第81回 能力開発の方程式:能力=知識×スキル×モチベーション

スキルアップ

「こんにちは、かんれき財務経営研究所の雄蕊覚蔵です!」第81回は「能力開発の方程式:能力=知識×スキル×モチベーション」と題して、「個人の能力開発」について考えてみたいと思います。

 

以前、このブログでも書いたことがあるのですが、金融機関勤務時代に10年間、課長職を務めていました。同期の優秀な仲間が、次々次長に昇進していく中で、何故か課長のまま、「何でやねん」と腐ることもありましたが、40歳で課長になったときと50歳で課長を長く経験したときでは、課長として見える世界が変わったことに気付きました。
つまり、課長として期待されている役割を遂行する能力が格段に向上しているのではないかと思ったのです。そのとき、存在意義は「人を育てること」だと確信しました。それで、今の仕事を始めたり、このブログを書き始めたりしたわけです。

ある中小企業では、組織改革が遅々として進まず、あの手この手を考えているのですが、どれもうまくいかない。そこで、中間管理職の能力開発を促進するためのワーキンググループを立ち上げて、中間管理職の職務能力の向上に取り組むことを考えました。

こうした考え方のベースにあるのは、比較対象にはならない雲の上の存在ですが、稲盛和夫氏のフィロソフィです。

人生の方程式:「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」
まず、京セラ、KDDIを創業し、日本航空を再建した平成のカリスマ経営者の稲盛和夫氏の「人生の方程式」を紹介します。
人生の方程式とは「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」という考え方で、人生を成功させるためには「考え方」という要素が特に重要だと説いています。
なぜ能力や熱意よりも「考え方」なのでしょうか。稲盛氏の著書『活きる力』から紹介します。
人生は、考え方、熱意、能力という3つのファクターの積で表せるのではないか。
能力は、頭の良し悪しのみならず、肉体的な能力や健康状態も含む。
これは、もともと生まれながらにして自然から与えられたものなので、後天的に変えられるものではない。この能力というものは、人生にとっても仕事の面においても、非常に大きなファクターになる。
熱意は、偉大なこともみんな一歩一歩の積み上げでしかできないのだから、誰にも負けない努力をしよう、一生懸命頑張ろう、そういう熱意を持つことが大切。熱意を持つことは、能力と違って後天的に自分の意志でできる。
能力と熱意には、ゼロからプラス100点まである。
能力がないから、一生勝てないのか。いや、そうではない、一生懸命努力すれば、つまり熱意があればやっていける。
それが「能力×熱意」である。
考え方にはネガティブなマイナスの考え方もあるから、マイナス100点からプラス100点まである。
考え方がマイナスであれば、たとえそれが些細なマイナスであっても、積でかかるから、人生の結果は全部マイナスになってしまう。
心の座標軸にどういう考え方をすえるのかによって、人生はガラッと変わってくる。

稲盛氏がこの持論を社員に伝えたとき「ただ働けばいいはずなのに、なぜ考え方まで強制されなければならないのか、いろんな思想があったっていいではないか」と反発されたそうです。
確かに、いろんな思想を持つのは自由。そのかわり、どんな思想を持とうと、その結末は自分自身で摘み取らなければならない。だからこそ、人生の先輩として、こういう考え方を持つべきだと稲盛氏は説くのだと言っています。

どの山に登りたいのか、つまり、どういう人生を送りたいのか、どういう会社経営をしたいのか、それに応じた考え方、フィロソフィが必要なのです。
ですから「稲盛さんはこんな考え方が大事ですよと言うが、それは、京セラという会社をつくるのに必要な考え方であって、自分はそれほどの会社にしようとは思ってはいないから、もっと程度の低い考えでもいいだろう」と思うのは結構です。
哲学はなるべく次元の高いものであるべきだとは思いますが、それは立派な人生を送りたいと思うからこそ必要なのであって、もっとええかげんな人生で終わってもいいと思うなら、あまり次元が高くなくてもいい。
自分が過ごそうと思う人生に応じた考え方を持つことが大切なのです。 

能力開発の方程式:能力=知識×スキル×モチベーション
能力向上を図るためには、知識、スキル、モチベーションの3つの要素が重要であると思っています。それぞれについて見ていきます。
「能力」の定義
「ものごとを成し遂げられる力」
「法律用語で、ある事柄に必要とされる資格のこと」
「評価されている性質」

「スキル」の定義
「訓練によって身に付ける、特殊な技能や技術」
「手腕」「技量」「器用さ」「技能」「技術」「わざ」

「知識」の定義
「ある事柄に対して知っている内容」
「あるものごとについて認識・理解すること」
「考える働き」
「自分で理解する」

「モチベーション」の定義
「動機(づけ)」
「刺激、やる気」
「人が行動を起こす際の要因や目的、きっかけ」

「能力」は「人が生まれつき備え持っている、ものごとを成し遂げられる性質のこと」であり、「スキル」は「人が何度も練習することにより身に付けたり、開発していく力のこと」、「知識」は「ある事柄について役立つ、自分で理解している情報のこと」、そして「モチベーション」は「動機付けという意味で、行動を起こすためのきっかけや原因、目的のこと」だと定義づけることができるのではないでしょうか。

能力は、一人ひとりが先天的に持っているならば、それを向上させることができるのだろうかという疑問にぶつかりました。しかし、各自が持っている能力を最大限に引き出せる方法が見つかれば、自分で気付いていない潜在的な能力を発揮させることは出来るのではないかと考え、稲盛氏の人生の方程式をマネして、能力開発の方程式を思いつきました。

能力開発の方程式:能力=知識×スキル×モチベーション

能力も知識もスキルもモチベーションも視覚で捉えることができる有形物ではありません。私はよく分りませんが、精神医学上の判定に用いる検査や入社試験等で実施する適性検査により数値化することができるのかもしれませんが、基本的には、素人では計ることができないと考えています。我々ができることは、せいぜいどれだけ勉強に時間を費やしたか、OJT等によってスキル向上を図ったか、資格試験に合格したかくらいしか計るものはないかもしれません。

看護師のキャリア支援、能力開発
ある大きな病院の看護師の能力開発・キャリア支援体制です。
キャリア支援・能力開発の参考にできればと思ったので紹介します。

「看護局教育理念」看護の技術と心を伝えたい
院内教育の目的
1 専門職として必要な知識・技術の向上に努め、根拠に基づいた看護能力を養う
2 対象のニーズを的確に把握し、個別性にあった看護を提供できる能力を育成する
3 主体的に能力開発できる看護師を育成する
4 専門職に求められる態度や人間性を養うクリニカルラダー
はしごを一段ずつ上がるように、段階的なステップアップを目指します。
「クリニカルラダー」とは、臨床現場における看護実践能力と、専門役割を階段的なレベルで規定したものです。このクリニカルラダーに基づいて、看護師一人ひとりのキャリア開発を行っています。クリニカルラダー運用の目的
看護師のクリニカルラダーは看護師の能力開発・評価のシステムの1つであり、看護師の看護実践能力を段階的に表し、各段階において期待される能力を示し、到達度によって看護師の能力が示されるシステムである。施設の規模、機能、地域における施設の役割、理念から目指す看護師像を想定し、看護師の能力に応じた看護実践に関する到達目標や基準を設定し、それぞれの看護師に対する支援や方法を決めて運用している。クリニカルラダーの構成
2016年 日本看護協会はJNAラダーを公表した。JNAラダーでは、看護の核となる実践能力を「看護師が倫理的な思考と正確な看護技術を基盤に、ケアの受け手のニーズに応じた看護を臨地で実践する能力」とし、4つの力と5つの習熟段階で構成している。

モチベーションを高める
幸せな人生を送ること、企業経営をうまく進めていくこと、人財を育成すること、自分自身を成長させること・・・いずれにしても基本は、その心の持ちよう、考え方だと思います。よく例えられる事例として、いくら水を飲まそうと水飲み場に連れて行っても、当事者が、喉が渇いていると思わなければ、無理矢理水を飲ますことはできません。
稲盛氏もいうように「考え方」や「モチベーション」が確立されていなければ、周囲がいくら組織のために、本人のためにああしようこうしようと思ったところで何も変わらないのです。
ただ、そういう考え方に変えることやモチベーションを高めることは出来ると思います。

モチベーションが高い人の特徴しては
1 集中力が高い
2 新しいことにチャレンジする
3 粘り強く簡単には諦めない
4 周囲に影響し職場が活性化する
等をあげることができます。

では、どうすればモチベーションを高めることができるのでしょうか。

目標の明確化と動機付け
何を目指して欲しいのか、何を期待しているかを明確に伝えるとともに、その意義、目先の目標だけではなく、中長期的にどう成長して欲しいという期待や何を評価しているかを伝えることが大切です。

仕事への貢献度合いの提示
担当業務に対する貢献度合いを提示することも大事です。今できていることを評価し貢献度合いを伝えることも必要なフォローです。人は褒められる、評価されると嫌な気分にはなりません。見てくれている人がいることで張り合いを持ち、より頑張れるということです。

配属や配置換えの工夫
配属や配置換えを行うことも方法の1つです。より成果や成長を期待できる部署への異動により新たなチャレンジ精神が生まれ前向きとなって業務を担当することも可能になります。配属先や配置換えはあくまで、適材適所の視点から、よりスタッフを成長させることを目的に検討することが重要です。

能力開発やスキルアップの場を提供する
外部セミナーや社内で実施される研修に参加する機会を提供し、新たな気付きを生ませる方法も効果的です。社内研修の場合には、違う部署の方とのディスカッションを通じて自分の業務を再認識する可能性が生まれます。日々の業務から離れ自分や業務について振り返ることは、新たな成長、気付きを生むよい影響を与えることに繋がります。

基本はコミュニケーション
個人としての考え方や思想は自由です。それをとやかく言うつもりはありません。しかし、組織のなかで管理職等の職責を担っているのであれば、職責を果たす上での考え方や思想は組織としての考え方や思想に揃える必要があります。そうでなければ組織としての統制がとれません。
個人として自身の能力を高めたい。こういう意識の高い方は、企業にとってはウェルカムです。また、組織として期待する役割発揮に向けた育成も必要です。
能力開発の基本は、やはりコミュニケーション。対話を通してモチベーションアップを図ることが効果的な人財育成や能力開発のためには必要なことなのです。

投稿者プロフィール

矢野 覚
矢野 覚
LINK財務経営研究所 代表 
1982年 4月 国民金融公庫入庫
1993年 4月 公益法人日本生産性本部経営コンサルタント養成講座派遣
2015年 3月 株式会社日本政策金融公庫退職
2015年10月 株式会社山口経営サポート(認定支援機関)入社
2019年12月 同社 退社
2020年 2月 LINK財務経営研究所 設立
2022年 5月 健康経営アドバイザー
2022年 7月 ドリームゲートアドバイザー
中小企業金融の現場で、33年間、政府系金融機関の担当者~支店長として事業資金融資の審査(与信判断)や企業再生支援、債権回収業務に従事するとともにそれに関する稟議書の起案・決裁に携わっていました。
その後、中小企業の財務責任者として資金調達、経営改善業務をお手伝いさせていただき、短期間で赤字体質の中小企業を黒字体質に改善するコトができました。
こうした経験を活かして、「財務の力でヒトとカイシャを元気にする」ために、小規模事業者・中小企業の皆さまのお役に立ちたいと考えています。

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