し、意見をまとめる等の準備する時間を設ける
・「議題には全員が自分の意見を述べる」「反論する際にはかならず解決策・対案も提示する」等、会議のルールを決めておく

3 指揮系統を整理し的確な指示が出せる仕組みの構築
・組織の全員が載った組織図を作成する
・組織図にのっとって指揮系統を整理し、そこから逸れた指示はしない・従わない
・各人の職域を明確に決め、それ以外の業務はさせない・しない
・「誰の仕事かわからない」という業務をなくすため、すべての業務に担当者を決める
・指示の出し方、内容はわかりやすく、必要であればマニュアル作成などで明文化する
・以上を組織の全員が守る
指揮系統、指示の出し方、職域の区別などをきちんと整理し、次のことを明確に定めることが必要です。
・指揮系統:誰が誰に指示を出すのか
・職域:この人が担当する仕事は何か
こうした仕組みがないと、組織は混乱して崩壊へと進んでしまいます。

4 納得できる評価基準の策定
・評価項目と評価基準を明確に定めて組織内全員に公表する
・評価する側に「公平な評価をする能力があるか」を見極め、能力不足であれば教育する
・同僚や部下なども含めた多人数からの評価を集める「360度評価」なども取り入れ、公平性を担保する
・必ず個人面談を実施し、項目ごとの評価やその理由などをフィードバックする

先日、あるスタッフから社内メールで、悩みごとの相談を受けました。雄蕊には、具体的な解決策がその時点で浮かばなかったのですが、以前から相談を受けていたことも含まれていたので、「ずっと気になっていました」と返信しました。後で雄蕊に近しいスタッフから「相談をしたスタッフは、上位の立場の者が自分のことをずっと気にかけていてくれたことが嬉しい」と言っていたと聞かされ、改めてスタッフに寄り添うことの重要性を再認識した次第です。

投稿者プロフィール

矢野 覚
矢野 覚
LINK財務経営研究所 代表 
1982年 4月 国民金融公庫入庫
1993年 4月 公益法人日本生産性本部経営コンサルタント養成講座派遣
2015年 3月 株式会社日本政策金融公庫退職
2015年10月 株式会社山口経営サポート(認定支援機関)入社
2019年12月 同社 退社
2020年 2月 LINK財務経営研究所 設立
2022年 5月 健康経営アドバイザー
2022年 7月 ドリームゲートアドバイザー
中小企業金融の現場で、33年間、政府系金融機関の担当者~支店長として事業資金融資の審査(与信判断)や企業再生支援、債権回収業務に従事するとともにそれに関する稟議書の起案・決裁に携わっていました。
その後、中小企業の財務責任者として資金調達、経営改善業務をお手伝いさせていただき、短期間で赤字体質の中小企業を黒字体質に改善するコトができました。
こうした経験を活かして、「財務の力でヒトとカイシャを元気にする」ために、小規模事業者・中小企業の皆さまのお役に立ちたいと考えています。

コメント

  1. 山下 平 より:

    お世話になります!
    自身の本社勤めは、組織も大きく枝葉も複雑な為、色々な不具合が生じます。
    今回のブログはまさにピンポイントで参考となる内容でした。
    再度熟読させていただきます。
    ありがとうございます!

    • 矢野 覚 矢野 覚 より:

      ご愛読ありがとうございます。
      組織運営は、人に関する課題解決が一番難しいと感じています。
      私なりにそうした視点のテーマも取り上げようと思っております。
      お気軽にご質問等ございましたら、教えていただけるとありがたいです。
      引き続きよろしくお願いいたします。

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