第69回 健康経営と予防医療

中小企業経営

「こんにちは、かんれき財務経営研究所の雄蕊覚蔵です!」第69回は「健康経営と予防医療」と題して、最も重要な経営資源である「人」の健康について考えてみます。

 

《還暦過ぎて早3年》
この4月で63歳になりました。幸せな60代を目指して還暦を迎えてからもう3年も過ぎてしまいました。今もって現役として社会活動に従事していますが、若い頃のようには思い通りにいかないことも増えてきました。このブログも月1回の更新しか出来なくなっています。
一方で、65歳引退を決めたと宣言しても70歳まで現役として続けて欲しいといった声も頂いています。非常にありがたいことですし、気力・体力・知力の続く限りは「感謝と恩返し」のつもりで出来ることはお手伝いしようと思っています。
雄蕊が在籍していた金融機関には多くの職員が在籍しており、定年になれば、ルールに基づいて退職を余儀なくされます。雄蕊の代わりはいくらでもいるのです(雄蕊は定年を待たずドロップアウトしましたが・・・)。雄蕊が辞めたところで組織としては何の支障もないのです。しかし、中小企業は違います。人手不足は恒常的な課題ですし、質の面からもなかなか代わりがいないのが現実だと実感しています。
自身の経済的な面もあると思いますが、なかなか引退させてもらえない重鎮ポストの方も多いのではないでしょうか。

第11回のブログで健康経営を取り上げましたが、その内容とダブルこともありますが、改めて健康経営と予防医療について考えてみようと思います。

 

《健康経営アドバイザー》
健康経営アドバイザーという認定制度があることをご存じですか。
健康経営の必要性を伝え、実施へのきっかけを作る人材を育成するための研修プログラムです。経済産業省からの委託を受けて2016年に誕生し、東京商工会議所が実施している研修です。これまでに延べ3万人以上が受講しているようです。

雄蕊もこの大型連休で受講して健康経営アドバイザーの認定を受けました。

以下、東京商工会議所HPから抜粋してみました。
本研修はいつでもどこでも受講できる環境を整えた「e-learning」研修になっています。修了し、効果測定にて一定の基準に達した方は、「健康経営アドバイザー」として認定され、認定証がダウンロードできます。
東京商工会議所は、健康経営に取り組む中小企業に対して、課題抽出・改善提案・計画策定等の実践支援を担う専門人材を養成する「健康経営エキスパートアドバイザー」研修を実施しています。
健康経営エキスパートアドバイザーの役割は、健康経営に取り組む上での課題を抽出・整理した上で、その課題解決に必要な取り組みを企業等に提案するとともに、その実践を具体的にサポートすることです。
健康経営エキスパートアドバイザーの受講資格は、以下の(1)(2)の両方を満たし、知識確認テストの受験およびワークショップへの参加が可能な方になっています。
(1)健康経営アドバイザー認定者(認定期間が有効の者に限る)
(2)所定の有資格者または所定の実務経験者
【所定の有資格者】
(経営・労務に関する資格)
・中小企業診断士
・社会保険労務士
(医療・保健に関する資格)
・医師
・保健師、看護師
・労働衛生コンサルタント
・管理栄養士
・健康運動指導士

【所定の実務経験者】
申告フォーム内の「実務経験」欄にご記入ください。以下の実務に概ね1年以上関わっていたことを条件とさせていただきます。
・「健康」「医療」「保健」に関する実務
医療保険者・医療機関・健診機関等での勤務経験など
・「経営」に関する実務
経営者本人または、経営企画など企業経営に従事していた経験など
・「人事労務」に関する実務
人事担当者、労務管理担当者として従事していた経験など
・「健康経営」に関する実務
健康経営の普及や支援に携わっていた、企業などで実践に関わっていたなど
※記載いただいた内容を事務局にて確認し、受験の可否を判断させていただきます。

 

《健康経営優良法人2022(中小規模法人部門)認定制度》
以下、経済産業省HPからの抜粋です。

健康経営優良法人認定制度とは、地域の健康課題に即した取組や日本健康会議が進める健康増進の取組をもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する制度です。
健康経営に取り組む優良な法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として社会的に評価を受けることができる環境を整備することを目標としています。
本制度では、大規模の企業等を対象とした「大規模法人部門」と、中小規模の企業等を対象とした「中小規模法人部門」の2つの部門により、それぞれ「健康経営優良法人」を認定しています。
「健康経営優良法人」に認定されると、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として社会的な評価を受けられます。
また、「健康経営優良法人」ロゴマークの使用が可能となります。
そのほか、健康経営優良法人や健康経営に取り組む企業向けに、自治体や金融機関等においてさまざまなインセンティブがありますので、概要資料の108ページ以降もご参照ください(インセンティブの詳細についてはそれぞれの機関にお問い合わせください)。

健康経営優良法人2022(中小規模法人部門)認定要件

1.経営理念・方針 健康宣言の社内外への発信・経営者自身の健診受診
2.組織体制 健康づくり担当者の設置
(求めに応じて)40歳以上の従業員の健診データの提供
3 . 制 度 ・ 施 策 実 行 従業員の 健康課題の把握と必要な対策の検討 健康課題に基づいた 具体的な目標の設定 健康経営の具体的な推進計画
健診・検診等の活用・推進 ①従業員の健康診断の受診(受診率実質100%)
②受診勧奨に関する取り組み
③50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施
健康経営の 実践に向けた 土台づくり ヘルスリテラシーの向上 ④管理職・従業員への教育
ワークライフバランスの推進 ⑤適切な働き方の実現に向けた取り組み
職場の活性化 ⑥コミュニケ-ションの促進に向けた取り組み
病気の治療と仕事の両立支援 ⑦私病等に関する両立支援の取り組み
従業員の心と身体の 健康づくりに関する 具体的対策 保健指導 ⑧保健指導の実施または特定保健指導実施機会の提供に関する取り組み
具体的な健康保持・増進施策 ⑨食生活の改善に向けた取り組み
⑩運動機会の増進に向けた取り組み
⑪女性の健康保持・増進に向けた取り組み
⑫長時間労働者への対応に関する取り組み
⑬メンタルヘルス不調者への対応に関する取り組み
感染症予防対策 ⑭感染症予防に関する取り組み
喫煙対策 ⑮喫煙率低下に向けた取り組み
受動喫煙対策に関する取り組み
4.評価・改善 健康経営の取り組みに対する評価・改善
5.法令遵守・リスクマネジメント 定期健診を実施していること、50人以上の事業場においてストレスチェックを実施していること、労働 基準法または労働安全衛生法に係る違反により送検されていないこと、等 ※誓約事項参照

 

《予防医療とは?》
「早期発見・早期治療」から「未然に防ぐ」へ
1950年(昭和25年)当時の日本人の死因は多い方から結核、脳卒中、肺炎の順でしたが、ライフスタイルの欧米化に伴って循環器疾患・がん・慢性呼吸器疾患・糖尿病等の非感染性疾患(NCD)が増加し、現在の死因は多い方からがん、心臓病、肺炎の順になっています。
感染症の予防は、感染源(病原体)、感染経路、感受性者(免疫がなく感染しやすい人)への対策、具体的には、上下水道の整備、消毒、検疫、患者の隔離、予防接種等の社会環境の整備が不可欠でしたが、慢性疾患の多くは個人の生活習慣が大きく関わるため、生活習慣の改善によってかなり予防することが可能です。
また、介護が必要になった要因、言い換えると健康寿命を縮める原因は、生活習慣病が3割、認知症や、高齢による衰弱、関節疾患、骨折・転倒で5割となっています。これらの原因による要介護状態を防ぐ「介護予防」が健康寿命を延ばすためには必須となっています。適切な予防医療の推進・普及により、こうした健康寿命短縮の原因を一定程度抑えることが可能になると考えられています。

 

《人生100年時代の働き方のカギとなる健康経営とは》
近年、社会や経済構造、働く環境の変化が、働く人の「心と身体」に大きな影響を及ぼすようになってきています。また、労働人口が低下するなかで、将来に向けた労働力の確保や従業員の定着、活躍の重要性が求められています。そうした中、多くの企業では従業員の健康増進を重要な経営課題と位置づけ、積極的に対応を進める動きが広がっています。
従来分断されていた「経営管理」と「健康管理」を統合的に捉え、個人の健康増進を行うことで、企業の業績向上へとつなげるという概念に基づき、従業員の健康を経営的視点から考え、戦略的に実施する「経営手法」として生まれたのが、健康経営です。
企業は従業員の健康を増進することで、医療費を削減できるだけでなく、生産性の低下の防止や企業の収益性向上等、さまざまな効果が期待できます。企業の利益追求と働く人の心身の健康維持を両立することが、従業員個人の生活の質の向上のみならず、企業活力を高めることにつながるのです。
従来の職場における健康管理では、労働者の安全と衛生についての基準を定めた「労働安全衛生法」のもと、「職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を推進すること」を目的に実施されてきました。
それに対して、近年進められている健康経営の根本には、従業員を企業が成長する上での貴重な資源と捉え、従業員の健康増進を人的資本に対する投資として捉える考え方があります。従業員の健康に対する投資を戦略的に行うことによって、プラスの収益を実現しようとする積極的な経営手法なのです。

 

《健康経営がクローズアップされる背景》
(1)拡大する国民医療費と介護保険給付
近年、健康経営がクローズアップされている背景には、さまざまな要因があります。まず、拡大する国民医療費と介護保険給付への対応が挙げられます。社会の高齢化率が急速に高まる中、社会保障費の拡大が財政を圧迫する大きな要因となっています。今後、労働力人口が急激に減少することに伴い、経済活動の停滞が懸念されています。このことは否応なく、国民医療費と介護保険給付に大きな影響を与えます。

(2)企業のリスクマネジメント
次に、企業のリスクマネジメント上の問題が見逃せません。労働力不足の中、人材の確保・定着に悩む多くの企業にとって、労働災害への対応は今後とも避けて通れない問題となっています。

さらに近年では、長時間労働や職場ストレスなどによる労働負荷が増してきたことにより、ストレスチェックへの対応が急務となっています。「ストレスチェック制度」の目的は、定期的に労働者のストレスの状況について検査を行い、本人にその結果を通知して、自らのストレス状況についての気づきを促し、個人のメンタルヘルス不調のリスクを低減させることにあります。加えて、職場におけるストレス要因を評価することで職場環境の改善につなげることができ、ストレスの要因そのものを低減させることもできます。このようなメンタルヘルス対策は、企業の社会的責任となっています。

(3)企業の生産性向上に対する志向
企業の生産性向上という側面も、健康経営に取り組む大きな要因となっています。「プレゼンティーズム(Presenteeism)」が重要なカギを握ります。プレゼンティーズムとは、「疾病就業」と訳され、従業員が出勤しているにもかかわらず、心身の何らかの不調が理由で完全に能力・スキルを出し切れていない状況を指します。似た意味を持つ言葉に「アブセンティーズム(Absenteeism)」がありますが、これは習慣的に欠勤状況にあることや、それによる生産性の低下を指すもの。両者とも、従業員の健康と生産性を考える上で重要なキーワードと言えます。
問題は、プレゼンティーズムが生産性損失の大きな割合を占めているにもかかわらず、非常に見えづらいものであること。つまり、「隠れたコスト」であることです。プレゼンティーズムでは、従業員は欠勤するほどの大きな身体的症状を感じていないことが多く、場合によっては本人すら、自分の生産性の低下に気が付いていないことがあります。
プレゼンティーズムについては、直接的な医療費やアブセンティーズムの場合のように、レセプトや勤務状況データといった客観的なデータが容易に入手できるわけではありません。プレゼンティーズムの程度を測定するためには、従業員に対する追加的な調査が必要となります。そのため、極めて大きなコスト要因であるにもかかわらず、問題への早期対応が難しい状況にあります。今後は、健康診断やストレスチェックの結果の活用に加えて、プレゼンティーズムのような目に見えない健康状態をどのように改善していくかが、健康経営推進の大きなカギとなると思われます。

 

《新しい時代の“経営者の在り方”とは?》
健康への意識が高まる中で、今後経営者には、企業の理念に基づきながら、従業員の健康への投資を行うことが求められます。そうした取り組みが、従業員の活力向上や生産性の向上、更には組織の活性化をもたらし、結果的に業務向上や株価の向上に繋がっていくということです。
企業の成長や存続に、従業員一人ひとりの活躍は必要不可欠です。そしてその基盤は、病気をしない健康な体作りです。時代は「個人の健康は個人の責任」から、企業が主体となって従業員の健康管理に積極的に取り組む「健康経営」にシフトしつつあります。

 

《健康経営の第一歩!「健康診断」》
健康診断とは
健康診断とは、自身の健康状態を客観的に診断し、病気の兆候などがないか調べることです。
健康診断を受診することで、健康の維持や病気の予防・早期発見に役立てることができます。
労働者保護の観点から、社員に対して医師による健康診断を実施することは、法律(労働安全衛生法第66条)で義務化されています。

 健康診断の種類
健康診断は、大きく分けて「一般健康診断」「特殊健康診断」の2種類があります。
一般健康診断
一般健康診断は、5つの健康診断の総称です。
①雇入時の健康診断:常時使用する労働者に、雇入れの際に実施
②定期健康診断:(次項の特定業務従事者を除く)常時使用する労働者に、1年以内ごとに1回実施
③特定業務従事者の健康診断:特定業務(労働安全衛生規則第13条第1項第2号に掲げる業務)に従事している常時使用する労働者に、配置替えの際、および6月以内ごとに1回実施
④海外派遣労働者の健康診断:海外に6カ月以上派遣する労働者に、海外派遣前、および帰国後に国内業務に従事させる前に実施
⑤給食従業員の検便:食堂または炊事場における給食の業務に従事する労働者に、雇入れの際、および配置換えの際に実施
5つの健康診断は職種や業務内容に関わらず、すべての労働者に対して実施しなければなりません。

健康診断を受けないことによるリスク
1 健康状態を把握できない
①体調不良に気付くことができない
健康診断をやる目的の第一は、自覚症状の無い病気や体の異常に気付くこと
病気であることを早期に発見できず、「気付いたときにはもう遅い」という事態になってしまうケースも多くある。
健康診断を定期的に行うことで、そのような体の異変に気付くことができる。
②生活習慣の問題点を自覚することができない
健康診断は、自身の生活習慣の問題点を自覚することができる機会になる。
医師から指摘されなければ、生活習慣を正そうと思うことはなかなかできない。生活習慣の改善に取り組む一つのきっかけにもなる。
2 仕事の生産性が上がらない
企業としても、社員の健康状態を把握しておくことは重要
社員の健康と仕事の生産性は結びついている。
労働時間が多かったり、業務内容が厳しかったりする場合、健康診断の結果を受けて企業側が人事異動などを考えることも可能
仕事におけるストレスなどがたまることで、体ではなく心が病気になってしまうこともあり得る。
これらのリスクから社員を守るために、企業側は健康診断を必ず受診してもらい、社員の健康状態を把握することが大切

 

今回は、企業にとって最重要な経営資源である人的資源=人の健康について考えてみました。

投稿者プロフィール

矢野 覚
矢野 覚
LINK財務経営研究所 代表 
1982年 4月 国民金融公庫入庫
1993年 4月 公益法人日本生産性本部経営コンサルタント養成講座派遣
2015年 3月 株式会社日本政策金融公庫退職
2015年10月 株式会社山口経営サポート(認定支援機関)入社
2019年12月 同社 退社
2020年 2月 LINK財務経営研究所 設立
2022年 5月 健康経営アドバイザー
2022年 7月 ドリームゲートアドバイザー
中小企業金融の現場で、33年間、政府系金融機関の担当者~支店長として事業資金融資の審査(与信判断)や企業再生支援、債権回収業務に従事するとともにそれに関する稟議書の起案・決裁に携わっていました。
その後、中小企業の財務責任者として資金調達、経営改善業務をお手伝いさせていただき、短期間で赤字体質の中小企業を黒字体質に改善するコトができました。
こうした経験を活かして、「財務の力でヒトとカイシャを元気にする」ために、小規模事業者・中小企業の皆さまのお役に立ちたいと考えています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました