第73回 【2000字commentary】事業計画に魂を入れよう!

中小企業経営

「こんにちは、かんれき財務経営研究所の雄蕊覚蔵です!」取り上げるテーマにもよりますが、今回からテーマ毎に2000字以内にコンパクトにまとめてお伝えする記事も取り入れてみようと思います。少しこれまでと違ったブログ記事への挑戦です。

 

「事業計画」とは、何のために策定するのでしょうか。
お金を借りるために金融機関に提出することが目的の「絵に描いた餅計画」?
いえいえ。たとえば長期事業計画には今後10年間の損益計画が盛り込まれています。長期事業計画を策定したときから、10年間はこの計画に基づいて動いていくことが必要なのです。
そういう目的の計画ですから、策定段階ではしっかり時間をかけて中身を詳細に詰めていかなければなりません。また、策定した事業計画に沿って、計画を実行していくことが大切なのです。しかし、なかなか現場では難しい面もあると感じています。

事業計画は、長期、中期、短期、年次、月次、週間、日々と策定する期間によって大別することが出来ます。長期事業計画は10年後のあるべき姿(到達点)を示したものであり、そこに辿り着くために小刻みに計画をブレイクダウンして実効性を担保しているのです。
事業計画には、その進捗、達成度が明確になるように数値計画を盛り込むことが不可欠です。また、立てた数値計画を達成するための行動計画(アクションプラン)も外せません。

経営環境は、日々刻々と変化しています。コロナリスク、ウクライナ情勢、これらの影響を受けた円安の進行等、VUCA時代と言われる今日、変化のスピードも劇的に速くなっていますし、想定外のことが起きる可能性もより高くなっています。なので、事業計画はそうした変化に併せて見直すことも必要です。
こうした不測事態、想定外の事象が発生する確率が高まっている現代の経営環境では、将来のあるべき姿、目指すべきゴールに向けて、より具体的な行動計画を5W1Hで策定し、小刻みにモニタリングし、見直しをかけながら進めていくことが環境変化に即応できる「強い組織」に繋がると思っています。

「仏作って魂入れず」という諺はご存知だと思います。その意味は「仏像を作っても魂を入れなければ、単なる木や石と同じである」転じて「せっかく良いものを作っても、大事なものが抜け落ちていれば作った努力も無駄になる」ということです。
事業計画もこの諺と同じです。どんなに良い事業計画を作っても、魂が込められていなければ機能しません。「絵に描いた餅」となってしまうのです。
事業計画に魂を入れるとは、定期的な事業計画の進捗確認と環境変化に合わせた計画の見直しを図ることです。
事業計画に魂を入れる作業の原点は、経営者や経営幹部同士の日々の雑相(雑談・相談)の繰り返しです。日々の雑相のなかに、計画の進捗状況や進めるための課題や新たな戦略・戦術を決めるヒントがあると思っています。形式張った会議で行うのではなく、裃(かみしも)を脱いで雑相出来る場を数多く持つことが重要なのです。

特に背伸びした事業計画を策定した場合は、雑相も中途半端では成功しないという確信があります。だから、ホントに事業計画に魂を入れることが出来る人、経営者の身になって事業計画必達の覚悟が共有出来る人と現場業務を定刻で終えた後にしっかり集中して雑相できる時間を確保することが大切だと思っています。これが出来ないようでは、どんなに立派な事業計画を策定しても、結局「絵に描いた餅」計画以上にはならないと確信しています。

ある関与先の経営幹部が「この組織はなかなか様々なことが決まらない。その理由は、経営者や管理職等、意思決定に関わる人の考え方の方向がバラバラだからです」
意思決定をする者達の考え方の違いから様々なことが決まらない、変らない、動かないならば、明確な方向性を示して、同じゴールを目指す仕掛けを作る必要があります。その方向性を示す羅針盤が事業計画です。
このブログでも経営者は「旗を立てて、方向性を明確に示せ」とお伝えしてきました。これを分りやすく言うと「事業計画を立て、その達成に向けて、計画どおりに人を動かせ」ということです。

中小企業の現場に入ってよく分ったことなのですが、経営者は業容拡大のことで頭が一杯、なかなか広い視野で企業全体を俯瞰する余裕がない。認定支援機関等の経営改善計画策定のプロがどんなに素晴らしい事業計画を策定しても現場に実行する主人公がいないので、とどのつまり、宝の持ち腐れに終わってしまうケースが多いと感じています。
折角(場合によってはコンサルタント等の専門家に高いフィーを支払って)策定した事業計画なのですから、その中身をしっかり腑落ちさせて実行に移していきましょう。

「強い組織」の第1歩は、事業計画の策定と事業計画に魂を入れることです。経営者、経営幹部は、事業計画策定の目的と実行性を担保することの必要性をもう一度しっかり考えて、しっかり雑相(コミュニケーション)しながら、経営に取り組んでみましょうよ。

投稿者プロフィール

矢野 覚
矢野 覚
LINK財務経営研究所 代表 
1982年 4月 国民金融公庫入庫
1993年 4月 公益法人日本生産性本部経営コンサルタント養成講座派遣
2015年 3月 株式会社日本政策金融公庫退職
2015年10月 株式会社山口経営サポート(認定支援機関)入社
2019年12月 同社 退社
2020年 2月 LINK財務経営研究所 設立
2022年 7月 ドリームゲートアドバイザー
中小企業金融の現場で、33年間、政府系金融機関の担当者~支店長として事業資金融資の審査(与信判断)や企業再生支援、債権回収業務に従事するとともにそれに関する稟議書の起案・決裁に携わっていました。
その後、中小企業の財務責任者として資金調達、経営改善業務をお手伝いさせていただき、短期間で赤字体質の中小企業を黒字体質に改善するコトができました。
こうした経験を活かして、「財務の力でヒトとカイシャを元気にする」ために、小規模事業者・中小企業の皆さまのお役に立ちたいと考えています。

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